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もう一つの"木ノ葉崩し"

作者:ぬんすち
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第十五話―更なる絶望

銀角を隔離した扉間の影分身――

(よし……あとはコヤツにとどめを刺して穢土転生で蘇らせ,金角の正気を戻すだけだ……,……ん?これは……!)

クナイを突き立てようと構えた扉間であったが,その時,銀角の様子に気付いて驚愕する。

(あれほどの重傷を負っていたというのに,もう傷が治り始めておる……。早くとどめを刺さなければ,もういつ目を醒ますかもわからんな……九尾の力,とことんまで恐ろしいものだ。)

いよいよ銀角にとどめを刺そうという時になって,扉間は更にもう一つの異変に気付く。
扉間はチャクラを感じ取ることができる感知タイプである。ほんの微細なチャクラの変化も,すぐに察知することが可能だ。

(この感じ……金角か!?先ほどまでより更にチャクラが増しておる……まだ解放しきっていないチャクラが残っておったのか……!?急がねば!)

グサッ!!

扉間は銀角の心臓付近にクナイを突き刺す……しかし,

(……!?深く刺さらぬ……これは……!)

ジュウウウゥゥゥゥ!!!

突如,銀角の体の表面に橙色の層が出現し,扉間のクナイを遮った。
次の瞬間,銀角が負っていた傷がみるみるうちに回復していく。

(チャクラの衣……!?まずい,こやつも九尾の力を……!)

ガッ!

(!?)

