ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~
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第38話
前書き
超サイヤ人3リストラ
超サイヤ人3
原作最強の形態なのだけども、強力な反面、燃費が最悪過ぎて本領発揮出来る時間が限りなく短い。
超サイヤ人3よりも強力な形態を手に入れる悟林はこれを封印することになる。
悟林は早速2人に超サイヤ人3への変身を見せる。
拳を握り、見る間に気を高めていき、悟林の気の力で界王神界の大気が震えている。
超サイヤ人になった姿が徐々に変化を始めた。
「……ね、姉さん凄い……まだ気が上がっていく」
「ああ…」
悟飯も悟空も少々興奮した様子で拳を握り、変貌を遂げていく悟林を見つめていた。
どういう事なのかは良く分からないが、悟林の髪が伸び始め、超化時独特の、逆立つ金髪が伸びて悟林の腰より下にまで来る。
気もそれと共に成長するみたいに上がり、ただ立っているだけで、空気が震えるほどの気を発している悟林。
「これが、超サイヤ人3ですか……」
界王神も冷や汗を流しつつ、超サイヤ人3になった悟林を見つめる。
「す、凄いよ、姉さん!」
超サイヤ人2を遥かに超越したパワーに悟飯は思わず興奮してしまう。
「苦労したんだからね、これになるのは。悟飯、お父さん。いっちょやる?」
「え?や、止めておくよ……今の僕じゃあ、すぐダウンさせられちゃうだろうし……」
「はあ、お前って子は…子供の頃より根性が無くなっちゃって…お父さんは?」
「そうだな、じゃあ軽くやってみっか」
悟空も超サイヤ人2に変身して軽く手合わせしてみるが、やはり超サイヤ人3の力は圧倒的で、あっさりとやられてしまうが、悟空はどこか満足そうだった。
悟飯も悟飯でゼットソードを振り回し、修行を再開する。
「因みにお父さん、これがフュージョンだよ。ポーズが少しでも間違ってたら失敗しちゃうから気を付けてね」
悟空は悟林からフュージョンの修行を受けていた。
後にポーズは形になったものの、やはりと言うか相手に合わせるのに問題があるようだ。
フュージョンする際は相手に合わせてもらうしかないだろう。
そして修行し始めてから1日が経過した。
元々武術の素養がついているだけあって、剣術も自己流ではあるがめきめきと上達し、ゼットソードの重量に振り回される事もなくなっていた。
剣の重みで腕力が相当ついたようで、上手く剣の重みを使い、手元で細かい操作をして、素晴らしい剣術を目の前で披露してくれている。
完全に片手で扱えるようになったそれの切っ先を、悟飯は地面につき、悟飯は息を吐いて汗を拭った。
岩に腰かけている悟空と悟林が同時に拍手を送る。
「凄え凄え!よく1日でそこまで使いこなせるようになったなあ!」
「うんうん。剣に振り回されてる感じだったけど、今は使ってるって感じだよ…肝心の戦闘力は大して変化ないみたいだけどね…もしかして切れ味が凄いだけとか?」
もしそうならブウには全く通用しなさそうだが。
「よし!じゃあ試してみようぜ!まずはこの岩だ」
悟空は悟林と共に岩から下りると早速座っていた岩を持ち上げる。
「行くぞっ!ほれーっ!!」
「たーっ!!」
大きなボールを一直線に投げるように大岩を放り、悟飯は剣を持つ手に力を入れ、剣の重みと力で岩に振った。
