イベリス
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第四十一話 〆切を意識してその十三
「それで、そうした人とは本当にです」
「関わったら駄目ですね」
「間違いなく根っからの悪人になります」
「悪魔のカードは嘘じゃないですか」
「そうです、こうした時に悪魔の正が出ますと」
それならばというのだ。
「まさにです」
「悪人ということですか」
「タロットカードにはそれぞれ様々な意味があり解釈が出来ますが」
「ああした時はですか」
「もう疑い様がありません」
まさにというのだ。
「悪魔の正なら」
「悪人ですか」
「そうです、それも根っからの」
「そうですか」
「ですから気をつけて下さい」
「根っからの悪人ともなると」
咲も言った。
「どうにもならないですね」
「そうです、善意を受けても」
「その善意を逆手に取ってですね」
「悪い方に利用します」
「善意も利用するだけですね」
「そうです」
こう咲に話した。
「何をしてもです」
「無駄ですね」
「どうしても救われない人もいるのです」
「根っからの悪人ですね」
「根っから腐っている人は」
「悪人と腐っている人は」
「また違います」
こう咲に話した。
「同じではないです」
「そうですか」
「はい、悪人でもまだ自分の悪を自覚していれば」
「ええと、悪人正機説ですか」
「はい、それから逃げればどうにもならないですが」
それでもというのだ。
「悪を自覚してそれをあらためるなら」
「何とかなりますか」
「まだ、ですが」
「腐っている人はですか」
「何をしても何とも思わず」
「自覚しないんですか」
「自覚しても自分が全てで自分さえよければいいので」
そうした考えでというのだ。
「どんな卑劣なことをしても平気で」
「人の善意を利用しても」
「やはり平気です、こうなればどんな教えでも」
それでもというのだ。
「救えません」
「根から腐っていれば」
「そうです、このことは何度もお話しますが」
「このことはですね」
「覚えておいて下さい」
「世の中そうした人もいる」
「そのことを、いいでしょうか」
「そうします」
咲は速水の言葉に頷いた、そうして彼に一時の別れの時を告げた。そうしてそのうえでスマートフォンを懐に収めて駅の改札口を潜った。そのうえで家に帰った。
第四十一話 完
2021・12・1
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