その時,気絶していたはずの銀角が,クナイを持つ扉間の腕を掴んだ。


~~~~~


金角と戦闘中の扉間――

ビュッ!!

(来る……)

フッ!

九尾化した金角の攻撃を飛雷神で避ける扉間。しかし……

ビュッ!!!

(!?……飛んだ先にも攻撃を……!)

グサッ!!……ボフン!

金角の攻撃を食らった扉間の影分身が消滅する。

(間違いない……こやつ今,確実にワシの動きを読んでおった……。どこへ飛んで逃げるかを読み,先回りして攻撃を繰り出す……ついさっきまでとは,明らかに動きが違う……!)

九尾の力の暴走によって我を失い,ただ闇雲に攻撃しまくるだけの金角であったが,徐々に,しかし確実に,その攻撃には思考が伴い始めていた。

(少しずつではあるが,こやつ,自我を取り戻し始めておる……。これまでは力任せに単調な攻撃を繰り返すだけだったゆえ何とか対処できたが……いよいよマズいな。銀角の方はまだか……?)

「せ……千…手……扉……間…っ!」

(!!)

「弟…は……どこ……だ…。早く…返せ……!!」

(やはり自我を……!)

「さもなくば……ぶっ……倒す!!!」

ビュンッ!!!

金角を取り囲む扉間の影分身たちに向かって,九尾の衣の尾が一斉に襲い掛かる。

「くっ……!」

サッ!サッ!サッ!

扉間たちは金角を取り囲む円陣を崩さないように注意しつつ,飛雷神で飛ぶ,身を躱すなどして各々金角の攻撃を回避する。

「おのれ……いつまでも……ちょこまかと……っ!」

(ともかく,今は少しでも時間を稼ぐ!)

バッバッバッ!!

扉間たちは金角を取り囲んだまま一斉に印を結ぶ。

「「「水遁・水陣牢壁!!!」」」

「!?」

扉間たちは一斉に水を吹き出し,金角の周り360度を完全に水の壁で包囲する。

「こざかしい……っ!!」

ビュッ!

金角が水の壁に向かって尾を伸ばして攻撃を繰り出すと,尾の威力は壁を軽々と貫通し包囲の外へ飛び出す。
しかし,攻撃が扉間に当たることはなかった。水の壁によって視界が遮られ,金角は周りにいる扉間の位置を完全に見失った。

ビュッ!ビュッ!ビュッ!

「くそ……っ!どこだ……っ!おのれ……っ!」

(このまま,銀角の穢土転生を実行するまで……,……!!?)

しかしその時,扉間は最悪の事態を知った。

影分身の術は,分身体が見聞していることをリアルタイムで共有することはできない。
しかし,分身体が消滅するとその瞬間,その分身体が得た見聞や知識などあらゆる経験が本体と他の影分身に共有される。
逆に言えば,分身体の経験が共有されるというのは,その分身体が消滅したことを意味する。

まさにこの瞬間,扉間本体と,金角を取り囲む影分身たちにとある経験が還元された。
それは,扉間が現在行っている"時間稼ぎ"が全くの無意味であることを示すものであった。

――銀角の始末失敗,穢土転生は実行できず,なおかつ銀角自身も九尾の力解放の恐れあり……!!

ある意味で,特に三つ目の情報については,影分身からの経験の共有は不必要であったと言える。
なぜなら,そのすぐ直後に,感知タイプである扉間たちは感じ取ったからである。
銀角のチャクラと,そしてそれを遥かに上回る九尾のチャクラを……。

(まさか金角のみならず,銀角までも九尾化を……!!)

「いつまでも……逃げ回りおって……っ!」

更にその時,このままではラチが明かないと痺れを切らした金角が,尾による攻撃をやめて自ら水の壁に向かって突っ込んだ。

(……!!)

ドパァン!!

水の壁を突き破って包囲を抜けた金角は,そこにいた扉間たちにすぐさま攻撃を仕掛ける。

「フン!!」

ビュッ!!

(!!!)

ボフン!ボフン!ボフン!

あまりに突然の出来事,更には銀角のチャクラに気を取られていたこともあり,扉間の影分身たちは攻撃を躱せずに消滅していく。

「これも……分身か……本体はどこだ……。」

もはや金角を取り囲む円陣さえも崩され,水の壁も消滅する。
扉間の分身体は,四体にまで減っていた。

「残りは……それだけか……その中のどれかが……本体だな。」

(くっ……この状況では影分身などチャクラの無駄になるだけ……!)「解!」

ボフン!ボフン!ボフン!

扉間は影分身を自ら消滅させ,分身体に残っていたチャクラを本体へ戻す。

「消しやがった……自ら本体を……晒してくれるとはな……。」

ビュッ!!!

サッ!

辛うじて金角の攻撃を躱しつつ,扉間は何とか突破口を探る。

(何か弱点はあるはずだ……。九尾の衣の防御力はそう簡単に突破できるものではないが……何か……!)

ビュッ!!!

サッ!!

(そうだ,一撃で致命傷を与える必要ない……。ヤツの力の源は,まぎれもなく強大なチャクラ……つまり,チャクラの放出さえ止めてしまえば,大幅に力を削ることができる……!)

ビュン!!!!

サッ!!

「くそ……すばしっこい……やつめ……!」

(大きな傷をつける事は出来ないが……何とかして不意を突けば,ほんの少しはヤツの体に届くはず。あとは,どれだけ正確に狙いを定められるか……,そこはもはや,賭けでしかないか……!)

「いい加減……くたばれ……っ!」

ビュッ!

(これで最後だ!)

バッ!

扉間は,金角の攻撃を躱すのを突然やめて,金角の攻撃へ真正面から向かっていく。

「やっと覚悟を……決めたか……!」

グサァッ!!!

しかし扉間の攻撃は繰り出されることなく,無残にも金角の攻撃が突き刺さる。

「へっ……これで……最後だな。」


……


……ボフン!!!

「ああ,それで最後だ,影分身はな。」

「は!?」

突如,金角の背後から扉間の声が響く。

「数え間違えたか?ワシが出した影分身は全部で九体,さっき消えたのが最後,九体目の影分身だ!」

「何……!!?」

扉間の本体は,水の壁で金角を覆っていた時に円陣から外れていた。
四体の影分身のうち,あえて三体だけを消して残った一体を本物だと思い込ませたのである。

(白眼は無いが……点穴の大まかな位置は知っておる!これで決める!)「天泣!!!」

金角の背後を取った扉間の本体は印すら結ばず,水の千本のようなものを素早く吹き出す。

グサッグサッグサッ!!!

千本はことごとく金角の首元に突き刺さる。それは決して大きな威力を持つものではなかったが,しかし正確に金角の急所を射止めていた。

「ぐっ……!こんなもの……なんだと言うのだ……!……!?……チャクラが……!?」

「点穴を突いた。貴様はこれ以上チャクラを練れん。」

「くそ……が……てめえの分身の……数なんざ,いちいち数えちゃ……いねえよ……。」

点穴を突かれた金角は,徐々に九尾のチャクラが弱まっていく。


……


ズン!!!

(!!)

しかし,九尾のチャクラを持っている者は一人ではなかった。
金角を追い詰めた扉間の背後に,別の影が降り立つ。

「よう……戻った……ぜ……金角……。」

「銀角!」

(銀角……!)

「なんだ……金角……ずいぶん…弱ってんな……。後は……俺がやるぜ…。」

(くっ……金角を倒すためとは言え,さすがにチャクラと切り札を使いすぎたか……!)

先ほどまで金角を包囲していた扉間であったが,気づけば正面の金角と背後の銀角に挟撃される形になっている。

影分身もすべて使い切った今の扉間には,銀角との更なる戦闘を続行する余力はほとんど残っていなかった。 
 

 
後書き
お読みいただきありがとうございます!

機転と奇策で金角を追い詰めた扉間,しかし銀角の再合流で逆に窮地に……勝敗の行方やいかに!? 
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