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イベリス

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第三十九話 素敵な偉人その七

「馬鹿木って言われてて皆からね」
「馬鹿にされていたんですね」
「そうだったよ、何か元々運動家で」
 それでというのだ。
「日教組の活動にも積極的な」
「そうした人だったんですね」
「そうだったんだ」
 その教師はというのだ。
「そうした先生見てきてるから」
「そう言えるんですね」
「うん、こうした先生みたいな人の言うことはね」
「聞かないことですね」
「そのうえで明治の日本も見ていってね」
「そうなんですね」
「戦前の日本全体もね」
 明治だけでなくというのだ。
「その頃に生きた人達も歴史も産業もね」
「見ていくことですね」
「それで漫画にも描いていってね」
「そうしていきます」
「そんな変な色眼鏡がなくて見ると面白いから」
 その頃の日本はというのだ。
「その全てがね」
「だからですか」
「楽しみながら調べていってね」
「実際に調べてみて面白いです」
「実は山縣有朋さんも面白いよ」
「伊藤さんのお話にも出て来ますね」
「槍の達人でね」
 この人物はというのだ。
「免許皆伝だったんだよ」
「ずっと槍の稽古してたんですよね」
「食後絶対にね」
「それはまた健康的ですね」
「粗食で汚職はしても」
 それでもというのだ。
「衣食住は質素でね」
「槍の稽古は欠かさなかったんですね」
「生涯ね」
「汚職はしてもっていうのがあれですね」
「全部政治資金にしていたから」
 山縣は確かにそうした話が多い、だがそれでもその私生活は極めて質素なものであった。朝食はパン一枚だけだったこともあるという。
「それでいて生真面目でね」
「詩人でもあったんですよね」
「教養もあってね」
「伊藤さんと同じで」
「和歌もよく詠んでいたし面倒見がよくて」
 そうした一面があってというのだ。
「どうも一人以外は絶対に見捨てなかったらしいよ」
「その一人って誰ですか?」
「森鴎外だよ」
 部長は鉄の様な顔になってこの名前を出した。
「面倒は見たらしいけれど人としては見捨てたらしいよ」
「あの、森鴎外って」
「あの人お医者だったね」
「陸軍の軍医さんでしたね」
「元々医学の発展の為にドイツ留学したしね」
「舞姫のお話ですね」
「うん、ただね」 
 それでもというのだ。
「脚気であんまりにも酷くて」
「それで、ですか」
「脚気菌あるって言って」
 実際に頑迷にこう主張していた。
「海軍が麦飯食べて解決していたのに」
「それをですか」
「認めないで」
 そうしていてというのだ。
「日露戦争でも脚気で陸軍の人がどんどん動けなくなっているのに」
「それを認めないで」
「麦飯を認めないで」
 それでというのだ。
「陸軍のトップだった山縣さんも怒って」
「見捨てたんですか」
「それで麦飯を導入させたんだ」  
 彼の反対を押し切ってだ。 
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