ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~
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第30話
前書き
超サイヤ2で大暴れさせますが、流石にセルをあっさり倒させるわけにはいきません。
悟空の理想としては昔みたいにすぐに怒ってパワーアップするって感じだったんでしょうね、実戦では結構な頻度でキレてたから修行中は無理でも実戦ならと思ってたんでしょう。
セルが仙豆によって回復すると、悟林と相対した。
「幸運かもしれんぞ、真の恐怖を知った途端に死ぬことになるんだ」
「じゃあ、その真の恐怖ってのを教えてもらおうかな?…来なよ」
「やれやれ、サイヤ人と言うのは自信過剰なようだ。半端な者ほど死を早めることを理解出来ないのだからな!」
悟林の挑発にセルの回し蹴りが繰り出されるが、悟林はそれを片手で掴み止めた。
「もっと真剣にやってくれないかな?」
「チッ!」
舌打ちしながらセルは足を放し、ラッシュを繰り出す。
悟林は危なげなくセルの猛攻をかわし続ける。
「くっ…すばしっこいチビだ。スピードだけは本気になってやるか」
先程とは段違いのスピードで悟林に迫るが、悟林もまたスピードを上げてセルの突き出された腕を支えに逆に強烈な蹴りを顔面に叩き付ける。
「ぐうっ!?」
「だりゃあっ!!」
仰け反ったセルに追撃の回し蹴りを喰らわせて尻餅を着かせた。
「セ、セルが尻餅を着いたぞ!」
「先制攻撃を決めたのは姉さんか…!」
クリリンと未来悟飯が先制攻撃を決めた悟林にもしかしたらと希望を持ち始める。
「なるほど、孫悟空の言っていたことも満更出鱈目ではなかったようだ。」
口元の血を指で拭うとセルは悟林の評価を上方修正する。
「行くぞ!」
地面を蹴ってセルとの間合いを詰め、セルが上空に飛び上がり、悟林もそれを追い掛けるとセルの尻尾が勢い良く伸びた。
「へっ!?うわあああ!?」
尻尾の先端はかわしたものの、足に絡み付いて岩に向かって振り落とされ、間の抜けた声と共に悟林は岩に激突した。
「ご、悟林…!」
岩に激突した悟林に焦るピッコロに悟空は思わず笑ってしまった。
このピッコロの心を大きく揺るがせるのは悟林と悟飯だけなのだから。
「心配すんなピッコロ。悟林の気は全然減ってねえだろ」
次の瞬間、岩が気によって吹き飛ぶ。
そこには強靭な気で体が守られていたことで、ほぼ無傷の悟林が痛む頭を擦りながら歩いていた。
「痛たた…その尻尾って退化してたんじゃないんだ…」
「使う必要がないからしまっているだけだ。」
「ずるいなあ…でも、大分体が温まってきたぞ…悪かったね、私はスロースターターなんだ。これからが本番だよ!」
「ほう?そうでなくては困る。孫悟空の代わりに闘うのだ。こんなにもあっさり終わってしまっては拍子抜けも良いところだ。」
「お楽しみはこれからだよ」
深呼吸をして気を解放すると地面を蹴って距離を詰めるのと同時にセルの顔面に悟林の拳が突き刺さり、怯んだ隙に連擊を叩き込んで最後には蹴りを繰り出して吹き飛ばす。
「魔閃光!!」
吹き飛んでいるセルに追撃の気功波を放ち、直撃させると大爆発が起き、下にいるサタン達が余波で吹き飛んでいるが、逃げる時間はあったのに逃げなかったので自己責任と言うことで気にしない方向で行こう。
「き…貴様…!」
「さっさと再生しなよ。ピッコロさんの細胞を持ってるならそれくらいの傷はすぐに治せるでしょ」
体の所々が吹き飛んでいるがセルが気合を入れると即座に損失した部位が再生した。
「…っ…調子に乗るなよ小娘。まさか本気でこの私を倒せると思っているのか?」
「勿論」
セルの言葉に対して笑みを浮かべて断言する悟林。
「…ふん、大きく出たな…では見せてやろう、この私の恐ろしい真のパワーを…」
悟林の断言に一瞬セルは目を見開いたものの、すぐに笑みを戻し、体に気を充実させていく。
「(気が膨れ上がって充実していく。ついにセルのフルパワーが拝めるってわけだね)」