大岩はゼットソードに斬られ、真っ二つに割れて悟飯の背後に飛んで地面を削った。
「へー、中々の切れ味…次は何にしようかなー」
次に投げる物を探す悟林に界王神が待ったをかけた。
「どうせなら、もっと硬い物で試してみましょうよ」
そう言って手の平を空に向けると界王神の頭上に微かな歪みが生じ、小さい音がして空中に線が走る。
光の線が正方形を形作ると、黒くて鈍い光を放つ重量のありそうな石が宙に浮いていた。
「悟林さん、これを」
手を振ると、悟林の方へ放物線を描いて飛ぶ。
悟林は、それなりの重量があるらしいそれを一瞬踏ん張って受け止めた。
「これって、ダイヤより硬いのかな?」
「ダイヤなんて、目じゃない位に硬いですよ。何しろ、宇宙で一番硬いと言われている“カッチン鋼”という物ですから」
「へえ!じゃあ早速やるよ!空振りなんて止めてよね悟飯!」
宇宙一硬い金属ならば確かに切れ味の確認に使うとしても申し分ないだろう。
「よし!良いよ姉さん!」
「そおれっ!!」
先程の悟空と同じようにカッチン鋼を放り投げると悟飯もゼットソードを振りかぶったが、あっさりと折れてしまった。
「…界王神様…自慢のゼットソードが折れちゃったけど?」
悟林がポツリと呟くと、界王神は顎を外しそうな状態であった。
「そそ……そんな……ゼ、ゼ、ゼ……ゼットソードが……折れ、折れ……さ…最強の剣が…」
「あーあ。界王神様があんな硬いので試してみろって言うから……」
「だ、だって……手にした者は……世界一の力を持つ事が出来ると……こ、この聖域の、伝説の剣なのですよ……?」
「でも、実際折れたし」
情け容赦のない事実を言う悟林。
伝説というのはどこかしらで歪曲されていたりする事が往々にしてあるため、これもそうなのだろう。
ばっきり折れている剣を見つめ、悟飯がそれを下に落とすと相変わらず重たそうな音を立てて剣は地面にめり込んだ。
「ちょっと大げさな伝説だったみたいですね……でもまあ、おかげで腕力は随分と上がりましたよ。あのゼットソード、すんごく重かったから。もしかしたら、そういう事で世界一の力が手に入るってことかもしれませんよ」
悟飯の言葉に救いを得たように、拳を握り込む界王神。
「な、なるほど……普段で力がそこまでついたのなら、超サイヤ人になれば更に相当のパワーアップになっているはず…!う…うん!そうですよ……きっとそれが世界一の力…!」
「単純な腕力で魔人ブウを倒せるとは到底思えないよね」
「ああ、魔人ブウ以上ってのはちょっとなあ…」
確かに強くはなるだろうが、あの魔人ブウに腕力がついたからって勝てるとは思えない。
悟飯が変身出来るのは良くて超サイヤ人2までで、超サイヤ人3の攻撃にも耐える魔人ブウに通用しないだろう。
全員が唸っていると、界王神の背後から声がかかった。
「へっへ~、違いますよ~~だ」
先ほどまで全く気配がなかった人物にそれぞれが驚いて声のした方を見てみれば、界王神と格好が似ている老人が立っていた。
「ありゃ?何だ、あの爺ちゃん……」
悟空の疑問に老人が答える。
「儂ゃあよ、おめえのよ、15代前のよ、界王神なんだな~これが」
「え…!?じゅ…15代前の界王神様ですか!?」
