歪んだ世界の中で
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最終話 再会その三
希望はようやく二人に気付いた。真人もだ。そのうえで彼女達の方に顔を向けてだ。
立ち止まりそうしてだ。こう言ったのだった。
「どうしたのかな、一体」
「何か用ですか?」
「あんたあの娘もういないわよね」
「それで何でそんなに明るいのよ」
「三学期の間ずっとにこにこしてるけど」
「新しい彼女でもできたの?」
「新しい彼女なんかいないよ」
苦々しい顔で言う二人にだ。希望はこう告げた。
「そうした人はね」
「じゃあ何でそんなににこにこしてるのよ」
「振られたんでしょ。それなのによ」
「もうあの娘いないのに」
「どうしてなのよ」
「だって。千春ちゃんは今も僕の彼女で」
全てをわかって確信してだ。疑うことが何もない顔での言葉だった。
「もうすぐまた会えるからね」
「はぁ!?何言ってるのよ」
「そんなことできる筈ないじゃない」
すぐにだ。二人は希望に怒った顔で言い返した。まるで雑魚が大魚に言う様に。
「あの娘もう転校したんでしょ」
「そう聞いてるんだけれど」
「いるよ。今も」
二人は誤った情報を聞いていた。だがここでも希望は違っていた。
それでだ、彼は確かな声で言い返したのだった。
「ちゃんとね」
「一体何処にいるっていうのよ」
「あんたの心の中だとでも言うの?」
「勿論僕の中にもいるし」
永田の馬鹿にした言葉もだ。今の希望にはあっけなく返せるものだった。
「その他にもね」
「その他にも?」
「まだあるっていうの?」
「うん。千春ちゃんはもうすぐこの学校に戻って来るから」
このこともだ。希望はわかっていると二人に返せた。
「ちゃんとね。だから僕は待っているんだよ」
「くっ、言うわね」
「そうじゃないとしたらどうするのよ」
「絶対にそうなるから」
疑っていない言葉はそのままだった。
「君達の言うことじゃないよ」
「うう・・・・・・」
ここでだ。二人はだった。
言葉を止めてしまった。そして歯軋りをした。
それでも何かを言おうとする。しかしだった。
その彼女達にだ。真人が告げた。この言葉を。
「もう止められた方がいいですよ」
「何でよ」
「どうしてそう言うのよ」
「もう貴女達は遠井君にとってはどうでもいい人達です」
人間の器としてだ。そうなっているというのだ。
「取るに足らない人達ですから」
「だからだっていうの?」
「もう何も言わないっていうの?」
「そうです。上城君は貴女達なんか見ていませんよ」
なんかという言葉もだ。真人はあえて言ったのだ。
「これ以上何を言っても意味がないですし。それに」
「それに?」
「それに何なのよ」
「これ以上はかえって貴女達自身を貶めるものですよ」
そうなっているに過ぎないというのだ。今の二人は。
「そうされたいのならいいですが」
「貶めるってね。こいつはね」
「そうよ、そいつはあれじゃない」
真人の忠告は届いていなかった。二人の耳にも心にも。
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