次の瞬間、セルが気を解放したことで周囲に凄まじい暴風が吹き荒れる。
「つ…ついにセルがフルパワーの闘いを見せる」
「ち…地球全体が震えるような、も…物凄い気だ」
上空の悟空とクリリンがセルのフルパワーに戦慄する。
「悟林…」
ピッコロはセルのフルパワーの気を間近で受けている弟子を心配そうに見下ろしていた。
「どうだ…これが本気になった私だ…」
「それがお前のフルパワーなんだ…ちょっと前まで私達が使っていた変身に似てる。それじゃあ私もフルパワーで相手してあげるよ……はああっ!!」
悟林も気合を入れて気を解放するとオーラの勢いが激しくなり、スパークが混じる。
「っ…!」
「これが超サイヤ人を超えた超サイヤ人…長ったらしいから超サイヤ人2って呼ぶよ。お前を倒すには二度と元に戻らないように完全に消し飛ばしてやる…!!」
「何!?」
「はっ!!」
気合砲を繰り出してセルを吹き飛ばし、それを追い掛ける。
すぐに距離を詰めて連続で攻撃を入れていき、途中で何度かセルの反撃が繰り出されたが容易く捌いて、最後には組んだ拳を脳天に叩き付けて地面に沈めた。
「そらそらそらっ!!」
再生する時間を与えないように即座に追撃の気弾を連射し、セルが沈んだ地面に放つと大爆発が起こる。
セルは離れた場所から飛び出して悟林に突撃するが、拳を受け流して逆に痛烈な拳による連打を叩き込む。
「す、凄え…あれが悟空との修行の成果なのか…!」
あのセルが、精神と時の部屋で修行してパワーアップしたベジータもトランクスも悟空さえも敵わなかったセルが一方的にやられている。
「しかも悟林はセルの動きを完全に見切っている…悟空、お前が最初に出たのはセルの力を確かめるだけではなく、セルの動きを悟林に学習させるためだったんだな」
「まあな、でもそんなのは関係ねえ。今の悟林はセルを完全に上回っている。全てな」
「そうか…俺は悟林のためと想って反対したが…あいつの成長を信じてやれなかった…」
「す、凄い…あれが悟林さんの本気…!」
トランクスは過去の師匠のフルパワーに驚く。
「………」
驚く周囲を他所に悟飯は何も言わずに複雑そうに悟林を見つめていた。
悟林は何度吹き飛ばされても殴り掛かるセルの攻めを受け流し、逆に手痛い反撃を浴びせる。
鳩尾に悟林の鉄拳が叩き込まれ、怯んだ隙に強烈な回し蹴りが炸裂し、セルを吹き飛ばす。
「複雑か?」
「え?」
隣から聞こえてきた声に振り返ると、カプセルコーポレーションによって修理された人造人間16号が隣に佇んでいた。
「お前の姉があれほど強大な力を躊躇することなくセルにぶつけている姿が複雑か?俺はデータでしか孫悟林のことは知らんが、お前達の姉弟仲が悪くないのは分かる。お前に対して優しい姉が悪人とは言え一方的に力を振るうことが複雑なのだろう?」
「……」
16号の言う通り、それは図星だった。
時々からかってくることはあっても自分にとって悟林は優しい姉であった。
だからこそ、何の躊躇もなくセルに強大な力をぶつける姉の姿がまるで自分の知る姉ではなく戦闘民族のサイヤ人のように見えて嫌だった。
もしかしたら母親であるチチが超サイヤ人を嫌う理由は金髪以外にもこれが原因なのかもしれない。
超サイヤ人に変身すればまるで地球人の血が混じろうが、戦闘を好むサイヤ人であることに変わりはないと言うことを突き付けられているような。
次の瞬間、16号の大きな手が悟飯の頭に乗せられた。
「じゅ…16号さん…」
「孫悟飯…正しいことのために闘うことは罪ではない。セルのように話し合いなど通用しない相手もいるのだ。お前の気持ちは分かるが、守るためには闘わなければならないこともある。奴にとってはお前の守りたい存在も取るに足らない存在だ。邪悪な存在から守るためには優しさだけでは何も守れない。相応の力が必要だ。その相応の力が今の孫悟林なのではないか?」
「……はい」
「力に善悪などない。使う者の心によって決まる。お前の姉は正しいことのために使っている…俺にはそう見える」
