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ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
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第24話

 
前書き
人造人間編のラスボス。 

 
状況は最悪と言っても良い程だった。

17号と18号は起動してしまい、おまけに未来悟飯もトランクスも見知らぬ人造人間16号まで起動してしまう始末。

ベジータが未来悟飯とトランクスの制止を無視して人造人間に闘いを挑み、最初は互角の闘いを繰り広げるが、人造人間の無限のエネルギーに押されてしまい、未来の悟林のように一方的にやられ始めた。

ベジータの左腕を18号に折られたのを切欠に未来悟飯とトランクスも超化して超サイヤ人となって18号に飛び掛かるものの、未来悟飯の攻撃はあっさりとかわされて逆に18号の裏拳を喰らってしまい、トランクスがその隙を突いて気を乗せた剣で18号を切断しようとしたが…信じられない物を見た。

未来の技術を込めて鍛えられた剣が、超サイヤ人の気を乗せているはずの剣が受け止めた人造人間の腕を切断するどころか、皮膚の薄皮1枚切れず、逆に切りつけた剣が刃こぼれする始末だった。

トランクスの剣は未来悟飯達の時代の人造人間達でさえ直撃を避けようとする威力があるのにだ。

そして17号も参戦してトランクスを一撃で大ダメージを与え、加勢しようとした幼い悟飯やピッコロ達をあっさりと返り討ちにしてしまう。

自惚れではないが、未来悟飯には今の自分とトランクスならば未来の人造人間とそこそこ闘える自信がある。

それなのに全く歯が立たないということはこの時代の人造人間は自分達の時代の人造人間より遥かに強いと言うことだ。

未来悟飯は父亡き後に師匠から伝授された魔貫光殺砲で17号を狙うが、片手で受け止められてしまった。

「少しは効いたぞ」

その言葉を最後に腹に衝撃が走って未来悟飯の意識は刈り取られ、目を覚ますとクリリンが仙豆を食べさせてくれたおかげで助かった。

屈辱に震えるベジータが飛び立ち、トランクスが追いかけようとしたがピッコロに止められた。

ベジータは超サイヤ人となったことでプライドを取り戻していたのに人造人間とは言え女に敗北してしまったのだから受けたショックは計り知れない。

天津飯は仮に悟空の病気が治って悟空と悟林が加わっても2人の実力もベジータとほぼ同格と判断し、勝てる見込みがないと言う。

その言葉に空気が重くなる。

取り敢えずは悟空を安全な場所にまで避難させることにして、ピッコロは何かを考えているようだったが。

「何か作戦でもあるんじゃないのか?教えろよピッコロ。仲間じゃないか」

クリリンがピッコロの変化に気付き尋ねるとピッコロは反論した。

「ふざけるな!!俺は魔族だ!!世界を征服する為に貴様らをただ利用しているだけだという事を忘れるな!!」

未来と現代の悟飯の視線から逃げるようにピッコロはこの場を去っていった。

だけどクリリンは分かっていた。

ピッコロの考えている事…神との同化を。

それぞれが自分の出来ることをやるためにこの場を去った。

因みに未来悟飯がパオズ山に向かうと父親そっくりに成長していた未来悟飯にチチは驚きつつも喜んだと言う。

一方、悟林はブルマとチビトランクスを西の都に送るとパオズ山に戻っていた。

そこでは母のチチが両手を振って声を張り上げた。

「悟林ちゃーん!」

「おお、お母さん!どうしたの?」

「お姉ちゃん!早くここを離れないと!人造人間がここに来るかもしれないんだ!」

悟飯が悟林に説明する。

目覚めた人造人間達が悟空を殺しにやって来るとのことだ。

「…そっか、それは大変だねえ」

「姉さん…他人事みたいに…」

姉の能天気な声に未来悟飯は脱力した。

悟林と未来悟飯は飛行艇を守るように舞空術で移動する。

「それにしても悟飯、本当にお父さんにそっくりになったね。」

背丈も体格も父親そっくりに成長した弟に悟林は不思議そうに見つめる。

「そうかな…?ベジータさんには見た目だけって言われたけど…」

「超サイヤ人になれるんでしょ?大したもんだよ。」

「未来の姉さんが教えてくれたんだ。姉さんが死んでから…後悔ばかりだ…父さんが死んだ時…沈んでないで一緒に姉さんと修行すれば良かったんだ…一緒に修行して超サイヤ人のなり方を教えてもらえば…俺が…甘ったれで弱かったから…ピッコロさん達も人造人間に…トランクスやブルマさんもベジータさんを…そして挙げ句の果てには姉さんまで死なせて……」

