イベリス
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第四十話 〆切りその五
「そんなのはね」
「格好つけて言うものじゃないの」
「江戸っ子でも嫌な人はいるでしょ」
「色々な人いるからね」
「そう、東京にいても」
それでもというのだ。
「何も変わらないわよ」
「他の人と」
「それで埼玉がどうとかはね」
「ないのね」
「気にしなくていいわ、埼玉もいいところだから」
「お父さんもなのね」
「その辺りの草でも食べさせておけとか」
何処かの漫画にある様なというのだ、この言葉は何時の間にか埼玉の代名詞になっているというが真相は不明である。
「そんなことはね」
「ないのね」
「ないわよ、というか西武強かったから」
所沢を本拠地とするこのチームはというのだ。
「八十年代から九十年代前半はね」
「昭和の終わりから平成のはじめね」
「十年以上滅茶苦茶強くて」
そのあまりもの強さと長い黄金時代に他チームのファンはもう西武の胴上げは見飽きたとまで言ったという。
「あの巨人なんてね」
「あのカスチームね」
「昔はカスじゃなかったけれど」
今は万年最下位だがというのだ。
「何度も惨敗してるのよ」
「惨敗よね」
「巨人に相応しいね」
巨人には無様な負けがよく似合う、この言葉通りのだ。
「そうした負けを繰り返していたのよ」
「西武に」
「セリーグの他のチームもそうでね」
「広島とか中日とか」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「ヤクルトがやっとなのよ」
「九十三年に勝ったわね」
「二年越しの死闘を経てね」
九十二年そして九十三年のそれを経てだ、両チーム共死力を尽くし知と知をぶつけ合った戦いであった。
「そうしてよ」
「ヤクルトファンの間では有名ね」
「それでやっと勝った位のね」
「強さだったのね」
「まさに王者だったから」
その頃の西武はというのだ。
「その本拠地の所沢もね」
「馬鹿に出来ないわね」
「お母さんが子供の頃、学生時代はね」
「そんな強さだったのね」
「物心ついたら滅茶苦茶強くて」
それでというのだ。
「ヤクルト応援してもね」
「強かったのね」
「堂々たるものだったわ、その西武もあって」
このチームが拠点にしている所沢がというのだ。
「そして政令指定都市もあって」
「他にもよね」
「色々な街もあるから」
「田舎じゃないわね」
「東京都一緒で全体が都会と言ってもね」
そこまで言ってもというのだ。
「問題ないわ」
「それが埼玉ね」
「神奈川や千葉の西にも負けてないわ」
「神奈川だと横須賀までそうで千葉は柏までね」
「都会よ」
この辺りはメガロポリスとさえ言われている、日本版のそれであると。
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