「…16号さん……ありがとうございます…」
16号に礼を言うと悟飯は再び悟林とセルの闘いを見た。
闘いの流れは完全に悟林に向いており、追い詰められたセルは起死回生の気円斬を放った。
「はあっ!!」
悟林は難なく気円斬の面の部分を殴ることで粉砕した。
「お、己っ!!これならばどうだ!!魔貫光殺砲ーーーっ!!!!」
「そんな猿真似が通用するか!!」
セルが上空に飛び上がり、放たれた特大の魔貫光殺砲も真横から殴ることで弾き飛ばした。
「パワーに傾倒し過ぎたせいで魔貫光殺砲の強みのスピードが潰されている。正に猿真似だな」
「ええ、ピッコロさんの技はあんな物じゃありません」
未来悟飯と悟飯が弾き飛ばされた魔貫光殺砲を冷静に分析する。
確かに威力だけで見れば流石の悟林も直撃すればただでは済まないだろうが、パワーに傾倒し過ぎたせいで気功波のスピードが大きく落ちてしまい、防ぎやすくなってしまっている。
技と言う形ではあるが、かつてセルがトランクスに向かって言った言葉に近い物だ。
「ならば…これならばどうだ!か…め…は…め…」
「あ…あの野郎…!」
更に上空に移動したセルがかめはめ波の体勢を取ると、セルの意図を理解した悟空が焦りの表情を浮かべる。
「喰らえ!全力のかめはめ波だ!避ければ地球が吹っ飛ぶ…!受けざるを得んぞ…!」
「よ、よしやがれ…!冗談じゃねえぞ!」
「波ーーーっ!!」
クリリンの叫びが響くが、セルは悟林に向けて高密度の気の特大のかめはめ波を放った。
「お…終わった…」
あまりの規模と威力にベジータは諦めてしまうが、悟林は無言で指を額に当て、指先に気を集中させる。
界王拳による気のコントロールを繰り返した成果か、ほとんど時間をかけずに気は溜まった。
「これが…本物の魔貫光殺砲だーーーっ!!」
指先から放たれた細い気功波はセルの気功波を貫き、容易く霧散させるとセルの腹に風穴を開けた。
「っ……!!!う、うぐ…ぐぐぐ…な…何故だ…何故あれほどのパワーが奴に…」
「どう?ピッコロさん直伝の本場の魔貫光殺砲の威力は?お前の猿真似とは違うでしょ?」
貫かれた腹を押さえながら痛みに悶えるセルに対してニヤリと冷徹な笑みを浮かべる悟林。
「ご…悟林の奴…セルの馬鹿でかいかめはめ波をあんな細い一撃で…」
「あれが本当の魔貫光殺砲です。姉さんは更に気を集中させて攻撃の範囲を狭める代わりに破壊力と貫通力を上げたんでしょうね」
呆然となっているベジータの呟きに未来悟飯がセルを見上げながら言う。
先程の気功波はあまりにも細すぎるせいで派手さに欠ける一撃だったが、点に於ける威力は凄まじいの一言だ。
「ぐっ!ぬああっ!!」
「へえ、やる気はあるようだね。結構結構、そうこなくちゃね」
気合を入れて風穴の開いた部分を再生し、セルは地上の悟林を見下ろすが悟林は冷徹な笑みを浮かべたままだ。
「ち…畜生…畜生…!畜生おおおお…!ぬおおお…!かあっ!!」
血走った目で叫びながらセルは体に気を更に入れて体を巨大化させる。
だがそれは酷く偏りのあるものでセルの体は通常の2倍ほどに巨大化していた。
勢いよく地面に足をつければ、ドズンとやたら重たい音が響き、血走った目を悟林に向け、セルは完全に逆上していた。
「…そんなパワーアップのためだけの変身で私に勝てるつもり?馬鹿にするんじゃないよ」
巨大化し、異常な筋肥大を起こしたセルに失望の眼差しを向ける悟林。
「き…貴様なんか…貴様なんかに負けるはずはないんだああ…!があっ!!」
悟林の言葉に聞く耳持たず、大振りで殴りかかった拳はあっさり避けられ、地面に大きな穴が開いて衝撃により、周囲に亀裂も入っていた。
セルはがむしゃらに殴り掛かるが、悟林のスピードには全くついていけていない。
「パ、パワーを気にしすぎた変身でスピードがついていってない…俺に言ったミスをセル自身が…!あ…あいつ逆上している…」
元々勝てる見込みのない戦いが更に勝てない状況に陥っており、それは地球に住む者にとっては嬉しい事なのだが、ある種、滑稽とも言える展開だ。
「ふん!!」
