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もう一つの"木ノ葉崩し"

作者:ぬんすち
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第十四話―窮地

「オオォッ!!」

ガッ!!

猿魔が激しい雄叫びと共に突き出した拳を,角都は両腕を交差してガードする。

「しつこいサルめ……邪魔をするなと言っている!」

ドカァッ!!

「ぐあ!」

またしても角都の蹴りを腹に食らい数歩後退するも,何とか踏みとどまる猿魔。猿魔はチラと後ろに目をやる。そこには,両手を合わせ残り少ないチャクラを懸命に練り上げようと精神を集中させているサスケとサイゾウの姿がある。あともう一発,大技を撃ち込みさえできれば今度こそ倒せる,その一縷の望みをつかみ取るため,猿魔は必死に時間稼ぎに徹する。

「はあっ!!」

「……また正拳突きか。単調な攻撃だ。」

角都は再び腕を交差してガードを固める。

……が,

ボンッ!

角都が正面のガードを高めた直後,猿魔は突然自ら変化して金剛如意の姿となる。

「!?」

クルクルクル……ッ

そして,変化した際の勢いのまま縦向きに回転し,すっかり無防備となっていた角都の脳天に叩き込む。

ゴッ!!!

さしもの角都も,完全に意表を突かれた攻撃に少しよろける。

「くっ……おのれ……!」

ボンッ!

角都に一撃与えた猿魔は,またすぐに元の姿に戻る。

「へっ,どうせ通用するのは一回きりの奇襲攻撃だが……少しは効いたか。」

「やってくれる……!だが,これ以上サル野郎に構っている暇はない!」

ダッ!

角都はこれまで以上のスピードで猿魔に向かって突っ込む。

「……!?まだそんな体力が残ってやがるのか……!?」

猿魔が身構える暇も与えず,角都は瞬く間に猿魔の目の前まで接近する。

「いい加減くたばれ。」

「まずい……!」

ドカッ!!!

猿魔は角都の回し蹴りをまともに食らい,横へ吹っ飛ばされる。

「ぐあっ!!」

更に続けて,角都はチャクラを練っている最中のサスケとサイゾウの元へ向かう。

「これで終わりだ。」

「!!」

「!!」

角都がサスケとサイゾウに止めを刺そうとしたその時,

「金剛牢壁!!!」

ボンッ!!

ガッ!!

「何……!?」

間一髪,サスケとサイゾウを巨大な檻が囲み角都の攻撃を防いだ。それは,何体にも分身した猿魔が各々金剛如意に変化して作り上げた牢壁であった。

「猿魔!あまり無茶をするな!」

サスケは体を酷使する猿魔を心配して叫ぶが,猿魔は逆に怒鳴り返す。

「言ってる場合か!今のうちにチャクラを!」

「つくづくしつこいサルだ,まだくたばっていなかったか。だがその術……ずいぶんとチャクラを消耗しそうだな!」

ゴッ!

「ぐあっ!」

角都の攻撃に,猿魔は悲鳴を上げる。体力を極限まで消耗した今,"金剛の体"という売り文句も意味を成さない。

「さっさと消えろ!」

ドカッ!!

「ぐっ……!す,すまん……!!」

ボボボボンッ!!

角都の渾身の拳を食らい,とうとう猿魔も口寄せが切れてしまう。

「さんざん手こずらせてくれたな……だがここまでだ!」

今度こそ邪魔者が居なくなった角都は,無防備のサスケ,サイゾウへ向かう。しかしその時,

「やっと溜まった!いくぞサイゾウ!」
「ああ!」

バッバッバッ!

サスケとサイゾウは,最後の力を振り絞ってチャクラを練り上げ,印を結び始める。

「チッ……!だがもう遅い!」

角都は二人が攻撃を放つ前に仕留めようと,腕を振りかぶる。

「火遁・火炎龍大炎弾!!!」
「風遁・乱気流大乱破!!!」
「土遁・土矛!!!」

カッ!!!





「……!?」
「バカな……!」

「フン……。」

角都は……,倒れなかった。

「言ったはずだ,もう遅いとな。」

「そ……そんな……!」
「なぜだ……至近距離から,確かに食らったはず……!」

サスケとサイゾウは,ほぼ完全にチャクラが切れ,その場に倒れ込む。

「至近距離だったからこそだ。お前らの攻撃は火遁の威力を風遁で高める……火遁と風遁を同じタイミングで同じ方向から当ててこそ効果を発揮する。2つの力が合わさる前に別々に受けてしまえば,威力は文字通り半減……それでも,俺ほどの防御力でも無ければ大ダメージだろうがな。」

「くっ……!さっき,火遁を放つ俺の方へ狙いすましたように向かって来たのはそういう事か……!先に火遁を正面から受け,わずかにズレた角度から来る風遁を後で受ける……そんな手段で,この攻撃を……!」

