イベリス
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第三十三話 葛飾のアイスクリームその十三
「私はね」
「そうなの、作る気はある?」
「今のところは」
「気になる人は」
「気になる人?」
「近くに滅茶苦茶格好良くて優しいとかね」
そうしたというのだ。
「素敵な人いる?」
「それは」
ここでだ、咲は。
不意に速水のことを脳裏に思い浮かべた、そのうえで愛に言った。自然と顔が赤くなってしまっているが自分では気付いていない。
「どうかしら」
「いるの?」
「だからどうかしら」
「いないって思っていいかしら」
「それじゃあね」
「まあそっちはね」
愛は実際にいないと解釈して答えた。
「機会があればね」
「出来るの」
「出会いがあればね」
その時にというのだ。
「そうしたものだっていうから」
「いいのね」
「ええ、けれどそうした人が出来たら」
「デートでなのね」
「行くといいわ、それも楽しいしね」
「それじゃあね」
「私と行ってもいいし」
愛は自分も入れて笑って話した。
「それでね」
「彼氏の人ともなの」
「一緒にね」
「行くといいのね」
「どっちもね、そして東京も他の場所も楽しんで」
「見て回って」
「人生の学問をしてね」
こう言うのだった。
「そうしてね」
「そうしていくわね、これからは」
「それが咲ちゃんを素敵な女性にしていくしね」
「そうなの」
「人生の学問をしていけば」
それでというのだ。
「そうなるから。だからね」
「これからはなのね」
「学校の授業に部活にアルバイトに」
「こうして東京のあちこちに行って見て回る」
「そうしていったらね」
そうすればというのだ。
「素敵な女性になるから」
「じゃあね」
「ええ、そうしていってね」
「そうするわ、楽しいしね」
咲はアイスを食べて応えた、クラスメイトの家がやっている店のそれは確かに美味かった。そのアイスはとても美味く東京の他の場所でもこうしたものを食べたいとも思ったのだった。
第三十三話 完
2021・10・1
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