「そうなんだな~、むかーし昔よ、やたらめったら強くてよ、悪ーい奴がおってよ。まあ今の魔人ブウほどじゃあないがな~、そいつによ、あの剣に封じ込められちまったんだな~~これが。儂の恐ろしさにビビってよ。そうしたんだな~」
「あのーお爺さん界王神様…封じ込められるくらい恐れられるって…お爺さん、そんなに強いの…?」
界王神がそうだったようにこの老界王神も気が感じられないのでどこまで強いのか分からない。
「んー、お前さん。サイヤ人じゃな?戦闘力で判断するのはサイヤ人の悪い癖じゃな、そいつが恐れたのは儂のパワーではない。儂の恐ろしい“能力”なんじゃ」
「え?恐ろしい能力?何それ?」
「聞きたいか?」
「それはもう」
「ふふ~、聞いて驚け。儂ゃあよ、超能力でよ、どんなに凄い達人でもよ、隠された力をよ、ど~んとど~~んと限界以上に引き出すことが出来るんだな~。これが、うへへへへ…聞いたことあるか?こんな能力」
「おおーっ!!」
「あー、悟飯が昔してもらったナメック星の最長老様に潜在能力を引き出してもらったのと同じ能力ね」
界王神が感心している隣で悟林は悟飯から聞いたナメック星の最長老にしてもらったことを思い出し、それを口にした。
「馬鹿もーん!ナメック星人の能力と一緒にするな~っ!儂の能力はそんなのとは比べ物にならん威力なんじゃからな~っ!!」
「でも見てないし、受けてもいないから比べようがないしね」
「むっ!よーし、そこまで言うのなら仕方ないのう。儂がお前の潜在能力を引き出してやるわい!後、あの剣を抜いたお前も来い!」
「え?僕もですか?」
「あの剣を抜いて振り回せるような者ならよ。儂にかかればよ。ぜ~ったい現世一になれるぞ。しかしよ……あの剣抜いてよ、儂を出してくれるのはよ、界王神の誰かだと思ってたらよ……サイヤ人とは言え下界の人間だとはな~、世も末じゃの~」
「も…申し訳ありません…」
老界王神の言葉に気まずそうに返す界王神。
「本当なら1人ずつなんじゃが…あそこまで馬鹿にされては黙っとれんからな~。今回は超フルパワーでやってやるわい。では行くぞ!魔人ブウを倒してこい!」
手を上下に振り振り、腰を振り、悟林と悟飯の周りをハイペースで踊り出したのをしばらく見ていたが、ずっとその行動を続けている。
「あ…あの…それは…」
「静かに!大切な儀式なのだっ!!」
「どれだけかかるの?」
「2人いっぺんにするから本来は倍の儀式に10時間、パワーアップに40時間だっ!!しかし今回は超フルパワーでやっとるから半分の時間じゃ!」
つまり儀式に5時間、パワーアップに20時間というわけだ。
「オ…オラ、ちょっと修行してくる。頑張れよおめえ達」
「そ…そんな…姉さん、どうしよう…姉さん?」
「すう…すう…」
隣の悟林を見遣ると、立ったまま寝ている悟林であった。
「ね、姉さん…!」
始まって早々に寝てしまった図太い姉の姿に悟飯は起こそうにも大きな声を出すわけにはいかないため、1人で老界王神の儀式を見ることになるのであった。
そして長ーい儀式がようやく終わり、パワーアップの時間となるわけだが、既に悟林は座りながら中華まんを齧っていた。
「ね、姉さん…行儀が悪いよ…真面目にやった方がいいんじゃ…」
「それ、漫画読みながらやってる界王神様に言ってくれる?」
「で、でもブウが変化したようだし…」
魔人ブウの気が大きく変化したのだ。
今までの無邪気な気から邪悪な気に。
少しくらい危機感を持った方が良いのではないか?