何故一緒に修行をしなかったのか。

もし、一緒に修行していたらピッコロ達だって生きていたかもしれないし、トランクスだってチビトランクスのようにベジータと触れ合えたかもしれないのに。

「悟飯」

未来悟飯の頭を撫でると涙でぐしゃぐしゃになった顔が上がった。

「姉さ…ん…っ」

「本当に悟飯は泣き虫だなぁ。体だけってのは間違いじゃないようだね。大丈夫大丈夫、こっちじゃお父さんも私も生きてるんだから後は私達に任せなさい。何だったら私達が未来に乗り込んでそっちの人造人間達をやっつけてあげる。だから今は頑張ろ?」

「そうだね…」

大きくなっても本質は全く変わっていない弟の頭を泣き止むまで撫でるのであった。

飛行艇内でトランクス達が今後のことを話し合っていた最中、チチがトランクスに尋ねてきた。

「ところでおめえ、前に悟空さから聞いただよ。おめえ悟林ちゃんの弟子だそうだな?」

「あ、はい。悟林さんには凄くお世話になりました。」

「……おめえがまさかブルマさんの息子だとはなあ…正直びっくりだべ。悟空さもそこまでは教えてくれなかったしなあ…」

確かに良く見れば髪の色や目の色はブルマに似ており、チラリと見たことがあるベジータの面影があった。

「あはは…何となく分かります…ああいう母ですから…」

「礼儀正しいべ…ブルマさんが教育しただか?」

「いえ、母さんはタイムマシンや他の研究で忙しかったから、悟林さんと悟飯さんが色々教えてくれたんです」

「そうだか……未来の悟林ちゃんは…良い師匠だっただか?」

「…はい、最高の…師匠……でした。」

チチは一瞬言い淀んだトランクスを見て、トランクスにとって未来の悟林はそれ以上の存在だったのではないかと思ったが、話の続きを促す。

「未来の悟林ちゃんはどんな子だったんだべ?」

トランクスや未来悟飯のいた未来は悟空から少しのことしか聞いてないが、人造人間のせいで酷い状態なのは分かる。

そんな酷い時代で未来の娘はどんな風に育って、どんな女性になったのだろう。

「どんな時も優しかったんです。あんなに酷い時代なのに俺や母さんのことを凄く気にかけてくれて、自分だって生きていくのが大変だったのに小まめにパオズ山の山菜や木の実を持ってきてくれたり、魚も獲ってきてくれました。そりゃあ、修行の時は物凄く厳しかったです。片腕でも俺と悟飯さんを同時に相手にしていましたし、俺も悟飯さんも何度荒れた海に落とされたり岩に叩き付けられて生き埋めにされたか分かりません。」

「そ、そうだか…」

酷い時代でも優しさを失わないでいてくれたのは素直に嬉しかったが、ピッコロ並み、もしくはそれ以上の厳しい指導をトランクスと未来悟飯に叩き込んだ未来の娘にチチは顔を引き攣らせた。

「修行が終わると悟林さんはたくさんのことを教えてくれました。武道だけじゃなくて動物や食べられる植物や薬草のこと。修行で怪我をするとその薬草を使って手当てをしてくれました。そうそう、一緒に恐竜を仕留めて丸焼きにして食べたりしましたね。」

トランクスは未来の悟林との修行や勉強の日々を思い返しながら語っていく。

「俺…悟林さんが人造人間に殺されてから、必死に修行して悟飯さんと一緒に何度も人造人間に挑んだんです。何度挑んでも勝てなくて…悔しくて堪らなかった。父さん達を殺して母さん達を悲しませている奴らに勝てない自分が情けなくて仕方なかったです……」

今でも思い出せる。

タイムマシンが完成する前に未来悟飯と共に修行で高めた力で人造人間を倒そうと挑んだが、結果は惨敗。

それからも人造人間が街を襲う度に挑んだが、敗北ばかりでタイムマシン完成間近の時に何とか人造人間にそこそこ闘える程度だ。

「そう思うと悟林さんは本当に強かったんだなって思ったんです。悟林さんは俺達を庇いながら闘っていたせいで何時も傷だらけでした。片腕になったせいでパワーが落ちて思うように闘えなくて…人造人間にはどうしても敵わなかったんです。」