悟林は飛び上がると、セルの顔面に強烈な蹴りを喰らわせた。
「あ…ぐっ!」
しかし巨大化の影響か耐久力が上がっているのか、セルはすぐに持ち直した。
しかし、スピードが激減しているセルでは悟林の超サイヤ人2のスピードにはついていけない。
「怒りに身を任せた図体と変身じゃ、私の今のスピードにはついてこられないんだ!!」
「ぐっ!!ぬおああああっ!!」
腹にラッシュを叩き込み続けるが、セルは何とか反撃の拳を繰り出す。
悟林はそれをかわして顔面を殴り、更に回し蹴りを繰り出して岩に叩き付けると指先を額に当てて気を極限まで集める。
指先に集まった気から紫電が迸り、大地を抉っていく。
「喰らえ…!魔貫光殺砲ーーーっ!!!!」
特大の魔貫光殺砲。
それは先程セルが放った物とは違って巨大化しているのにも関わらず猛スピードでセルに迫る。
そして魔貫光殺砲はセルに直撃し、その瞬間にエネルギーを解放させると大爆発が起こる。
魔貫光殺砲の弱点である再生能力のある敵にも有効打を与えられるように気功波が直撃した瞬間に爆発させることで効果的にダメージを与えられるようになる。
これなら魔閃かめはめ波の代わりとしても充分使っていけるだろう。
悟飯や未来悟飯は何とか吹き飛ばされずに済んだが、悟空やベジータでさえ爆風の勢いに抗えずに吹き飛ばされてしまう。
煙が晴れると体のほとんどが失っているセルの姿があった。
「あ…がう…」
何とか再生が終了して、よろめいて立ちあがった時だった。
猛烈な吐き気がセルを襲い、外から見ていて分かるほどに食道が膨れ、人間を1人吐き出した。
それは人造人間18号だった。
「18号!」
「18号だ!18号を吐き出した…!」
16号とクリリンが叫んだ直後にセルの姿が変化する。
悟林の与えたダメージはセルが完全体でいることを許さない。
完全体から一段階退化し、明らかに完全体時と比べて気の総量が大きく減っている。
これなら悟林を含めたサイヤ人とピッコロで一蹴出来る。
「これで終わりだよ。お前はもう私達には勝てない」
「達…?」
「そうだよ、私だけじゃない。お父さんや悟飯や未来の悟飯、ベジータさん、トランクスさん、ピッコロさんにも勝てない」
「おめえの負けだセル!!」
セルが周囲を見渡すと、完全体の時は取るに足らない存在であったはずのベジータやトランクス、ピッコロでさえもセルを大きく上回っていた。
悟空が断言するように言う。
「許さん…!貴様らは絶対に許さんぞ!!んぬぬぬぬぬ…ぬいいいいい…!!」
体が膨らみ始め、体内の気が増大し始めた。
ただ事ではないと判断した悟林は即座に顔面を殴って中断させた。
「ぐっ!!」
殴り飛ばされたセルの膨らんだ体が元に戻る。
「何をする気か知らないけど、お前が何かをやらかすのを待つほどお人好しに見える?最後に特大のをお見舞いしてやるよ。吹き飛べセル!!」
とどめを刺すために超サイヤ人2のフルパワーで気弾を放とうとする悟林。
凄まじい気が手のひらに集まっていくのであった。
悟林の手のひらに溜まっていく気を見ながらセルは必死に思考を巡らせた。
ピッコロとフリーザ譲りの明晰な頭脳によって様々な案は浮かぶものの、悟林との実力差を考えると無意味な物となる。
「(何か…何かないのか!?戦闘力を大きく上げる方法は!?)」
ピッコロとフリーザの記憶が駄目ならば悟空とベジータの記憶を頼りにする。
そこであることに気付いて不敵な笑みを浮かべる。
「これで…」
「太陽拳!!」
「うあっ!?」
視界を潰されたことにより、思わず悟林の手のひらに溜めていた気が霧散する。
セルの気が悟林から多少離れたが、そこまでではない。
視界が回復した時にはセルは手のひらを上に掲げて気弾を作り上げていた。
「ふははは!これで貴様も終わりだ!!」
「…?何それ?」
どう見ても大したことのない気弾だが、しかしそれが何を意味するのか悟空とベジータは知っている。
「まさかあれは、パワーボールか!?」
「悟林!早くそいつを壊すかセルを倒せーーーっ!」
「もう遅い!弾けて混ざれ!」