「悟天達にはフュージョンを教えたし、やばくなったらピッコロさんが動くよ。ピッコロさんは少なくても平和ボケしたお前より遥かに頼りになるからね」
「うぐ…」
隣で呻く悟飯に構わず食べ続け、食べ終えるのと同時に瞑想をする。
現世でやるべきことはやってきた。
もしこのパワーアップが駄目だった場合は現世の希望である2人が何とかしてくれることを祈るしかない。
しかし、潜在能力と言っても相当修行した後なのでどれだけの力が眠っているのか。
父親の悟空や仲間からは悟飯と同じく潜在能力が高いと言われてきたが、悟飯みたいな火事場の馬鹿力を発揮したことなどない。
「(少しだけ気を解放してみるかな)」
気を解放すると予想以上のパワーが吹き出して隣の悟飯を吹き飛ばしてしまった。
「え?嘘ぉ…」
唖然としながら大きく吹き飛んだ弟の姿に思わず呟き、老界王神はニヤリと笑った。
「どうじゃ?儂の能力は?」
「す、凄い…少し気を解放しただけなのに…」
超サイヤ人3を超える勢いに悟林は自分にまだこれほどの力が眠っていたのかと驚く。
「お前の度重なる修行の賜物じゃよ。お前も戻ってさっさと座れ、時間が長引くぞ」
「は、はい…」
吹き飛ばされた時にぶつけた頭を擦りながら再び座る。
悟飯の表情には老界王神への不信はもうなかった。
「なあ、潜在能力って元々持っている隠された…本当の力…だよな」
「え…ええ…そうだと、お…思いますが…」
悟空の問いに界王神は驚きながらも答えた。
「そ…そりゃねえだろ…あいつどれだけ強くなりゃ気が済むんだ…ってことは悟飯も相当強くなるってことだろ…あいつら揃ってどれだけの力を隠してやがったんだよ…」
双子の潜在能力の高さは悟空も理解していたつもりだが、いざそれを見せられると唖然となる。
しかし、状況はますます悪化していき、変化したブウによって人類はほとんど絶滅してしまい、終いにはブウに天界に乗り込まれ、精神と時の部屋で闘うことになってしまう。
精神と時の部屋で修行したことでパワーアップした悟天とトランクスの融合戦士であるゴテンクスは超化と独特な必殺技で応戦する。
しかし、超パワーアップによる影響か高飛車な性格となってしまったゴテンクスは調子に乗ってしまい、ブウを精神と時の部屋から抜け出すきっかけとなってしまい、外に出た直後に仲間はチョコレートにされて食べられてしまう。
直後に出てきたゴテンクスは超サイヤ人3に変身しており、そのパワーでブウと互角以上に渡り合うものの、超サイヤ人3はフュージョンの融合のエネルギーを大きく消費してしまい、後一歩のところで超化が解けてしまい、フュージョンが解けてしまう。
誰もが慌てるものの、老界王神のパワーアップは既に完了しており、それについて尋ねても呆れる理由が返ってきた。
「ピンチになってから行った方がドラマチックじゃろうが」
「どうすればパワーアップした力を引き出せるの?」
「お前達、良くスーパー何とかに変身するじゃろ。あの要領じゃ、気合いを込めりゃあええ」
「超サイヤ人の要領ですね……分かりました」
拳を握り、気を入れた悟飯を中心に爆発が起きた。
目の前にいた老界王神に至っては、悟飯から大きく離れた場所に飛ばされていた。
「す、凄い…!凄いよ姉さ…」
「ふんっ!!」
悟林も同様に潜在能力を解放し、悟飯よりも数段上の気を放出した。
これには界王神どころか悟空も堪えきれずに吹き飛ばされてしまう。
「へえ!これは良いや!私の力が究極に高まった感じ!!」
「ご、悟飯以上のパワーだ…もう滅茶苦茶だ…」
潜在能力を解放した悟林のあまりのパワーに呆れたように笑う悟空。