武道家にとって腕はとても重要な物だ。

体のバランスが崩れるとまともに歩くことさえ難しくなり、如何にサイヤ人でも全力を出せるか分からない。

隻腕となった未来悟林は万全時と比べて大分パワーが落ちてしまい、万全の状態でも苦戦していたのに隻腕の状態では勝ち目などなかった。

「きっと、今の俺みたいに悔しかったりしたと思うんですよ…。何度も何度もそういう目に遭って…。なのに小さい時からずっと闘い続けてきたんです…。何で悟林さんは挫けないで闘って来れたんだろうって…でも、今なら俺にも何となく分かります…彼女に…俺を支えてくれて…守りたいと思う人が出来て…初めて、自分がどれだけ大事にされてきたか分かったんです。悟林さんが俺と悟飯さんを気絶させて1人で人造人間の元へ向かった理由を…出来ることなら悟林さんが生きているうちに分かってあげたかったけど…」

話を聞きながら、チチは一切口を挟まなかった。

時折息を詰め、ハンカチで涙を拭いながらそれでも一言も聞き漏らすまいと顔を上げていた。

「…未来の悟林ちゃんにとっておめえは大事だっただな…」

「チチさん…」

「ありがとうな、トランクス…おめえがいてくれて本当に良かっただよ…きっと悟林ちゃんはおめえのおかげで、幸せだったはずだべ」

「………」

チチの言葉にトランクスは悲しげに微笑んだ。

「おーい、カメハウスの近くまで来たから入るよー…って、みんなどうしたのさ?」

未来悟飯と共に飛行艇の中に入ってきた悟林はどこかしんみりしている母親達に困惑した。

「何でもありません、見張りをしてくれてありがとうございます悟林さん、悟飯さん」

「これくらい平気だよトランクスさん。それにしても大変なことになっちゃったね」

「そうだよなあ…取り敢えずブルマに事の成り行きを伝えておいた方が良いんじゃないか?」

悟林の言葉に同意しつつ、ヤムチャが一応ブルマにも詳細を伝えた方が良いのではないかと言う。

「そ…そうすね…でも俺が連絡するんすか?…やだなあ…お前のおっかさん、きついんだよな言うことが…」

「はは…未来でも変わってませんよ」

「クリリンさん、冷静に考えてみよう。お淑やかで大人しいブルマさんなんて想像出来る?」

「………何でだろうな、想像したら寒気がしてきた」

悟林の言う通り、お淑やかで大人しいブルマを想像してみたものの、違和感がありすぎて逆に寒気がしてきた。

「人はあるがままが一番だよね。」

「そ、そうですね…」

悟林の呟きにトランクスが同意すると、クリリンはカプセルコーポレーションに通信を繋げる。

「あ、あの、クリリンと言いますが、ブルマさんおられますか?え?あ、はい。ブルマお嬢様です………あ、ブルマさん?あの、クリリンすけど…」

ブルマが出てくれたのかクリリンが事情を説明しようとした時であった。

『クリリン!?何よ無事だったわけ!?今どこから連絡してるわけ!?悟林ちゃん、帰った頃だと思って家に電話しても誰も出ないしさ!ねえっ!そこにでかくなった未来の私の息子のトランクスいない!?』

「え?あ…はい、丁度いますが…」

『いる!?』

「声でかいよブルマさん…お父さん寝てるんだから声を小さくしてよ…」

スピーカーから聞こえるブルマの声に悟林は耳を塞ぐ。

『良かったあ!ちょっと変わってくんない!?』

「あ、そのまま喋ってもいいすよ。スピーカーから聞こえてますから」

「ブルマさん、声小さくして。お父さん薬が効いて寝てるんだから」

『あ、あらごめんなさいね…何日か前にさ、西の方の田舎の人からうちの会社に問い合わせがあったらしいのよ。山を歩いてたら不思議な乗り物が捨ててあったから貰っちゃおうと思ったんだってー。でも全然動かし方が分かんないから教えてくれってね…』

