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僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結

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15-⑻

 お店の休みの日、私はお父さんに話があると切り出した。

「お父さん 清音のことなんだけどね あのね 田中さんが、養子にしたいって、相談受けてるの」

「えぇー 養子って 何でそんな必要あるんだ」

「田中さんって、身寄り居ないでしょ 清音のこと、本当の孫みたいに可愛がってくれてるし・・」

「それはそれだろう 何で、今のままじゃぁ駄目なんだ?」

「あのね 清音はね 小野清音って言うのよ 中道じゃぁないの」

「なんだよ それ 小野って」

「清音が貰われていった時、小野に変わったの それから・・」

「そうなんか 何か聞いたことのある名前だけどな」

「今ね 清音は生まれ変わろうと頑張ってるの それに、あの子、おばあちゃんの面倒をずーと見て行くつもりなんよ でも、お父さんの娘には変わりないわよ」

「だからと言ってなぁー なんで、うちの娘じゃぁ駄目なんだ」と、お父さんは、散歩に行くと言い出した。

「お父さん あの子は、ずーと、一人で生きてきたのよ 清音の思ったようにさせてあげて 今、自分の居場所を見つけたのよ あの子 この前、今、幸せだって・・」と、私は、出掛けに声を掛けたけど、言い終わらないうちに、黙ったまま出て行ってしまった。

 夕方になって、お父さんは、焼き鳥を買って戻ってきた。

「美鈴 ビールくれないか」

「あらっ 珍しい いつもの、お酒じゃあないのね 今日は、ずいぶん、散歩長かったね」

「うーん あちこち歩いてきた。美鈴 今、幸せか?」

「どうしたの? とっても、幸せヨ」

「そうか 娘が幸せって言っているのは、親にとってはうれしいことなんだが、反面、もの淋しい気持ちもあるんだ 特に、ワシはお前たちに何にもしてやれないで来たからなぁ」

「お父さん 違うわ 私達を産んで、育ててくれたじゃない」

「だけどな、幸せに形があるとすれば、子供達の幸せの風船はこれから膨らんでいくんだ。親の風船って、それにつれて萎んでいくのが努めなんかなってな」

「お父さん 何言い出すのよ どうして、風船を分けるのよー 私、親の気持ってわからないけど、家族なんだから、一つの風船でいいじゃぁない 孫が増えれば、もっと大きな風船になっていくのよ」

「美鈴 できたのか?」

「ちがうわよ! 例えばの話よ まだ・・」私、何を言って居るのか・・混乱し始めていた。だけど、私は、初めて自分のお母さんのことは、忘れようと決心ができた。やっぱり、お父さんを裏切って、他の人と・・・どうしても、許せなかった。それも、お父さんがあんな状態だっていうのに、見捨てて行くなんて・・。

「美鈴の言うこと。お前は間違わないと思っている。清音のことも考えてやってのことだろうから、反対しないよ」と、お父さんは寂しさを感じていたのかもしれなかった。
 
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