パワーボールが星の酸素と混じりあったことで人工的な月を作り出す。
「し、しまったーっ!!」
セルがパワーボールを見つめることでセルの体が大きく変化を始めたのを見て悟空が叫ぶ。
体が巨大化し始め、下半身が蜘蛛のような4本足になり、上半身もより屈強な物となる。
「ま、まさか…あいつ…大猿に相当する姿になったのか!?」
クリリンがどことなく大猿を彷彿とさせる変身に、幼い頃やベジータとの最初の闘いを思い出して戦慄した。
超サイヤ人に悟空達が変身出来るようになってから大猿への変身は過去の変身として見られたが、それをセルのような怪物がやるとなると、どれだけ恐ろしいのか。
ただの巨大化ではないのはピッコロやフリーザ親子の細胞が混じっているからなのか。
「はっ!!」
取り敢えず様子見も兼ねて悟林は気弾をセルに当てる。
顔面に直撃したにも関わらず、セルはニヤリと笑うと拳を振り下ろした。
「うわっ!?」
慌てて拳を避ける悟林にピッコロはクリリンから仙豆の入った皮袋を奪うと仙豆を悟空に押し付けた。
「おい、孫。これはもうフェアだのなんだの言っている場合じゃないぞ」
「ああ、分かってっさ。すまねえ、まさか月でパワーアップしちまうなんて思わなかった」
仙豆を噛み砕いて飲み込むと悟空は全快してセルの攻撃をかわしている悟林の元に向かう。
「悟林!」
「お父さん!危ないから離れてて!」
セルの拳が迫るが、悟空は悟林の腕を掴むと瞬間移動で離脱する。
「悟林、仙豆だ」
仲間達の所に移動した悟林はピッコロから仙豆を渡されてそれを噛み砕いて飲み込む。
「あれって何なの?」
「恐らくサイヤ人の大猿だろう。奴には俺とカカロットの細胞がある。そしてピッコロやフリーザの細胞もあるせいであんな姿になったんだろうぜ」
「完全体の時より凄い気だ…」
トランクスの呟き通り、完全体の時の数倍の気。
もしこれを完全体の状態でやられたなら危なかった。
「奴は体が大きくなったせいで動きが鈍くなっているはずです。素早く動いて撹乱し、同時に攻撃しましょう!!」
「ああ!」
未来悟飯が作戦を言い渡すと悟空は体に気を入れた。
「よーし!行くぞ!!」
「貴様らはここにいろ!良いな!」
悟林が気合を入れるように叫び、ピッコロがクリリン達にそう言うと悟林達は気を入れ、ベジータとトランクスも超サイヤ人となる。
悟林が最初に飛び出し、全員が悟林に続くように飛び出す中、ベジータが複雑そうに悟林の後ろ姿を見つめていた。
セルの猛攻を掻い潜り、高速で動き回る悟林達。
「(未来の悟飯の言った通りだ。体がでかくなったせいでパワーは凄えがスピードが遅い!!)」
「(俺達のスピードについていけていない。やっぱり凄いな悟飯さんは…!)」
「今だ!!」
悟林達が勢い良くセルに突っ込んで同時攻撃を当てようとしたが、セルが4本の足に力を入れて一気に飛び上がった。
予想外の行動に悟林達の表情が驚愕に染まる。
セルの口からエネルギー波が放たれた。
「うわあああ!!」
「あぐっ!!」
直撃は避けたが、小柄な悟飯と悟林が勢い良く吹き飛ばされ、悟空達も勢い良く地面に叩き付けられた。
「う…く…だ、大丈夫!?みんな!?」
「な、何とかな…」
悟林達サイヤ人はともかく、この中で一番戦闘力が低いピッコロのダメージが酷い。
「ピッコロさん!」
未来悟飯がピッコロを助け起こす。
「すまんな…未来の悟飯…」
「いえ…それにしてもあれだけの巨体であんな動きが出来るなんて…」
「あの巨体をあの4本の足で支えることでスピードが落ちないんでしょう。何とかセルを元に戻す方法はないんでしょうか?」
トランクスがセルを見上げながらどうすれば良いのかと焦りを見せる。
「あれがサイヤ人の大猿と同じなら尻尾を切れば元に戻るだろうが…」
「セルにはピッコロと同じことが出来っからな。尻尾を切っても再生されちまうのがオチだろ」
「じゃあ、何としてもあいつを自力で倒すしかないわけだね」
セルが動き出し、口から連続でエネルギー波を放った。
「「「「魔閃光ーーーっ!!」」」」
「波ーーーっ!!」
