冥王来訪
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
異界に臨む
服務
前書き
ほぼ今回はマサキの独白です
会話は少なめです
マサキは、自ら《志願》した形になった斯衛軍の訓練に参加する様、下命があった
通常の志願兵ではなく、下士官課程の教導団に入学
時間的な制約、経歴から予備士官学校や士官学校への入学は見送られた
通常の一年から二年弱の訓練ではなく、半年の特別課程
特別課程は、戦術機操縦士養成の為、新設されたものだという
期間を短くしたのは、「嘗て航空機操縦士が不足したことを鑑みて」という説明を受けた
促成栽培に近い印象を受けた
教導団とは言いながら実態は、かつての陸軍の幹部候補生や准尉制度に近い印象を受ける
科目は、軍制・戦術・兵器・築城・交通・地形・剣術・体操・馬術・現地戦術・測図
約4か月間で上記の科目を収めると聞いた時は、さすがの彼も驚いた
軍隊経験のない彼は、まず歩兵としての基礎訓練を3か月という短期間で、ほかの訓練生とともに一から学んだ
体力には自信があるつもりだったが、流石に10貫(37.5キログラム)の背嚢を背負わされて、小銃を保持し、悪天候の中を行軍させられたのは、思い出すのも嫌になるほどであった
「軽く冗談半分で言ったつもりが、この世界の人間の考えることは違う」
彼は、就寝前に思った
戦術機というマシンは、既存兵器に比して無駄が多すぎる
航空機より、高コストでありながら、その飛行能力は低く
戦車よりも、走破性、装甲も火力投射量も劣る
約3万発に及ぶ機関砲弾は、全てケースレス弾で、パテント(特許)は一社が独占している
20㎜機関砲など、既存の対空砲や艦載砲を流用した方が安かろうのに……
射出可能な操縦席、美久が着せられていた《衛士強化装備》も一社独占の製品だ
《衛士強化装備》は、流石に最近では東欧で国産化が進んでいると聞く
それでも大本の特許は米国の企業
様々な軍産複合体の利権としての《戦術機》
失われる人命や国家予算の浪費という結果から鑑みれば、費用対効果は最悪だ
近接戦闘などすれば、ゼオライマーを代表とした八卦ロボより軽く脆い機体
忽ちのうちに、関節部や装甲板に損傷を起こす
ゼオライマーとて、同じ八卦ロボのローズ・セラヴィーには近接戦闘で苦戦したことが思い起こされる
四方や、帝国軍は実戦用の刀など作ってはいまい
ソ連で刀を見たが、対人戦には有効かもしれないが、BETA戦には不利だ
仮に認めても、指揮官機の装飾品や儀礼刀の域を出ないようなものでないと駄目だ
誉めるべき点は跳躍ユニット
この世界において優れたロケット技術の集大成と呼べるものであろう
だが、惜しいことに航空機やロケットには大して反映されなかった
ノボシビルスクに進軍した時、ソ連軍の装備が今一つだったのは、恐らく戦術機に予算が割かれたためであろう
幾ら、米国からの軍事援助とはいえ、借款や返済前提の援助であるから、相当の負債にはなろう
ただでさえ、国土の大半を失って、衛星国(ソ連の影響下にある国家)との貿易も不十分で、ソ連国内にある資金も限られる
暴動や反乱を防ぐため、ある程度、民生予算を組んだ上での、軍事予算だ
元の世界より見劣りするのも仕方があるまい
まさか、米国の援助を当てにして、《国父》や《大元帥》が青くなるほどの軍事最優先を進めているのだろうか
そもそもこの世界の国家というのは合理的な判断をしたのであろうかと悩んだが、馬鹿馬鹿しくなり止めた
小銃訓練をしていた時、新型の試作小銃の見本を見せてもらった
フランス陸軍のサン=テティエンヌ造兵廠が製造した自動小銃に似たブルパップ方式
どうせなら、最新式とはいえ、米国製のM16小銃のほうが良かった
ブルパップ方式は閉所で扱うのは良いが、射撃時の騒音と排莢が顔面に近く危険
銃剣格闘の間合いが短いのも良くない点だ
弾倉も後方なので、不便だ
いっそ、古い銃とはいえ、取り回しの良いM1カービン(騎兵銃)、重いが信頼性の高いM1ガーランド
理想を言えば、軽量で扱いやすいM16小銃、現在の銃と銃弾規格が同じM14が最良に思える
今扱っている64式小銃もなかなか良い銃だ
分解部品数が多く、重いが、二脚がついて、軽機関銃のような運用ができる点では優れた工業製品であろう
しかし、世界の辿った歴史が違うとはいえ、帝国陸軍の軍服が、自衛隊其の物であった事には驚いた
軍管区、師団編成、武器や装備もほぼ一緒だ
あの茶褐色の制服を見たとき、何とも言えぬ感覚に襲われた
野戦服まで同じだったときは、この世界は、元の世界の並行世界ではないかと類推した
その割には、国家の制度や歴史が違い過ぎる
聞く所によれば、美久も同様の処遇を受けている
機械部品なので心配はせぬが、情報漏洩が気がかりだ
一応、ゼオライマーの分解整備に関する図面、カシュガルハイヴに潜った際のガンカメラの記録は連中に渡した
建前上、協力すると言う事で
撮影記録機器の規格が合うか、どうかは確認はしなかった
搭載してあった2インチVTRのテープで対応した
30年近く使われている規格であるから大丈夫であろう
無論、次元連結システムは、隠匿できているはずだ
生体認証のほかに、別にある美久という《鍵》
唯一つ気がかりなのは、あの連中がどのような策謀をもって、自身を貶める可能性があることだ
深く考えても仕方がない
彼は、横になると、目を瞑った
後書き
ほぼ今回は、帝国陸軍の訓練や軍事制度は、でっち上げてます
俗にいう『メカ本』、設定集を参照したのですが、国連横浜基地(白陵校)の話しかありませんでした
ご意見、ご批判、ご感想、よろしくお願いいたします
ページ上へ戻る