「…そりゃそうじゃろ。儂の能力は全ての力を解放する。それはスーパー何とかも含めてじゃ。生まれついての潜在能力は同じでも肉体の強さや力の引き出しも悟林の方が上なんじゃから悟飯より強くて当然じゃ」
起き上がった老界王神の説明に誰もが納得する。
「…なるほど」
悟飯よりも強い力と聞いて完全な超サイヤ人2と超サイヤ人3が思い浮かんだ。
それに至れるくらいに強いなら悟飯より強くて当然だと言うのだろう。
「と、とにかく終わったなら急ぐぞ!オラの瞬間移動で地球に戻るぞ悟飯!」
「は、はい!…でも…」
「悪いね悟飯。私はあの世の人間だから行きたくても無理なの…これでもう悟飯やみんなに会うことはないよ。お前やみんながあの世に来るまでは…頑張れ悟飯。お父さんに迷惑かけないようにするんだよ。」
「姉さん…僕のこと昔みたいに信用してくれないの…?」
「子供の頃なら信用してた。お前はまだ勘が戻ってないんだから心配で仕方ない。信用して欲しかったら鈍らない程度の修行すれば?」
からかいながらそう言って悟飯の横を通りすぎると父親の悟空に抱きつき、悟空もそれを受け入れる。
「お父さん、悟飯をお願いね?あの子危なっかしいから」
「ああ、大丈夫だ。オラも出来るだけのことはするさ…死んでるおめえにこんなこと言うのも変だけどよ。元気でな」
「うん、死んだらまた会おうね」
縁起でもないが、2人が会うには悟空が死んであの世に行くしかないのでこう言うしかない。
悟飯は父親と自分の扱いの差に複雑な表情を浮かべていた。
そして悟空の瞬間移動で地球に戻った悟飯。
そして闘いの行く末を水晶玉で見つめる悟林。
「頑張れ悟飯…」
現世で一番強い戦士となった弟を応援する。
そして悟飯とブウの闘いが始まったのだが、結果として悟飯はブウには勝てなかった。
いいところまで行ったのだが、潜在能力を開放して強くなった自分の力に慢心してしまい、ブウに逃げられてしまう。
それだけならまだしも、次に現れたブウの挑発によって悟天達がフュージョンしてしまい、そのパワーと足りない頭脳を補うためにピッコロと一緒にゴテンクスが吸収されてしまい、一気に逆転されてしまう。
悟空も援護してくれているが、実力差もあって焼け石に水だ。
時間稼ぎをしようにも悟飯の動きは師匠であるピッコロを吸収したことで完全に見切られており、時間稼ぎすら出来ない。
「ま、まずいですよ悟林さん。このままでは悟飯さんが…」
「いや、最初の様子見の攻防の時に悟飯の攻撃は確かに効いていた。多分、そこまで隔絶とした実力差はない…悟飯の鈍りとブウがピッコロさんを吸収したからだ。あんの、馬鹿…」
魔人ブウの体質を考えればそれなりの実力差があればほとんどの攻撃を受け流せる。
回避していると言うことは直撃を受ければブウもダメージを受ける。
だが、そんなのは何の慰めにもならないわけで。
「7年も修行サボったツケが出てるじゃない…ゴテンクス君のフュージョンが解けるまで保つかな…?」
「これは計算違いじゃったのう…まあ、これで儂の努力が無にならんで済んだわけじゃが。悟林、お前助けに行ってやれ」
「へ?あ、私はもう現世に行っちゃったから…」
助けに行きたいのは山々だが、既に1日だけ現世に戻れる権限は使ってしまっているから無理だ。
「…そうですご先祖様。実は孫悟林はもう二度と現世には行けないのです…」
「んなこたあ、知っとるわい。代わりに儂の命をくれてやるんじゃ、それでお前は生き返れる」
老界王神の命を人間である悟林に託す。
それを聞いた2人は驚愕で目を見開く。
「か、界王神様の命を私に!?」
「ま、待って下さい!そ、それならせめてこの私の命を…私もそれぐらいは役に立ちたい…!」
地球に来てからほとんど役に立てていないことを気にしていたのか、界王神が代わりに自分の命を差し出そうとする。
