イベリス
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第三十四話 中間テストの結果その十
「何か怖くなりましたし」
「そうですね」
「劣等感も憎しみも怖いんですね」
「その実は」
「あまりに強いと」
「そうです」
こう言うのだった。
「この様になります」
「塔、ですね」
咲は速水が出したそのタロットカードを見て述べた。
「そういうことですか」
「破滅です」
「そうなるんですね」
「克服出来れば」
速水は今度は別のカードを出した、そのカードは。
星だった、そのカードを出して述べた。
「こうなります」
「そうですか」
「ですから」
それでというのだ。
「あまりにも重いと」
「忘れるべきですか」
「破滅しますので」
自分自身がというのだ。
「ですから」
「忘れることも大事なんですね」
「人間は。伍子胥の様になってはです」
「最期がよくないと」
「やはり残念ですね」
「そうですよね」
咲もその通りだと頷いた。
「それは」
「そう思われるならです」
「劣等感や憎しみを忘れることもですか」
「大事です」
「時としてですね」
「そのことは覚えておいて下さい」
「わかりました」
咲は速水のその言葉に頷いた。
「そうしていきます」
「伍子胥は戦いも政治も出来ました」
速水は彼について悲しい目で述べた、見えている右目がそうなっていた。しかし左目がどうなっているかは咲にはわからなかった。
「呉の柱になりましたが」
「憎しみが強くてですね」
「最期はです」
「悲惨なものだったんですね」
「彼の剣が残っているそうです」
「形見ですか?」
「長江流域に落ちているそうです」
彼が仕えた呉は長江流域にあった、それで伍子胥の剣もというのだ。
「その剣には呪いがかっていると聞きます」
「呪われてるんですか」
「ですから手に取れば」
「呪われるんですか」
「彼の怨念にそうなるそうです」
「怨みを飲んで死んで」
「残した剣もです」
形見であるそれもというのだ。
「そう言われています」
「そうですか」
「もう二千五百年は昔のことですが」
それでもというのだ。
「剣は残り」
「そうしてですか」
「怨みもです」
彼のそれもというのだ。
「無念の死を遂げて」
「憎しみに心を支配されて」
「そして死ぬ時もです」
「怨みを飲んで死んで」
「今もその怨みを残しているとか」
「それが復讐鬼の結末ですか」
「やはりいい死に方ではありませんね」
速水は悲しい目のまま咲に問うた。
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