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Fate/WizarDragonknight

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御神木

「助かった……ありがとう、ブライ」
「フン」

 ウィザードの感謝を、ブライは吐き捨てた。

「今回は、ヤマタノオロチの件が最優先というだけだ。キサマも、他の参加者と貴賤はない」
「分かってるよ」

 ウィザードはブライに並び、頷いた。

「俺が言ったんだからね。俺は、この町を守れればそれでいいんだから」
「フン」

 ブライが鼻を鳴らすと、武神鎧武が無双セイバーでブライを指す。

「貴様もまた、異世界の武神か。ならば容赦せんぞ。二人まとめてかかってこい」
「……行くよ」
「でりゃあああああああっ!」

 武神鎧武が、その二本の刃で、ウィザード、ブライと切り結んでいく。
 ウィザードは一度距離を取り、指輪を切り替える。

『ビッグ プリーズ』
「ソロ! 避けて!」

 目の前に出現した緑の魔法陣。
 ブライがウィザードの直線上から離れると同時に、ウィザードはソードガンを振り下ろす。
 巨大化した銀の剣。武神鎧武はそれを二本の剣で受け止め、受け流す。
 だが、その隙に攻め入るブライ。彼は、ラプラスソードの巧みな剣技で、一気に武神鎧武を追い詰めていく。

「おのれ!」

 武神鎧武はブライの剣を防ぎながら、ベルトのカッティングブレードを押し倒す。

『ブラッドオレンジ スカッシュ』

 すると、大橙丸に臙脂色の光が集い、そのままそれをブライへ振り下ろす。
 だがブライは、それをラプラスソードで返す。武神鎧武もまた、無双セイバーでそれを防いだ。

「ほう……」

 感心したような声の武神鎧武。彼はさらに、二本の剣でブライを攻め立てる。
 剣の腕はほぼ互角。だが、ブライには優位になる要素があった。

「はあっ!」

 風を体に纏いながら、回転しながら斬撃を与えていく。剣の威力そのものは三人の中で一番低いものの、随一の速度は一気に武神鎧武を追い詰めていく。

「ふんっ!」

 武神鎧武はウィザーソードガンの刃を跳び蹴りと相殺し、そのまま距離を取る。さらに、無双セイバーのスイッチを引き、その銃口を向けた。
 ウィザードは即座にウィザーソードガンをガンモードに変形し、無双セイバーの銃弾とぶつけ合った。

「フッ!」

 息を吐いたブライの声。
 振り返ると、ウィザードの背後でブライがラプラスソードを横に薙いでいた。

「危なっ!」

 しゃがんだウィザードの頭上を、ラプラスソードが通過する。
 二本の剣を交差させて防御した武人鎧武は、その勢いに地面を引きずった。

「危ないな! 今回は手を組むんでしょ!」
「邪魔だから攻撃しただけだ。キサマが巻き込まれようがオレの知ったことではない」
「あっそ……!」

 ウィザードは逆手持ちに切り替えたウィザーソードガンの手のオブジェを開いた。

『ハリケーン スラッシュストライク』

 風を纏うウィザードは、その場で回転。名の通り竜巻のごとく、武神鎧武、そしてブライを切り裂いた。

「キサマ……!」
「悪いな。たまたま近くにいたお前が悪い」
「いいだろう。やはりヤマタノオロチよりも先にキサマを……」
「なかなかに強敵なり、異世界の武神共!」
「お前は少し黙ってて!」
「キサマは黙っていろ!」

 ウィザードとブライはそれぞれの剣を切り開き、その本体を唐縦割り。
 火花が散った武神鎧武へ、さらにウィザードはキックを見舞う。

『チョーイイネ キックストライク サイコー』

 ウィザードの足元に、風の魔法陣が浮かび上がる。
 慣れた動きでスカートをなびかせ、右足に力を込めていく。
 だが。

「無駄だ! 武神ウィザード!」

 武神鎧武がその二本の剣を底で組み合わせる。さらに、ベルトに装着しているブラッドオレンジのアイテムを取り外し、無双セイバーの取り付け口に接続させた。

『一 十 百 ブラッドオレンジ スカッシュ』
「でえええええい!」
「ブライナックル!」

 ブライの手より放たれた無数の拳が、武神鎧武の攻撃を防ぐ。
 さらに、そこに生じた隙へ、ウィザードが風の必殺技を命中させた。

「ぐっ!」
「はあああああああああああああああああああああああああっ!」

 ウィザードの風は、背中から噴射させるように進んでいく。そのまま武神鎧武を蹴り飛ばし、爆発。そのまま燃え続ける武神鎧武が、ラプラスが開いた門から転落していった。

「やった……?」

 ストライクウィザードを放ったままの体勢で、ウィザードは武神鎧武の末路を見届ける。

「フン」

 ブライもまた、穴から武神鎧武の姿を覗き込む。

「あの攻撃を連続で食らったんだ。もう生きてはいまい」

 ブライはそう言って、門に足を踏み入れようとする。
 だが、その時。

「っ!」

 ブライが飛びのくとともに、門より巨大な物体が天へ伸びる。
 巨大な緑を無数の枝に敷き詰めた、大きな木。
 それは大木という範疇を越え、神樹___否、御神木とも呼ぶべき存在だった。