「無理せんでいい。お前はまだ若い…儂はどうせ後千年ぐらいしか生きられんじゃろから…」
「か、界王神様…」
そして老界王神が座り、悟林に自分の命を渡してくれた。
「…では、さらばじゃ。う…!」
「か、界王神様…!」
命を悟林に渡したことで死亡し、力なく倒れる老界王神。
頭の輪が消えたことで自分が生き返ったのを確認する。
「ありがとう界王神様…!必ず魔人ブウを倒してみせるから…!」
「よし!早く行け!!」
「へっ!?」
頭に死人の証である輪が現れた途端に起き上がった老界王神に悟林は唖然となる。
「ほれほれっ!儂の死を無駄にする気か!」
「あ…はい…分かりました…」
「ほれ、お前が悟林を地球に連れていってやれ」
「わ、分かりました」
死んでも元気な老界王神に2人は唖然となりながら地球へ向かおうとしたのだが。
「あ、そうだ。潜在能力を解放した状態で超サイヤ人に変身すればもっと強くなれるかな?」
「いや、儂の能力は超サイヤ人の力も秘められた力として解放しておる。超サイヤ人に変身などしたら逆に弱くなるばかりか疲れるだけじゃぞ」
「あ、超サイヤ人含めてのパワーアップなんだっけ」
「まあ、お前ならもう超サイヤ人に変身する必要はないじゃろ。儂はお前の潜在能力を引き出したが、それをどう伸ばすかどうかはお前次第じゃ。精進を怠るんじゃないぞ」
「勿論!ありがとう界王神様!この恩は一生忘れないよ!今度地球のお煎餅とか羊羮とかのお茶菓子を贈るから!」
「あ、それよりも儂は若い娘の…」
「では行きますよ!カイカイ!」
「おい!」
老界王神が言い終わる前に界王神が瞬間移動し、悟飯とブウが闘っている場所から大分離れた場所に現れる。
「それじゃあ界王神様!ありがとう!もう1人の界王神様にもよろしく!」
「分かりました。遥か遠い界王神界であなたの武運を祈っています!頑張って!」
「よーし、待ってろーっ!!」
界王神が瞬間移動で界王神界に戻るのを確認した悟林は一直線に闘いの場へ向かった。
因みに戻った界王神は老界王神に説教を喰らうことに。
そしてブウが悟飯にとどめを刺そうとした直前に背後からの奇襲を仕掛け、ブウを岩に叩き付ける。
「ご、悟林さん!?」
悟飯の治療に駆け付けたデンデがもう二度と現世に戻れないはずの悟林の登場に驚いている。
「やあ、神様。数日ぶり」
「お、おめえ、どうしてここに!?」
同じくデンデの治療を受けて全快している悟空も困惑している。
「えーっと、生き返っちゃった。詳しい話は後でするよ…。まずは…」
岩から飛び出してきたブウが悟林を視界に入れる。
「…貴様…確か前に会ったな…そうだ、妙な変身をした奴だ…何だ、助けに来たつもりか?馬鹿な奴だ…あの時の魔人ブウとは根本的に次元が違うのが分からんのか?」
「そう言うお前もピッコロさんを吸収したにしては馬鹿なままじゃない。私が何の勝算もなく駆け付けたと思ってるの?」
見下すブウに不敵な笑みを向ける悟林。
「口が過ぎるぞ…ハッキリ言うが、貴様なんぞが何をしようと絶対にダメージすら与えられはせんぞ」
「ふん、逆だよ。お前程度じゃあ、どうしようと私にダメージを与えられない」
「雑魚が…余程死にたいらしいな…良かろう!貴様から先に殺してやる!」
ブウが早速殴り掛かってくる。
悟林は潜在能力を解放し、ブウの腕を掴んだ。
「ぬうっ!?」
「あ、ごめんね。あんまり遅いから掴み止めちゃったよっ!!」
腕を支えにしながらブウの顔面に蹴りを入れ、それによりブウの鼻から鼻血が流れる。
「鼻血出てるよ。太っちょの時とかみたいに鼻がない方が良かったんじゃないの?」
「……粋がるなよ!!」
