相良絵梨の聖杯戦争報告書
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説教タイム 遠坂凛の場合
「遠坂凛の説得ですが、彼女が持つ情報に齟齬がある事を彼女自身が気づいていない事が問題なのです」
冬木に送った際の遠坂凛の会話を聞いていたアンジェラの一言が遠坂凛の置かれている現状を端的に示していた。
「聖杯戦争の妨害をすると魔術協会と聖堂教会が黙っていないわよ」
「なるほど。その二勢力はこの国において殺人を行使できる法権力を持っているのかい?お嬢ちゃん?」
優等生であるというデータは既に得ていたからこそ、高校社会科の常識でまずは崩してゆく。
言われてみれば当たり前のロジックなのだが、魔術師たらんとしていた彼女は咲村警部のロジックエラーに答えられない。
「この国の主権はこの国の国民のものだ。
少なくとも建前ではそうなっている。
改めて聞くぞ。
魔術協会と聖堂協会は何の権利があって日本国民を殺すんだ?」
「そ、それは……」
答えられるわけがない。
魔術師というものに絶対の存在をおいてその集まりである魔術協会を目指そうとする彼女は、そのあり方をこう語ったという。
「魔術師は過去へ向けて逆走するようなもの」
と。
現在社会において反逆するからこそ、暗躍するというか暗躍しかできない。
そのくせ、財産持ちの裕福層という矛盾がこうやって露呈する。
「……」
「だんまりか。
まあいい。
そのまま聞いてろ。
お嬢ちゃんが言ったその二つの組織が、殺人の隠蔽を行うとしよう。
で、お嬢ちゃんは自らの手で妹さんを殺すのかい?」
「っ!?」
考えたくなかった事を咲村警部に突きつけられて遠坂凛は明らかに動揺する。
養子なんてものは当然法的手続きが必要なわけで、聖杯戦争候補者についてはその法的資料から調査に入ったのだ。
まるで探偵に犯人と突きつけられたような顔で、咲村警部は続きを口にした。
「来てもらった間桐慎二くんが話してくれたよ。
妹さん、魔術師として衰えた間桐家に養子に送られたそうだね。
聖杯戦争が発生した時に御三家として参加するのならば、彼女は参加する可能性が高い。
それでも君は参加して、妹さんを殺すのかい?」
「……」
顔は汗まみれ、涙すら浮かべかねない顔で遠坂凛は我慢する。
なまじ現代社会で優等生なんていい顔をするから、こういう所のロジックエラーに耐えられないのだ。
「まるでこっちが悪者みたいじゃないか。
まぁ、いい。
これを教えてやれって言われたから、読んでけ」
咲村警部が英語て書かれたレポートを遠坂凛の前に置く。
米軍が書いたアトラム・ガリアスタ撃墜の報告書。
彼はテロリストとして米軍に飛行機ごと撃墜されたという事実にレポートを読む遠坂凛の手が震える。
「改めて聞くぞ。お嬢ちゃん。
世界の覇権国家で今現在テロとの戦いに邁進している米国はここまで優しくはないぞ。
で、その米国からこの魔術協会と聖堂教会は嬢ちゃんと妹さんを守ってくれるのかい?」
遠坂凛の目から涙がこぼれ、泣き出したのを確認して咲村警部は部屋から出ていった。
「遠坂凛。父遠坂時臣は聖杯戦争で死亡。
母の遠坂葵も聖杯戦争時に何だかの障害をおって死亡。
言峰綺礼が後見人となっています」
遠坂凛のパーソナルデータを探ると出るわ出るわどす黒いものが。
特に後見人となった言峰綺礼の財産管理には問題があり、適当というか散財みたいな点もあるがそこはおいておこう。
彼女の魔術の師が言峰綺礼という所で、彼は今回の聖杯戦争の監督役のはずなのに、アトラム・ガリアスタの情報が彼女に届いていなかった事が私達の間で話題になる。
「おかしくないか?
前回の聖杯戦争は、言峰綺礼の父親である言峰璃正が監督役で、言峰綺礼は遠坂時臣に師事していた。
にもかかわらず敗北して、今回聖杯戦争が起きるならば敵討ちのはずだ。
ヤクザでも親を殺されれれば面子のためにも報復するのに、言峰綺礼は遠坂凛を勝たせる素振りがない。
ありゃ、何かあるな」
「彼女を帰す車にカウンセラーを乗せて、カウンセリングを受けさせます。
もしかしたら、言峰綺礼に洗脳されているかもしれません」
若宮友里恵分析官がため息をつく。
どうみても、魔術儀式というよりも自爆テロリストに近い精神状態に私もため息を付く事しかできなかった。
「で、本当に米国は魔術協会や聖堂教会なんて組織を抑えられるんですか?」
咲村警部の投げやり気味の質問に私は確信を持って断言する。
衛宮士郎と遠坂凛というサンプルを見せるだけで、絶対に抑えないといけないとわかったからだ。
「抑えるに決まっていますよ。
英霊の性能が、資料のとおりならば、また9.11が単独で起こせるんですから」
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