「は…はあ…」

「ブルマさん、それじゃあ分かんないよ。乗り物がどうかしたの?捨てられた乗り物なんてどうでもいいじゃない」

『ああもう、慌てないの悟林ちゃん。これを聞いてそんなことが言えるのかしら?その乗り物…トランクスのタイムマシンなのよ。しかも壊れてるの…』

「え!?そ…そんな…!まさか…い…いえ、ありますよ。俺、カプセルに戻してここに持ってますから」

ポケットからケースを取り出してタイムマシンのカプセルを確認する。

「ちゃんとあるって言ってますよ」

「ブルマさん、もしかして…“更年期障害”って奴?」

さらりと酷いことを言う悟林にスピーカーからブルマの怒声が飛んできた。

『失礼ね!まだまだ若くて美しいわよ!』

「時々さ、ブルマさんにこういうことを平気で言うところは悟林ちゃん、本当に悟空にそっくりだと思うんだ」

「ま、まあ、こういうはっきり言うところも姉さんの良いところですよ。なあ、過去の俺」

「そ、そうですね、未来の僕」

クリリンの言葉に両方の悟飯は苦笑しながら言う。

『コホンッ!とにかくこれはあんたのじゃなかったのね。苔とかついてて古っぽい感じがしたからおかしいと思ったのよ。ねえ、未来の私ってタイムマシンをいくつ作ったのかなあ…』

「トランクスさん、ひょっとして試作機?」

「い、いえ、悟林さん…試作機を作る余裕もありませんでした。あれを1機作るのだけでもやっとだったんです」

『試作機でもないのね…でもこれ絶対にタイムマシンだと思うのよ。前に乗ってたのを見たことあるんだから見間違えるはずがないわ…ねえ、そこファックスある?写真送るから』