体の穴から蒸気を噴き出して怒りを露にしながら今度は気弾で攻撃してくる。
「てりゃあっ!!」
それを足で蹴り返し、ブウが頭を亀のように引っ込ませながらかわした隙を突いて顔面を殴り飛ばし、吹っ飛んだブウを超スピードで追いながら滅多打ちにし、そして触角を掴むと再び岩に叩き付ける。
「ほい」
即座に穴に気弾を落とすと大爆発が起きる。
「こらー、出てこいブウ。時間稼ぎで不利になるのはお前なんだよ?」
フュージョンの時間制限は30分。
悟飯との闘いで経過した時間を考えるともう10分もないはずだ。
場所は界王神界に戻り、老界王神からの説教を受けていた界王神は水晶の中を覗いて興奮していた。
「す、凄いっ!悟飯さんでさえ敵わなかった吸収してパワーアップしたはずの魔人ブウが手も足も出ないなんて!!」
「当然じゃ、元々飛び抜けた潜在能力を持ち、その上で地道な修行を続けて来たんじゃ。おまけに儂の能力でパワーアップしたんじゃから多少の吸収じゃどうにもならんくらいに最強に決まっとるわい」
次の瞬間、ブウの手が悟林の足を掴んで引きずり込もうとするが、それよりも早く足を上げてブウを引きずり出し、触角を掴んでブウの横っ面を殴り飛ばす。
それを数回繰り返すと上空に蹴り上げて気弾を当てた。
煙が晴れるとボロボロのブウの姿があった。
「ぐぐぐ…き、効かんなあっ!」
「その割には顔に余裕がないけど?もっと真剣にやってくれない?私を殺したいならもっと強い攻撃をしなくちゃ…おっと、お前はそれで精一杯“お強い”攻撃をしてるんだったねぇ…これは失敬しちゃったよ」
「ぬううう…!はあっ!!」
気合を入れて再生を完了させると青筋を浮かべて悟林を睨むが、悟林はそんなブウを褒めながら拍手する。
「おおー、無事に治せたねー。偉い偉い」
「ち、畜生…こんな…」
「ゴテンクス君を吸収して最強になったと思ったのにあっさり覆されちゃったから悔しいだろうねえ」
挑発しながら距離を詰めて腹に拳をめり込ませると、ブウが蹲る。
そして無防備な顔面に数回拳を叩き込み、仰け反った直後に蹴り飛ばして気弾を連射し、ダメージを与えていく。
しかしブウもやられっぱなしではないのか、攻撃を掻い潜りながら迫ってくる。
「死ねーーーっ!!」
「死ぬのはお前…」
「うっ!?」
途中でブウが急停止し、苦しみ出す。
「え?」
「う…うおおお…し…しまっ…あうっ!!」
ブウの気と服装が変化し、気が大きく下がってピッコロの要素が強く出た格好となる。
「あ、時間切れね。ピッコロさんが強く出てる!パワーが大きく落ちたよ、それなら悟飯でも倒せるけど…念には念を…」
かめはめ波の体勢に入り、手のひらに気を充実させていくが、ブウは笑みを浮かべた。
「…もしもの時のために保険をかけておいて良かったよ…」
「は?保険?」
「うあっ!!」
離れた場所で悟飯の声が聞こえた。
振り向くと、そこにはブウの一部に覆われた悟飯の姿。
「貴様に岩に叩き付けられた時に少しな…はあっ!!」
悟飯はそのまま吸収され、悟飯の特徴が強く出たブウの姿がマントから紫の道着のみの姿となる。
「ちょ…悟飯…何あっさり吸収されてるの…」
「ふ…ふはははは…!これは良い!前より更にパワーアップしてしまったぞ!しかも今度は時間制限なしだ!!」
悟飯を吸収したことでゴテンクス吸収時よりもブウの気が上がっている。
「(ピッコロさんと悟天とトランクス君には悪いけど悟飯と比べればちょっとした誤差みたいなもんだし、実質ブウと悟飯の戦闘力を足し合わせたようなもんか)…あんの馬鹿…終わったらお仕置きだからね…」
悟飯へのお仕置きを考えながら悟林は再び構えを取るのであった。
「見るがいい!これがかつてない究極の魔人の姿…ぐおっ!?」
