イベリス
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第三十五話 テストの結果を受けてその七
「家族としてね」
「こういうことをするのも家族なの」
「そうよ、ただね」
母は父をあらためて見て思った。
「お父さん何飲んだのかしら」
「相当酔ってるわよね」
「ええ、普段飲んだ時以上にね」
「ウイスキーだよ」
父は家族にその飲んだ酒の話もした。
「一気に酔いたくてな」
「ウイスキーって」
そう聞いてだ、咲は思わず顔を顰めさせて言った。
「強いのに」
「だから一気に酔えるだろ」
「それで飲んだの」
「ああ、埼玉転勤と言われてな」
「それでそうなるのね」
「ああ、まあリストラとかされないだけずっといいな」
父はこうも言った。
「北朝鮮に行くとかな」
「リストラも大変だけれどね」
「あのね、北朝鮮にガソリンスタンドとかそういう会社ないでしょ」
母も言った。
「あそこには」
「そんなのある筈がないな」
父もそれはと納得した。
「言ってみてから思ったが」
「そうでしょ」
「あの国車走っていないか」
「走っていてもね」
「殆どないな」
「食べものすらないし」
「技術もないか」
「ないわよ」
そんなものはというのだ。
「今の日本とはとてもね」
「比べものにならないな」
「ガソリン自体も軍隊に集中的に回されてるでしょ」
「そうしたお国柄だな」
「だからね」
そうした国だからだというのだ。
「あそこに行くことはないわ」
「そもそもあそこに支社とかないしな」
「八条石油もね」
「流石にないな」
「というかね」
咲はビールを飲みつつ父にクールな目で言った。
「埼玉県と北朝鮮じゃね」
「全然違うな」
「天国と地獄位ね」
「どっちが天国かは言うまでもないな」
「お酒もないのよ」
今飲んでいるそれすらというのだ。
「食べものすらないのに」
「そうだな」
「そんな国だとね」
それこそというのだ。
「お酒も飲めないわよ」
「自棄酒も出来ないか」
「絶対にね、お父さんが行くこともないし」
「埼玉と比べてもか」
「埼玉県もちょっと歩いたらコンビニあるでしょ」
こうもだ、咲は言った。
「そうでしょ」
「ある筈がないな」
「八条石油って八条グループの企業だけれど」
世界的企業グループである、その資産はビル=ゲイツヤロスチャイルド家にも匹敵すると言われている。
「八条グループコンビニもやってるじゃない」
「埼玉にもかなりのお店があるな」
「だったら大丈夫よ」
「コンビニがあるとか」
「そう、レストランやラーメン屋さんもあるわよね」
「居酒屋もあるでしょ」
母はこの店を話に出した。
「だったらね」
「全然いいか」
「北朝鮮と比べたら本当に天国よ」
埼玉はというのだ。
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