「ギャリック砲っ!!」
「爆力魔波っ!!」
連射していることで単発より威力が落ちており、何とか全力の気功波で相殺する。
しかしセルは無差別にエネルギー波を放ち、悟林達は少しずつ押されていく。
「みんな、オラに捕まれ!」
このままでは埒が明かないと判断し、悟空は全員を瞬間移動でセルの目の前に移動すると全員で全力の気弾を至近距離で放った。
しかし、いくらか後退させただけでセルにはまるでダメージが入っていない。
再び悟林達はセルの重い攻撃を喰らって吹き飛ぶ。
「くそったれーっ!!」
何とか岩を足場にすることで踏ん張ったベジータはセルに突撃し、顔面を連続で殴るものの、戦闘力に差があり過ぎる上に巨大化の影響で防御力も相応に上がっているセルには蚊に刺されたような物だ。
「ぐあっ!!」
ベジータを頭突きで吹き飛ばし、セルは口からエネルギー波を放った。
まともに喰らえば即死。
それが分かるほどのエネルギーが込められていた。
「父さーんっ!!」
トランクスが助けようとするも間に合わない。
「(駄目だ、瞬間移動でも間に合わねえ!!)」
瞬間移動で助けようにもあんな一瞬では瞬間移動は出来ない。
誰もがベジータの死を確信した時、ベジータとエネルギー波の間に誰かが割り込んだ。
爆煙が上がり、煙が晴れた時には生きているベジータの姿と…。
「だ…大丈夫?ベジータさん…」
左腕が肩から失った悟林の姿があり、助けられたベジータは驚愕で目を見開いていた。
「ご、悟林……よ、余計な真似を…俺は貴様に助けてもらう気など…」
「うん、分かってるよ…でも私がしたいからしたんだから…」
ベジータの言葉に笑みを浮かべる悟林だが、痛みで引き攣った笑みが痛々しい。
「クリリンさん!仙豆を!」
「す、すまん…仙豆が…」
悟飯が仙豆を持っているクリリンに仙豆を要求するが、仙豆の入った皮袋がない。
セルの無差別攻撃を18号を庇いながらかわしていたので、仙豆を落としてしまい、セルの攻撃で消えてしまった。
仙豆がないと言う最悪の状況だ。
「父さん!姉さんを連れてデンデの所に!!」
「デンデ?」
「そっか!デンデなら怪我を治せる!」
「そうか!よし…」
息子2人の言葉に悟空は悟林を連れて天界に瞬間移動し、ついでに新たな仙豆を補充しようとしたが、セルの巨体がこちらに向かってきた。
「大丈夫…お父さん!私はまだ闘えるよ!」
隙を見せたらその瞬間に殺されると判断した悟林は左腕を欠いた状態で戦闘を続行する。
「くそ…すまねえ…こんなはずじゃなかった…!」
「気にするな、誰も奴の行動など読めはせん。」
悟空の謝罪にピッコロは答えながらセルに向かうのであった。
「父さん、大丈夫ですか?」
「余計なことをするな…トランクス…!」
トランクスに助け起こされたベジータは何とか息を整えてセルを見上げた。
「父さん、俺は先に行きます!」
悟林に迫る拳にトランクスは横から蹴りを入れて軌道を逸らす。
「ありがとうトランクスさん!」
「いえ、それより悟林さん!来ます!」
「分かってるよ!」
ベジータはセルを迎え撃つ悟林の後ろ姿を見ながら複雑な心境を抱いていた。
左腕を欠いてバランスが崩れて気だって大分落ちているのにも関わらず、そのパワーは自分は愚か悟空すら超えている。
不思議に思っていた。
サイヤ人は己の強さに固執する種族だ。
それなのに何故、悟空は悟林が自分を超えるように仕組んだのか、何故、混血のサイヤ人はあのようなとんでもないパワーと戦闘力の伸び代を併せ持つのか。
トランクスにしても2人の悟飯にしてもそうだ。
再び未来から来た時には自分より遥かに劣る戦闘力しかなかったというのに、今ではトランクスは自分とほとんど変わらない戦闘力で、2人の悟飯は本人達は気付いていないかもしれないが、超サイヤ人2に変身する前の悟林に迫る戦闘力を発揮している。
もし、自分がトランクスと共に精神と時の部屋に入ってもう一度修行をすれば、トランクスの足りない部分を教えてやったなら、トランクスも自分を超え、悟林達のような強大なパワーを持てたのだろうか?