「隙ありぃっ!!」
跳ね上がったパワーに陶酔しているブウの顔面を殴り飛ばし、倒れたブウをボールのように蹴り飛ばす。
「ごめんごめん、隙だらけだったからさ。さあ、第二ラウンドと行こうじゃない。さっさと起きて掛かってきなよ自称・究極の魔人さん?」
「…俺を怒らせれば怒らせるほど、貴様は苦しんで死ぬことになるぞ。分かってやってるのか?」
「だったらさっさと本気を見せてくれないかな?はっきり言ってこのままじゃつまらないからさ。それともパワーが大きすぎて使いこなせないのかな?違うのなら…さっさと掛かってきなさい?悟飯ちゃんを吸収した魔人ブウちゃん」
「良いだろう…後悔するなあっ!!」
「おっ!?」
憤怒の表情のまま突撃してきたブウ。
それは悟林に回避を迷いなく選択させるほどで悟林の表情から一瞬余裕が消えた。
横に跳んでかわした悟林にブウは腕を一薙ぎする。
舞空術で急上昇するとそれをかわす。
気を溜めた腕を一薙ぎすることで爆発を起こすこの技はピッコロの技だ。
ブウは煙に紛れながら悟林に襲い掛かるが、それを受け止める。
「何っ!?」
「いくら視界が悪くてもお前の場所くらい分かるさ!!」
拳と蹴りが何度もぶつかり合い、最後に頭突きのぶつけ合いとなる。
頭突きのぶつけ合いに勝利したのは悟林であった。
「この…石頭が…!」
「お父さん譲りなんでね!」
「チッ!」
蹴りを繰り出すブウだが、足を掴んで勢い良く地面に放り投げる。
ブウは途中で停止するが、それを読んでいた悟林がブウを急降下の勢いを利用して踏み潰す。
「どうしたのかな!?悟飯達を吸収して手に入れたパワーはそんなもんなの!?」
「調子に乗るな…!チョコになるがいい!!」
「おっと!?」
触角が動いて悟林に光線を浴びせようとするが、悟林は咄嗟にかわして距離を取るとブウはある技を繰り出す。
口から白い何かを吐き出すと、幽霊のようなブウとなる。
「さあ、行け!ゴースト共!スーパーゴーストカミカゼアターック!!」
「ああ、それ吸収したゴテンクス君の技ね」
「ほう!知っていたか!ならば恐ろしさも知っているだろう!少しでも触れれば爆発するぞ!」
「それっ!」
ゴースト達が悟林に襲い掛かるが、悟林は手のひらから巨大な気弾を発射する。
それをゴースト達はかわそうとするが、かわした直後に気弾は分裂してゴースト達を爆砕する。
「何っ!?」
「2人の才能は凄いけど、まだ子供だよ。やりようはある…ブウ、相当余裕が無くなってるようだね…うん、もう少し本気出そうかな?」
「くっ…!ならばっ!」
指先を額に当てて気を集中させていくブウ。
「今度はピッコロさんの魔貫光殺砲か」
「流石の貴様もこれを喰らえばひとたまりもあるまい!魔貫光殺砲!!」
「はっ!!」
師匠であるピッコロの技ならば精神的に動揺するかと思ったが、片手でシールドを張り、それを回転させて悟林もまた魔貫光殺砲を放った。
「何っ!?」
ブウの魔貫光殺砲は押し切られ、逆に右肩を消し飛ばされると言う手痛い一撃を喰らってしまう。
「こっちは本場の魔貫光殺砲だよ。ついでにこれも喰らえ!!」
追撃の気弾の連射。
ブウは即座に損傷箇所を再生し、気弾を掻い潜りながら蹴り飛ばす。
「この技であの世に送ってやる!魔閃光!!」
「っ…お返しだ!!」
ブウが放った気功波の直撃を受けるが、耐え抜いて腕を動かすと、放った気弾がブウに直撃する。
悟林は、ブウを追い詰めるためにあの技の使用を決意したのであった。
後書き
悟林がブウと闘ったことで気が抜けて吸収された悟飯。
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