送られてきた写真をクリリンが手に取り、トランクスに渡すとトランクスの目が見開かれた。

「え!?」

ブルマから送られてきた写真は確かにトランクスと未来悟飯が未来と過去を行き来するために使うタイムマシンにそっくりであった。

「苔まみれでガラス部分に穴が開いてるけど…」

「ええ、間違いありません。俺達が乗ってきたタイムマシンそのものだ…い…一体どういうことなんだ…こ、この写真の詳しい位置分かりますか!?」

悟林が写真のタイムマシンと一度見たことのあるタイムマシンを比べながら言うとトランクスは同意し、この写真の正確な位置を尋ねる。

「そのタイムマシンのある詳しい場所分かりますかって」

『詳しくはないけど…西の1050地区の辺りのどこかだと思うわ。行くの?』

「はい…!この目で見てみたいんです…」

『じゃあ私も行くわ。そんなに遠くないから』

「わ、分かりました」

『じゃあ後でね』

通信が切れると、悟林が尋ねてきた。

「本当にタイムマシンってトランクスさんとでっかい悟飯が乗ってきた奴しかないの?」

「ええ、未来では物資が少ないので、タイムマシンもジャンクパーツを利用して作ったんです。それでも1機作るのがやっとでしたから」

「とにかく、そこに向かってみよう。考えるのはそれからだ」

「はい」

未来悟飯の言葉にトランクスが頷くとこの時代の双子が声をかけてきた。

「私も行くよ。物探しなら人が多い方がいいでしょ?」

「僕も一緒に行きます。物探しなら僕も役に立てるでしょうし」

「ありがとうございます。悟林さん、過去の悟飯さん」

「お母さん、行ってくるよ」

悟林がチチにタイムマシン探しに向かうと言うと、チチの眉間に皺が寄る。

「駄目だ!…つっても無駄だべ、仕方がねえな…トランクスも未来の悟飯ちゃんも行くんだろ?ちっせえけど、こっちの悟林ちゃんとたくさん話すと良いだ」

「「はい」」

4人が飛行艇から飛び出し、タイムマシンがあるらしい場所に向かう。

「あの…未来の僕やトランクスさんのいた未来の世界はそんなに酷い目に遭っているんですか?」

飛びながら悟飯は未来の事を聞いてきた。

「ああ…世界の人口はたったの数万人にまで減ってしまった。西の都はまだマシだけど、他の町は壊滅状態で人々は地下のシェルターに隠れて何とか凌いでいるんだ」

「そ…そんなに…」

未来悟飯から未来の事実を聞くとその悲惨さに悟飯は思わず息を飲んだ。

「見つかるといいですね…人造人間の弱点が…」

「ああ…」

「弱点…そう言えばドクター・ゲロって人造人間に殺されたんでしょトランクスさん?」

「ええ、あの2人はドクター・ゲロに逆らって、そのまま…」

「そっか、つまり人造人間はドクター・ゲロにとって失敗作だったってことなんだよね」

悟林の言葉にトランクスも頷いた。

「失敗作だった2人の危険性はドクター・ゲロもテスト段階で分かっていたはず…」

「うん、だから人造人間をそのテストの時にどうやって止めたのか…もしかしたら人造人間を止める装置があったんじゃないかな?」

「俺もそう思います。そういう物が無ければ恐らくドクター・ゲロは人造人間を目覚めさせずに姿を眩ましたでしょうし…どこまで可能性があるか分かりませんが…」

「少なくても0じゃないよ?頑張ろう?トランクスさん」

「はい…この辺りのはずです」

悟林の言葉に頷き、トランクスは座標を確認して止まる。

この周辺にタイムマシンがあるはず。

「手分けして探しましょう!」

「久しぶりに競争だ!でっかい悟飯とトランクスさんも!」

「はは、分かったよ姉さん」

「頼りにしていますよ」

4人は散開してタイムマシンを探し、しばらくして悟飯が声を上げた。

「あった!タイムマシンありましたよーっ!!」

「良く見つかりましたね悟飯さん!」

「うわあ、本当にタイムマシンだ」

「…これは血の痕か?」

未来悟飯がタイムマシンのボディに付いているへこみと血痕に顔を歪める。

それを見た全員が沈黙するが、飛行機の機械音が聞こえたことでハッとなる。

「きっとブルマさんですよ!僕が案内して来ます!」

「俺も行こう」

「2人共ー、転ばないでよー」

「こ、転ばないよ!」

「姉さんからすれば俺はいくつになっても手のかかる弟なんだろうな…」

2人の悟飯がブルマを呼びに行っている間にトランクスがケースからタイムマシンを出す。

無傷のタイムマシンとボロボロのタイムマシンの差が激しい。

「はーい、トランクス。美しいお母さんですよー!」

「ど…どうも…」

「自分で自分を美しいって言うのはどうなんだろうね…」

ブルマの登場に空気が緩んだのを感じてトランクスと悟林は苦笑した。

「見て下さい。そっちのが俺達の乗ってきてカプセルにしておいたタイムマシンです。」

「あら!じゃあ確かにこいつはあんた達のじゃないわけだ…」

「い…いえ、あなたは未来でタイムマシンをたった1機しか作らなかった…こ…こいつも俺達の乗ってきたタイムマシンその物なんです…」

「…そんな…」

「これを見て下さい。これはトランクスが最初に過去に向かう前に書いた“希望”と言う文字です。」

未来悟飯が“HOPE”と書かれている部分を見せた。

「ねえ、こんなボロボロで苔まみれってことは随分長い間野晒しにされてたんじゃない?調べてみようよ」

「そうですね」

トランクス達が舞空術でタイムマシンを調べる。

「お姉ちゃん、この穴…変じゃないかな?」

「うん、内側から高熱で溶かされたって感じ」

「取り敢えず中を調べてみよう」

「ええ、皆さん少し離れて下さい」

トランクスがスイッチを押してタイムマシンのコックピットを開き、中に入ると、座席には妙な物体があった。

「…!?」

「こっちにもあるよ」

悟林も物体を発見し、悟飯と未来悟飯は悟林とトランクスが持つ物体を見つめる。

「な…何ですか?それは…未来の僕は知りませんか?」

「いや、俺もこんな物は見たこともないな」

「何!ちょっと見せてよ!」

2人が物体をブルマに渡すと、ブルマは裏を見たり、断面をくっつけたりした。

「どうですかブルマさん?」

「多分、何かの卵の殻だと思うわ」

未来悟飯の問いにブルマが答えるが、学者を目指している悟飯も学者を目指していた未来悟飯もそんな卵など見たことがない。

「そんな卵、どんな図鑑にも無かったよ……この穴を開けたのは、その卵から生まれた生き物なのかな?」

悟林が卵の殻を見つめてからガラスの穴を見つめる。

「…エネルギー残量はほとんど0…やって来たのは…エイジ788…!お…俺達がやって来た未来より3年…さ…更に未来から…」

「え…!?」

「トランクスさん達がやって来た未来より更に未来から!?」

トランクスの言葉にブルマと悟林が目を見開く。

「こ…この時代にやって来たのは…今から…や…約4年前…こ…この前、俺が来た時より1年も前にこ…こいつは来ていた…い…一体…何が…何のためにやって来たんだ…!れ…歴史が随分か…変わってしまったのは…まさか、こいつのせいでは…!?」

そうとしか考えられなかった。

いくら自分が悟林と共にフリーザ親子を倒し、悟空の心臓病を防いだからといってここまで変わるはずがない…。

しばらく色々と考えてみたが謎の卵の殻の正体が分かるはずもない。

「…私は更に未来のトランクスさんと悟飯がどうなったのかが気になるよ…このタイムマシンについてるへこみや血の痕…このタイムマシンがやって来たトランクスさん達は一体どうなったんだろう……」