「なっ!?」
「まだ終わらぬ……! 何も終わらぬぞ!」

 御神木から聞こえてくる、武神鎧武の呪い声。それに合わせて、エレキギターをかき鳴らすような音が響いてくる。

『ブラッドオレンジアームズ 邪の道 オンザロード』

 その音声とともに、伸びてきた枝から花が咲いた。まるで蓮の花を思わせるそれ。だが、普通の植物との大きな違いとして、その中心は雄しべや雌しべではなく、武神鎧武の上半身んが生えていた。

「な、なんだアレ!?」

 驚くウィザードへ、武神鎧武の花びらが襲い掛かる。
 ウィザードとブライは、ともに飛び退く。地面に着弾した花びらは、次々と爆発を引き起こしていった。
 それを見下ろす武神鎧武は、高らかな笑い声をあげた。

「ここまで追い詰めるとは、褒めてやろう! 異世界の武神共!」

 花吹雪の量がどんどん増していく。
 地面の爆発から逃げるように、二人は武神鎧武の御神木から離れていく。
 さらに、花びらの嵐は止まることを知らない。
 ウィザードは一度ジャンプし、風に乗って飛び上がる。

「嵐には雷だ!」
『チョーイイネ サンダー サイコー』

 緑の魔法陣より花びらを貫く雷。そのまま真っすぐ雷は武神鎧武を狙うが、しなやかに動く枝が、いとも簡単に雷から逃げて見せた。
 だが、ブライもまたブライナックルで花びらを次々撃ち落していく。
 そして、完全に切り開かれた花びらの群れ。
 ウィザードとブライは、とうとう御神木の目前に辿り着いた。

『フレイム プリーズ』

 ウィザードはルビーの指輪で再度火のウィザードとなる。

「終わらせるよ! ブライ!」
「勘違いするな……キサマと手を組むのは今だけだ」

 そして。
 ウィザードのバク転と、ブライのダッシュが重なる。
 同時に跳び上がり、武神鎧武の上を取る。

「おのれえええええ!」

 唸った武神鎧武は、両手を広げる。
 すると、またしても神木より無数の花びらが舞い、ウィザードとブライに襲い掛かる。

「邪魔をするな……!」

 ラプラスソードを振り上げながら、その右手の紫から、ブライナックルを連射する。
 さらに、ウィザードもまた体を回転させながら、ウィザーソードガンを打ち回す。
 二つの遠距離攻撃が、花びらを打ち落とし、攻撃を防ごうとする道を切り開いていく。
 そして。
 花びらの壁が、完全に消えた。

「「終わりだ!」」
『フレイム スラッシュストライク』
「ブライブレイク!」

 ウィザードとブライは、それぞれ空高く飛び上がる。

「させぬわっ!」

 武神鎧武も抵抗として、さらなる花びら、そして触手を放つ。
 だが、ウィザーソードガンとラプラスソード。その大きな破壊能力の前に、無力だった。
 そのまま赤と紫の刃は、武神鎧武の肩を切り裂く。

「「だああああああ!」」

 そのまま武神鎧武より、花、そして幹にいたるまで、二つの異能が、武神鎧武の神樹を破壊していく。

「バカな、この私が……っ! 天下は、私のものだああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 神樹の爆発は、その全ていたるところで発生していく。
 やがて武神鎧武は、爆発に飲まれ、見えなくなっていった。

「や、やった……?」
「フン」

 ウィザードと決して目を合わせないブライは、そのままラプラスが開けた門へ足を向けた。

「行くぞ。時間が惜しい」
「あ、ああ」

 ウィザードもまたブライに続いて、門に入ろうとする。
 だが。

「まだだ、異世界の武神共……!」

 その声に、両者は足を止めた。
 倒したはず。
 だが、武神鎧武及びその御神木は、まだ健在。
 至る所が未だに火の手が上がっているが、その形は未だに健在。その枝先にある蓮の花も原型を保っており、そこから、武神鎧武がこちらを睨んでいた。

「まだ我が野望は終わらぬ……!」
「お前、まだやる気か!?」
「邪魔をするなら、キサマから先に倒す」

 ブライが、再びラプラスソードを振るう。
 だが。
 その瞬間、地の底より突き上げられるような衝撃が見滝原公園を襲った。

「何だこれは……? 一体何が起こっている?」

 だが、揺れはどんどん大きくなっていく。
 やがて、ウィザードやブライさえも立っていられなくなるほどの揺れ。やがて木々が薙ぎ倒され、地面も割れていく。

「ほう……これは……」

 トレギアは、顎に手を当てながら頷く。
 そして。

「な、何だこれは!?」

 それは、武神鎧武の悲鳴。
 すでにウィザード達の攻撃により満身創痍となった武神鎧武と、彼を宿すその御神木。それを捕えているのは、地面の底から現れた、長い管。
 爬虫類の肌のような質感から、それはあたかもヘビのようにも思えた。ただ、その背筋には黄色の棘が生えており、怪物の質感を浮き彫りにしていた。
 それは、容赦なく神樹に絡みついていく。その数は、一つや二つではない。三つ、四つ。

「放せ! 放せ!」

 だが、蓮の花と一体になっている武神鎧武には抵抗する術はない。
 そのままヘビは、神樹ごと武神鎧武を地の底へ引きずり込んでいった。

「放せええええええええええええ! 我こそは天下をおおおおお____

 やがて、ウィザードは耳を塞ぐ。
 神樹が飲み込まれたところから、耳を塞ぎたくなるような音が聞こえてきたのだ。
 地下で何が起こっているのか、想像したくもない。
 ただ一つ、確かなこと。
 それは、武神鎧武の断末魔の悲鳴が途切れたこと。
 そして。
 地響きが、より酷くなったことだった。 
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