サスケは地面に伏し動けないまま,絶望に打ちひしがれる。

「お前らの攻撃を成功させるには,さっきのゾウの口寄せ獣でも使って相手の動きを止めることが前提条件だ。お前らにとって最初で最後のチャンスは,すでに過ぎていた。」

角都はそう言うと,二人に背を向け歩き出した。

「わざわざ手を下さずとも,その様子だと勝手に死にそうだな。どうせ火影の居場所を聞いたところで死ぬまで話さんのだろう。俺は探索を続けさせてもらう。」

「くそ……ま……て……。」

サイゾウは去っていく角都に向かって懸命に手を伸ばしたが,到底届きはしなかった。


~~~~~


「グオオォォッ!!」

(来る……!)

ビュッ!!フッ!

九尾化した金角の尾による攻撃を飛雷神の術でかわす扉間。

(確かにスピードもパワーも大したものだが,あくまでも理性を伴わない暴走状態……動きは単調だな。落ち着いて洞察すれば,先読み可能だ。)

最初こそ翻弄された扉間であったが,徐々に敵の特性を把握しはじめ,対処できるようになっていた。

(とはいえ,今のままではこちらの攻撃が通らないのも事実……まずはヤツの暴走状態を解いて正気に戻すことだ。幸いにも,今のヤツにはスキが多い。チャクラは少々消耗するが……,勝負所か。)

扉間は左右の人差し指と中指を二本ずつ伸ばし,十時に組む。

「多重影分身の術!」

ボボボボンッ!

扉間は九体の影分身を召喚し,それらで互いの体に飛雷神の術式をマーキングしておく。本体含め計十人の扉間たちが,それぞれ移動して金角を包囲するように位置についた。更に,金角を取り囲む位置でそれぞれの扉間が地面にマーキングを施した。

「!?」

「ゆくぞ!」

バッ!

「!」

金角の後方右斜めにいる一人の扉間が突っ込むが,即座に気づいた金角が尾の一本を伸ばして迎撃する。

ビュン!フッ!

すると,突っ込んだ扉間は飛雷神でその場から消える。直後,今度は金角の正面と左の二人の扉間が二方向から仕掛けていく。金角は尾で正面の扉間に向かって攻撃し,正面の扉間が飛雷神で飛んで躱すと続けて左の扉間へも同じ尾で反撃する。
しかしその間に,金角の攻撃を躱して元の位置に戻っていた正面の扉間が同じ位置から再び突っ込んで攻撃に出る。更に同時に,右方向からももう一人の扉間が攻撃を仕掛けに行く。

「!?」

三方向からの接近を受けた金角が二本の尾を同時に振るって対応しようとするも,今度は更に後方左斜めの同じ位置から二人の扉間が同時に突撃する。金角が更に三本目の尾も使って反撃に出ると,また別の方向から扉間が迫る。
扉間たちは金角の攻撃を飛雷神で巧みにかわしながら,元の位置からタイミングを少しずらして,あるいは場所を移して別の方向から,時には他の扉間と複数体で同時に連携をとって,幾度となく金角への突撃を敢行した。
金角が素早く反撃するたびに躱して距離を取らざるを得ない扉間だが,繰り返すうちに金角も翻弄され徐々に近くまで接近できるようになっていく。そして……

(ここだ!)

バッ!

ついに一人の扉間が金角の目前まで到達し,金角に抱えられている銀角へと手を伸ばした。

「飛雷陣・多瞬回し!!!」

「!!」

ビュン!

しかし扉間が銀角に触れるより一瞬早く,金角が扉間に向かって攻撃を繰り出す。扉間はギリギリで銀角に届かない。

(……いや,間に合う!)

フッ!

「!!?」

金角の攻撃が扉間に当たる直前,その扉間に施されたマーキングに向かって別の扉間が飛んで来る。金角の攻撃を食らった扉間の影分身は煙となって消えるも,後から来た別の扉間の手がとうとう銀角に届いた。扉間は飛雷神で銀角を別の扉間の元へと飛ばし,金角から引き離す。

(よし……後はこやつを利用して金角を元の状態に戻す……!)

八人の扉間が金角を囲んで牽制しつつ,銀角を受け取った扉間はその間に銀角を連れてその場を離れた。

(もうしばらくの時間稼ぎだ。ヤツの動きは単調だが,暴走状態で素早い攻撃を闇雲に繰り出してくる。気は抜けん。)

そう扉間が思った時である。



「ど……け……,銀角……を……ど……こへ……連れて……いく……」

「!?」 
 

 
後書き
お読みいただきありがとうございます!

「飛雷陣・多瞬回し」は十人の影分身であちこち飛び回りながらスキを作って攻撃を当てる一連の連携技全体を指します。ミナトの「螺旋閃光超輪舞吼参式」がこんな感じの技だったのかなとイメージしてます。 
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