悟林の険しい表情に誰もが言葉を出せないでいた。

「…取り敢えず、タイムマシンをこのままにはしておけないな。カプセルに戻そう」

「…そうですね」

未来悟飯の言葉にトランクスはタイムマシンのスイッチを押してカプセルに戻すとそれをしまった。

しまう際にポケットから1枚の写真が落ちてしまい、悟林がそれを拾った。

トランクスとブルマと…長い黒髪の女性が写った写真。

「ブルマさんと…誰?」

「…あ!?」

悟林の手にある写真に気付いたトランクスが慌てる。

「あらー可愛い娘じゃない。恋人?あんた悟林ちゃんのこと慕ってるから片想いしてたのかなーって思って独身を貫くのかって心配してたらちゃんと恋愛してるじゃない。うん、中々の美人ね。まあ、私ほどじゃないけど」

「え…と…彼女は幼なじみみたいな物で…悟林さんについては…その片想いと言うか…その…」

悟林達がブルマの発言に呆れ、この場合はどう言えば良いのかとトランクスが恥ずかしそうにしながら頭を悩ませていたが…。

未来悟林に関しては今でも師匠としても…1人の女性としても慕っている。

しかし、目の前に過去とは言え悟林本人がいるので恥ずかしい。

「それにしても辛い未来って聞いてたから恋愛どころじゃないと思っていたわ」

「それは…」

ブルマの言葉に俯くトランクスだが、ブルマはそれを見て微笑む。

「冗談よ。辛い時代だからこそ、そう言う支えみたいなのって必要だと思うから」

そう言うとトランクスの頭をくしゃくしゃと掻き撫でた。

「う…その…そ、そうだ。悟飯さんにも相手がいるんですよ。名前は言えませんけど」

「いっ!?」

まさか自分に飛び火してくるとは思わなかった未来悟飯が父親の悟空みたいな反応をする。

「え!?えーーっ!?ご、悟飯にも相手が…トランクスさん、でっかい悟飯の相手は教科書か辞典か何か?」

「いえ、人間の女性ですよ」

「な…あ…っ!?悟飯に…人間の彼女…ひょっとしたら奥さんかもだし……そうか、だから私達の時代の人造人間は強くなっちゃったんだ…ああー…何てこと…」

「…姉さん、姉さんは俺を何だと思ってるんだ…?」

この世の終わりのような顔をする悟林を横目で睨む未来悟飯に悟林は頭を掻きながら口を開いた。

「勉強にのめり込むと一歩も外に出ようとしない勉強マニアの変人だけど?」

「………」

「お、お姉ちゃん…酷い…僕…そんなに外に出ないかなあ?」

「最近ハイヤードラゴンが構ってもらえなくて寂しがって拗ねてたからね。あれは相当怒ってたよ悟飯」

父親譲りの素直さで即答で返された姉の答えにショックを受ける2人の悟飯であった。

新たな敵の存在を知る前の数少ない安らぎの一時である。

穏やかな空気が流れていたが、取り敢えず悟林は自分達の現状をブルマに話していた。

「私達は亀仙人のお爺ちゃんの所にいるんだ。」

「カメハウスへ?何で?」

「何でも3人の人造人間がお父さんを殺そうとしてるらしいんだ。でもお父さんは病気だからお父さんをカメハウスに隠してるんだよ。」

「ふーん、それなら悟林ちゃんが倒しちゃえば良いじゃない。不完全燃焼だったんでしょ?」

「姉さんに無理はさせないで下さいブルマさん。姉さんと父さんとヤムチャさん以外のみんなでかかったのにこの時代の人造人間には勝てなかったんですから」

ブルマの言葉に未来悟飯が自分達が挑んだ時の結果を告げた。

「…あら…そんなに凄いんだ…で、ベジータは大丈夫だったの?ベジータもカメハウスへ?」

「ベジータさんはカメハウスにはいないよ。多分人造人間を倒すために修行してるよ。人造人間に負けたからって負けっぱなしじゃ終われない…ベジータさんはそう思ってる…きっと」