あの爆発的な力を…。
「魔貫光殺砲ーーーっ!!」
悟林が渾身の魔貫光殺砲で尻尾を切断するが、セルは一瞬硬直した程度ですぐに再生された。
「やっぱり駄目か…でも負けてたまるか!!」
動き回ってセルの攻撃をかわしながら攻撃を繰り出す悟林。
初めて会った時には少々戦闘力が高いだけの子供でしかなったというのに、今ではこの中の誰よりも強い戦士となった。
「(あれが…ガキってもんなのか…)」
自分を助ける暇があるのならセルに攻撃すればいいものを。
しかし、悟林にはそれが出来ないのだろう。
きっとトランクスにも…。
ベジータは深く息を吐くと、気を入れてセルに向かっていった。
悟林達は必死に応戦するが、パワーボールの月によって変身したセルのパワーは想像を遥かに超えた物だった。
こちらが何度も攻撃を当ててもセルはびくともしない。
するとトランクスは複雑な印を結び、印を結ぶ際に拡散した気を突き出した手のひらの前に集め、自身の気と合わせて凝縮させると絶大な威力の気弾を発射した。
「これでどうだ!!」
放たれた気弾はセルに直撃し、大爆発が起きるもののセルの体の表面が多少焦げているだけで大したダメージを受けていない。
「畜生…このままじゃじり貧だ…」
仙豆もない状況ではただこちらの体力が消耗していくだけ、このままではやられるのも時間の問題だ。
「(何かないの…?奴を超えるパワーを出す方法は…!)」
記憶を辿り、何か方法はないのかと考える。
すると、あることを思い出した。
昔ベジータと闘った時に餃子がナッパにしたこと、そして未来の自分が人造人間を道連れにしようと自爆したことを。
「(普通にやってもあいつは倒せない。なら、全てをこの一撃に込めればいい)」
セルがとどめとばかりに口にエネルギーを溜めている。
誰もが焦りを見せる中、悟林は額に指を当てて気を限界を超えて高めていく。
「みんな、ここから離れて…!」
「ご、悟林!?お前…何を…!?」
「私の命を力に変えてセルをぶっ飛ばす!!」
「な、何ですって?」
ピッコロの疑問に悟林は覚悟を決めた顔で即答し、トランクスが絶句する。
悟林の纏うオーラが尋常ではない程の威圧感を発し、まるで例えるなら空気が入りすぎた風船だ。
「お、お姉ちゃん!そんなの駄目だよ!」
「他にあいつの攻撃を防ぎながら倒せる方法ある?危ないからみんなはここから離れて!!」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ姉さん!早まっちゃ駄目だ!」
「未来の悟飯とトランクスさんは万が一のためにタイムマシンで未来に帰って、もし私の一撃でセルを倒せなかったら…2人はこの時代の人じゃない。この時代のことはこの時代の私達でケリを付ける!!」
「そんな!みんなを置いて逃げるなんて出来るわけ…」
未来悟飯は仲間が自分達を生かすために死んでいったことを思い出して必死に悟林を止めようとする。
「2人にもしものことがあったら誰が未来を守るの?未来のブルマさんは?2人には大切な人達だっているんでしょ?2人は何のために過去に来たの?自分達の目的を見失わないで!!」
「そんな…!嫌です悟林さん!そんなことは聞けません!俺も…俺も最後まで一緒に闘う!!」
まるで自分達を生かすために1人で闘った未来悟林を思い出してトランクスは悟林の言葉を悲痛な声で拒否する。
「大丈夫」
限界を超えた気が今にも溢れそうになって辛いはずなのに、悟林はトランクスを安心させるように笑った。
「私は絶対にあんな奴には負けないから……信じてよ」
魔貫光殺砲
敬愛する師匠のピッコロから伝授された必殺技。
どんな強敵が相手でも自分の切り札として心の支えとなってくれた。
悟林は集中し、全ての気や命さえも指先に収束させていくと指先に集めた気からまるで血のような紅電が迸る。
セルの気も尋常ではないほどに高まっており、もう止められないとこの場にいる誰もが理解した。
「はあああ…っ!!魔貫光殺砲ーーーっ!!」
そして、セルが放ったエネルギー波に対して悟林もまた、最大最後の一撃で迎え撃った。
2つの気が激突し、悟林とセル以外は激突の余波で吹き飛ばされてしまう。
「ぐ…ぐぐ…っ!」
少しずつだが、悟林の気功波が押されている。
万全の状態なら押し切れたが、左腕の欠損と気の低下によってセルのエネルギー波を抑えるので精一杯だ。
限界を超えた悟林の体の灰化が始まっている。
「悟林…!ピッコロ!オラ達もセルを攻撃するんだ!!」
「あ、ああ…」
「俺達も手伝うぞ!」
