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歪んだ世界の中で

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最終話 再会その四

 だからこそだ。二人はまだムキになって言うのだった。
「私が振ってやったのよ」
「その程度の奴じゃない」
「何でそんな奴が私を相手にしないっていうのよ」
「こっちが言ってやってるのよ」
「そうした言葉を口に出す時点で駄目なのですよ」
 実は真人はわかっていた。二人がまだ言うことは。
 だがそれでもあえて言ったのだ。それは今もだった。
「そのことがおわかりになられない時点で駄目です」
「言ってくれるわね、本当に」
「好き勝手」
「安心して下さい。それも今で最後ですから」
 淡々と、あえて感情を見せないでだ。真人は言っていく。
「僕ももう貴女達にお話することはありません」
「何よ、その態度」
「私達を馬鹿にするっていうの!?」
「それならね。相手にしてやるわよ」
「女敵に回すと怖いわよ」
 二人は顔を突き出し意固地なまでに言ってくる。だが気付いていなかった。
 二人は顔を突き出したあまり背中が曲がり姿勢は低くなっている。それに対して希望も真人も背筋をしっかりと立てている。双方の関係は既に姿勢となって出ていた。
 その彼女達はまだ言おうとする。だが、だった。
 ここでだ。希望が真人に言った。
「行こう」
「部活にですか」
「うん、行こう」
 希望は二人には目もくれずに真人に言った。
「それで部活を楽しもう」
「そうですね。ここにいても意味がありませんしね」
「カメラ持って外に行こう」
 希望は真人を野外の撮影に誘った。
「その為にもね」
「そうですね。早く部室に入って」
「カメラを取りに行こうよ」
「わかりました。では」
 真人ももう二人を見ていなかった。希望を見てだった。
 満面の笑みになってだ。こう答えたのである。
「行きましょう、部活に」
「うん、そうしよう」
 こう話してだ。二人でだった。
 その下らない女二人に背を向けて部室に向かった。後ろから聞こえてくる喚き声はもう聞こえてもいなかった。
 希望はその日も次の日もだ。千春に薬をあげ続けた。山は冬から春に入っていた。
 次第に生き物の息吹が聞こえだしていた。緑も戻ってきていた。
 その緑の中を進んでだ。千春、割れたその木に薬をかける。すると。
 何かを感じた。それはその日だけでなく。
 次の日もだった。これまでとは何かが違う感じだった。それを感じながらだ。
 春休みの間薬をあげ続けた。春休みは彼にとって願いが適う直前に思えてきた。
 その為足取りが軽くもなってきていた。その彼が寝ているとだ。
 夢だった。夢の中で彼はあの城、姫路城の天守閣の最上階にいた。その中でだ。
 左右からだ。まずは妖怪達にこう言われた。
「ちょっと呼ばせてもらったよ」
「ここにね」
「それでちょっといいかな」
「あんたに話したいことがあるんだ」
 あの時と同じ様にだ。彼等は陽気に希望に話してくる。
「まあ大体話したいことはわかるよね」
「あんたにとっていいことだよ」
「それで呼んだんだけれどね」
「で、話は」
「はい」
 姫もいた。あの座にいて御簾はもう上げている。十二単もあの時のままだ。その姫がこう希望に言ってきたのである。 
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