「…それにしても…父さんは1人で何をするつもりなんでしょうか?修行するにしろ、1人でやるより対戦しながらやった方が遥かに効率が良いのに…」

トランクスは未だに合流する気配がないベジータが気になっていた。

人造人間を起動させようとしたこと、その前にブルマを助けてくれたことでトランクスのベジータに対する感情は複雑だろう。

「ベジータさんはプライドの塊だからね…多分超サイヤ人を超えるつもりだよ」

「「ス、超サイヤ人を…超える!?」」

「お、お姉ちゃん…超サイヤ人を超えるなんて…そんなこと出来るの?」

悟林の言葉に未来悟飯とトランクスが目を見開き、悟飯が超サイヤ人を超えられるのか疑問の声を上げる。

「何言ってるの、普通の超サイヤ人じゃ勝てないなら新しい力を手に入れればいいじゃない。お父さんの界王拳も当時のお父さんより強かったベジータさん達サイヤ人を倒すために習得した技だよ。私も目指すつもりだよ、超サイヤ人よりも強い力を手に入れる。体が壊れるかもしれないけど色々考えてるんだ。超サイヤ人を超える方法もまだ朧気なイメージしかないけど…未来の私は超えようと考えてなかったの?」

「…そう言えば未来の姉さんは“お前達には超サイヤ人より強くなってもらう”って言ってたな…組み手以外にも瞑想にも力を入れていた…」

「もしかして未来の悟林さんは俺達に超サイヤ人を超えさせようとしていたんでしょうか…」

「未来のお姉ちゃんはひょっとしてトランクスさん達が未来のお姉ちゃんが考えているのを理解しているのを前提で鍛えてたんでしょうか?」

悟飯が何となく呟く。

こっちの姉にも言えるが、悟林は自分の考えていることを相手も理解している前提でやることがある。

もしそうなら、空回りをしていたのではないか?