「俺達でどこまで力になれるのか分からんが…」
「まあ、いないよりはマシでしょ」
悟空達がセルを攻撃しようとした時、今まで離れていたヤムチャ達も加勢してくれた。
「かめはめ…波ーーーっ!!」
悟空達の渾身の気功波がセルに直撃するものの、セルは全く意に介さず攻撃を続ける。
「く、くそ!少しでも…少しでも奴の気を逸らせれば…!」
未来悟飯がかめはめ波を撃ちながら何とかセルの意識をこちらに向けることが出来ればと歯軋りする。
「ち、畜生!恨むぞ…俺達の力のなさを…!!」
自分の力が全く通用しない現実にピッコロは自分の無力さを呪う。
体の灰化が進むに連れて気功波の勢いが衰えていく悟林に、悟飯は必死に姉を助けようと気功波の威力を上げようとした。
「(昔、ピッコロさんが言ってた…もし僕にもお姉ちゃんにも負けない力があるなら…その力を出したい…!でもどうやったらその力が出せるのか分からない…!)」
この地球には母親も祖父もいるのだ。
だからセルに滅ぼされるわけにはいかない。
それなのに焦りばかりが募っていく。
少しずつセルのエネルギー波が悟林に迫り、後少しと言うところでセルの尻尾が円盤形の気弾…気円斬で切り落とされた。
「っ!」
悟林がある方向を見遣るとベジータが気円斬を投擲してくれたようで、そのおかげで意識が尻尾に逸れたことでセルの攻撃が弱まった。
「うわあああああっ!!!」
体の灰化が一気に進んでも構わずに気功波の威力を押し上げる。
どうせ死ぬのならと自壊覚悟で超サイヤ人2状態での界王拳を使って威力を底上げする。
次の瞬間、悟林の意識は途切れ、制御を失ったエネルギーは暴走して大爆発を起こした。
後書き
超サイヤ人2界王拳、使えば死にます
悟林
超サイヤ人2に覚醒してセルを圧倒するものの、パワーボールの詳細を知らなかったために大猿ならぬ大ゼル化を許してしまい、未来の自分のように片腕を欠損してしまうものの、その尻拭いは自分の命で何とかした。
悟空
悟林の超サイヤ人2を見て、娘の成長を誇らしく思っていたが、まさかの大ゼルに焦ることに。
最後の悟林のサポート中では自分の力不足を悔やむ。
ピッコロ
まさかの悟空の棄権と悟林が代わりに闘うことに驚きながらも弟子を想って反対するが、悟林の超サイヤ人2を見て弟子の成長を信じてやれなかった自分を恥じる。
悟林のサポート中では自分の非力を悔やんだ。
未来悟飯
悟空を超えた戦士の1人、生きていた時代が時代なので姉のフルパワーに尊敬の念を抱く。
大ゼルと化したセルとの闘いに参戦して指示を出すものの、常識を超えたセルには通じなかった。
最後は未来の姉よりも早くに死んでしまう姉にショックを受ける。
悟飯
悟空を超えた戦士の1人だが、超サイヤ人2の力でセルを叩きのめす悟林の姿に複雑な想いを抱く。
だが、その想いは16号の言葉で霧散し、大ゼルとなったセルとの闘いに参戦したが、敵わず、悟林のサポートの際には潜在能力の引き出し方が分からず何も出来ずに終わってしまう。
因みに戦闘力に関しては未来の自分自身との修行であるために効率が良く、丸1年入っていたこともあり、原作よりは多少上がっている。
トランクス
未来悟林の弟子なので悟林のフルパワーに尊敬の念を抱く。
大ゼルと化したセルとの闘いでは悟林への攻撃を逸らしたりはしたものの、太刀打ち出来なかった。
最後の一撃の際には未来の悟林の姿が重なって見えた。
この作品で、初めてバーニングアタックを放つ。
この作品では複雑な印を結ぶ際に拡散した気を集めて自身の気と合わせて凝縮して放つトランクスが独自で編み出した格上殺しの気弾技となっている。
威力はいくら金縛りで動けなかったとは言え、バビディの魔術でタフになっており、悟飯を戦慄させた魔人ブウの攻撃を受けても生きていたダーブラを容易く消し飛ばしたので当たりさえすればトランクスの技の中では最高クラスなようだ。
複雑な印を結ばなければ威力を発揮出来ない都合上、主に不意打ちか、動けない相手へのとどめに使われる。
ベジータ
悟林の超サイヤ人2への覚醒と、それを見守る悟空の影響を最も受けた人物。
セルからの一撃を悟林から救われたことで罪悪感と共に人としての情が芽吹き始める。
精神と時の部屋でトランクスと共に過ごした時間と、自分よりも遥かに強くなった次世代のサイヤ人の悟林を見て再起した。
最後の攻防では気円斬でセルの尻尾を切断することで気を逸らして悟林の気功波を直撃させることに成功した。
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