リュカ伝の外伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
やっぱり僕は歌が好き 第一楽章「音楽は世界を救う……はず」
前書き
あけましておめでとうございます。
本年もリュカさん共々
宜しくお願い致します。
なのでリュカさんを登場させるエピソードを考えました。
(グランバニア城)
ピエッサSIDE
不本意ながら私は今、グランバニア王国の政治の中枢に向かって歩いている。
比喩的表現では無くて、国王執務室へと向かっているのだ。
厄介事には関わりたくない。特に政治の厄介事は……
そう思うも王様から呼び出されれば伺うしか無い。
と言うのも、昨日ウルフ宰相閣下経由で、陛下の下へ赴く事となり、その時に用事を言い付かったのだ。
用件は簡単。
現段階までのマリピエが抱えてる楽曲をリストアップして、それを陛下に渡す事だ。
序でに、如何な曲か解る様に楽譜も付けてくれと言われ、昨日はほぼ徹夜で楽譜付きのリストを完成させた。
尤も陛下からは『急いでないよ』と言われたが、待たせたくないという気持ちが先走り、昨日の今日で完成させてしまったわ。
(コンコン)
「どうぞ」
陛下の執務室の扉をノックし許しを得て入室する。
「陛下、昨日の依頼を完成させました。どうぞ」
そう言ってリストと大量の楽譜を陛下に手渡す。
「え!? もう終わらせたの!! 流石、優秀だなぁ」
徹夜はしたが、マリーちゃんが何時もの様に練習に現れなかったので、作業が捗っただけである。
とは言え、彼女は目の前の方のご令嬢であらせられるから、批判めいた発言は出来ない。
陛下は気にしてない様だけど、私は気にする。
彼女がもっと真面目だったら、こんなに気苦労しなくて済むのに。
「結構な数だねぇ……因みに、既に世間へ発表してるのはどれ?」
取り敢えず楽曲のリストだけを見ながら私に質問される陛下。
「失礼します」
私は陛下の執務机に置いてあるリストの楽曲名の先頭に、丸印で発表済みの曲を示した。
「三分の一も披露して無いじゃないか! え~と……27曲。それだけアイツの歌唱力が未熟って事だね」
「はい……申し訳ございません」
陛下の言葉に、思わず謝罪する。
「いやいや……ピエッサちゃんの所為じゃないでしょ。寧ろアイツの音痴を世間に知られない様に、披露する曲を厳選してくれてるんだから、僕としては感謝だよ」
そう言って貰えると多少は気が軽くなる。
「あの……このリストは何に使われるのでしょうか? マリーちゃんにもっと練習する様に言って頂けると思っても宜しいのでしょうか?」
もしそうなら本当に助かるんだけど……
「う~ん……将来的な計画としては、アイツの練習への決意的なモノを刺激できるかもしれないけど、即効性では無い。当面は現状のままだろうね」
「はぁ~……そうですか……」
思わず溜息が出た。
「ゴメンね。今回リストを作って貰ったのは、僕が音楽関係でやりたい事があったから、アイツの楽曲と被らない様に知っておきたかったからなんだ」
「音楽関係でやりたい事ですか? またアイリーンに手伝わせるんですか?」
「う~ん……もしかしたら、そうなるかもだけど……当面は『謎のストリート・ミュージシャン、プーサン』の活躍がメインだね」
「え!? 陛下……違った、プーサン社長がストリート・ミュージシャンをやるんですか? 凄く気になります!」
「うん。先刻も言ったけど、音楽関係でやりたい事があって、それでお金が必要だから、小遣い稼ぎをしようと思ってるんだ」
「な、何も陛下が自ら稼がなくても、王様としてお金は沢山有るんじゃないですか?」
「王様は無給だよ。それに個人的な事に税金を宛がう訳にはいかないでしょ。あとプーサンがやりたがってるんであって僕じゃないよ」
陛下はもっと贅沢をするべきだと、私は思う。
「あれ? 『残酷な天使のテーゼ』は、まだ披露してないの? アップテンポな曲だから、あの音痴でも欺し欺し歌えるでしょ」
「はぁ……曲全体はアップテンポの名曲なのですが、出だしがスローから入るので、成功率が5回に1回なんです……」
「ウソだろ……そんなに成功率が低いのに、平然と人前で歌ってるのアイツ!?」
「私がマリーちゃんの美貌に嫉妬する余りに吐いたウソだったら、どんなに良いか……」
思わず大きな溜息を吐くと、目の前のお父様も一緒に溜息を吐いてた。
「アイツこの歌を使って僕の自慢の息子を貶してたけど、正しい歌詞の方は他人様に発表できないって……ふざけてるなぁ、相変わらず」
そう言えば、そんな歌を歌って説教されてたっけ……
「……………」
怒ってらっしゃるのか、陛下は腕を組んで何かを考えてる。
無理難題を言い付かるのは嫌だなぁ……
「……よし! ピエッサちゃん」
「は、はい!」
うぅぅぅ……怖い。
「多分、君の事だからこの歌に限らず、合格点のハードルは高いのだろうけど、この『残酷な天使のテーゼ』に関して、更に高いハードルを設定してくれるかな?」
「……? あの……如何言う事ですか」
「うん。例えばね、100点満点中80点以上の歌唱力になったら発表してたとして、この曲だけは95点以上の設定にして欲しいんだ」
「勿論陛下のご指示であれば従いますが、何故この曲だけなんですか?」
「僕の自慢の息子を馬鹿にした罰として、この曲で仕返ししてやろうと思ってる」
「でしたら絶対に合格させなくしましょうか?」
その指示の方が早いと思うのだが?
「それはダメだよ。多分無いと思うけど、アイツが死に物狂いで練習して、合格点を実力で超えたら、それはちゃんと評価しないとね。まぁ努力しないと思うけど」
「まぁ努力しないでしょう……あ、失礼しました!」
「イイって謝んなくて(笑)」
私が思わず頭を下げると、陛下は笑いながら謝罪が不要だと仰ってくれた。
それと同時に、執務机の引き出しを開けると、一通の封筒を手渡される。
「こ、これは……?」
まさかとは思いつつも、期待を込めて中身を確認する。
するとそこには楽譜が……タイトルには『エリーゼのために』と書かれている。
「今回の報酬。手間賃といった方が妥当かな? アイリーンちゃんと違って歌詞が無いピアノ曲の方が君には最適かなって思ってね」
「あ、ありがとうございますぅ! 早速これからアイリーンに見せびらかしに行きます!」
ピエッサSIDE END
後書き
今回のテーマソング
タイトル「残念な天空の勇者」
♫残念な 天空の勇者♪
♫少年は 身内が好き♪
♫ずっと想ってた 愛しの妹 腹違い♪
♫貴女の事 好きでいた 結ばれる事を待つ♪
♫不意に 身内以外 結婚する事出来て♪
♫運命さえ まだ知らない 生まれてくる娘♪
♫だけど いつか 気付くでしょう その娘には♪
♫男を惹き付ける程の 美貌がある事♪
♫残念な 天空の勇者♪
♫娘への 疑惑膨らむ♪
♫ほとばしる 熱い想いで♪
♫娘の処女 守り続ける♪
♫この愛を 押し付け生きる♪
♫少年よ 神話になれ♪
ページ上へ戻る