「あはは…私の悪い癖だなあ…」

「分かってるなら直そうよお姉ちゃん…ん?」

悟飯の視界に入った物体に向かって歩く。

それが気になったのか全員が悟飯に着いていく。

そこには異形な何かがあった。

「きゃっ!なっ、何よあれ…!」

「虫…にしてはでっかいなあ…ねえ、ダブル悟飯は知らないの?」

「いや、俺もこんなのは未来でも見たことないな」

「僕も…」

「一体何なんでしょうかこいつは…」

取り敢えず学者志望の悟飯と学者を目指していた未来悟飯が異形を調べる。

「これは脱け殻だな…虫に近いようだ…」

未来悟飯が異形の脱け殻を見ながら言うとブルマが驚く。

「脱け殻!?こ、こんなでっかいセミがいるの!?」

「見た目はセミに近いけど…違うでしょ?」

悟林が悟飯に尋ねると、悟飯は首を振る。

動物などの知識は悟飯が誰よりも持っている。

「こ…こんなセミはいないよ…こ…これは…」

「た…多分…タイムマシンに残っていた卵の中身。」

トランクスが恐らくあの卵から孵った生物だと予想する。

「ああ、恐らくこいつが成長して脱け殻から出たんだろう。」

トランクスの言葉に未来悟飯も同意する。

「一体何だろうねこいつ?地球の生き物じゃないなら宇宙生物かな?」

「多分、それが一番可能性が高いと思うよ姉さん。地球にはこんな生き物は存在しなかった。新種だとしても3年で現れるとは考えにくい」

「し…しかし…どうやってこの時代へ…誰かがタイムマシンで卵を送り込んだのか…それとも何者かが卵と一緒に来たのか…そ…それにしても何故なのかさっぱり分からない…」

「ごめん、トランクスさん。ちょっといいかな?」

悟林が脱け殻の状態を更に調べるために脱け殻の中に手を突っ込むと、脱け殻はまだ乾いておらず、悟林の手にはベタベタとした液体で濡れた。

「脱け殻が乾いてないということは、中身は出てあまり時間が経っていないと言うことか…」

「え!?え!?」

未来悟飯が悟林の手に付いた液体を見つめながら周囲を見渡し、ブルマも慌てて周囲を見渡す。

「ねえ、みんな…この生き物…何かやばい感じがするんだけどさ…みんなはどう思う?」

「嫌な予感が凄くするよ…」

悟林の言葉に悟飯が答えると、全員が同意するように頷いた。

「な、なら早くこの場から消えた方がいいわね!あんた達はカメハウスにいるのね!何かあったら連絡するわ!」

「うん、分かった。ブルマさん気をつけて」

悟林が頷くと、ブルマは飛行機に乗って飛び去った。

「暇だったら遊びに来なさいトランクスー!お祖父さんやお祖母さんも喜ぶわよー!!」

悟林達も長居は無用とばかりに飛び去る。

「(い…一体何がどうなってるんだ…わ…分からない…さっぱり分からない…)」

「みんな、取り敢えずカメハウスに急ごう」

「「「はい!」」」

悟林達は全速力でカメハウスに向かい、そしてカメハウスに着くと悟林が代表して声を上げた。

「亀仙人のお爺ちゃーん、お邪魔しまーす」

悟林達がカメハウスの中に入ると、そこには大人達がテレビを凝視していた。

それを見た悟林達は不思議そうな表情を浮かべる。

「お…お前達、こ…このニュースを見て答えてくれ…何があったのか…」

「ニュース?」

悟飯が不思議そうにするが、取り敢えず悟林達もテレビを観た。

「…ねえ…トランクスさん…」

「…はい…恐らくさっきの…」

「さっきのってなんだ?」

ヤムチャがトランクスに尋ねると深刻な顔をした。

「…俺達よりも更に未来から何者かがこの世界にやってきたみたいなんです…タイムマシンに卵の殻があって近くに大きな脱け殻がありました…」

「…その脱け殻から出た奴だってのか…?」

「多分そうだと思います…場所も近いですし…」

「よし、トランクス。行って調べてみよう」

「はい!」

「私も行くよ!」

未来悟飯の言葉にトランクスと悟林が向かおうとする。

「お、おい!大丈夫なのか!?」

「いくら超サイヤ人3人でも…」

「大丈夫です、例え中身がどんな恐ろしい奴でも逃げることくらいは出来ます。自分よりも強い相手との立ち回り方は人造人間との闘いで嫌と言うほど理解してますから…」

ヤムチャとクリリンが心配するが、未来悟飯は自嘲するように言うと外に出ようとする。

「ぼ、僕も行きます!」

「過去の俺はここに残るんだ。君は超サイヤ人になれない…もし中身がとんでもない化け物だった場合は君を庇いながら闘うことになる。そうなると俺達がやられる可能性が高くなるんだ…父さんを守る意味でも君はここに残るんだ」

「は…はい…」

未来の自分からの戦力外通告に悟飯は落ち込む。

それを聞いたチチは息子には悪いと思いながらも安心した。

どんなに修行して強くなっても悟飯はチチにとって可愛い息子だからだ。

「未来の悟飯ちゃんも気を付けるだぞ!?危なくなったらすぐに逃げるだ!悟林ちゃん達もだぞ!」

「分かっています。俺達はまだ死ねませんから」

「悟飯、私達がいない間は悟飯がお父さんを守るんだよ」

「では、俺達は行きます。大体の位置は分かりますから」

未来悟飯に続いて悟林とトランクスがカメハウスを出た。

そして飛び立とうと砂浜に出た時ありえない気を感じ、それに気付き悟飯達も外に出てきた。

「ちょっと待って…!何なのこの気は…!?」

その気は驚くべき事にたくさんの人間の気が混じっていた。

その中にはフリーザ親子、そして悟空やピッコロ、ベジータの気と悟林達が知る者の気も存在した。

「間違いない…フリーザとフリーザの父親の気だ…!」

未来悟飯が最も強い気の正体に気付く。

自分にとってはかなり昔の相手だが、フリーザに与えられた恐怖は簡単には消えない。

「そ…孫悟空さんのも…ピッコロさんも…そ…それに俺の父さんのまで…」

トランクスは困惑したように呟く。

こんな複数の気が一緒になっている存在など普通は有り得ないからだ。

「た…確かに感じる…し…しかしそんなはずはない…フ…フリーザもその父親もし…死んだんだ…」

ヤムチャもフリーザ親子の気を感じたが、信じられなかった。

フリーザ親子は目の前にいるトランクスと悟林によって倒されたからだ。

「お父さんは確かに寝ています!」

悟飯が窓から悟空の存在を確認した。

「この方角はニュースにあったジンジャータウンだな…」

「行ってみようよ!怪物の正体を暴いてやる!!」

未来悟飯、悟林、トランクスの3人は事件の現場であるジンジャータウンに向かって飛び立った。 
 

 
後書き
未来悟飯の体の災難は未来の悟林がある程度受けてくれました。

因みに未来悟飯に相手がいる際のリアクションは娘のブラに髭が似合わないと言われたベジータと同じような世界終了のような顔です。

勉強マニアの弟が恋をしたりするなど信じられない戦闘マニアの姉 
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