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イベリス

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第三十三話 葛飾のアイスクリームその八

「こうして美味しいものを食べることもね」
「どうしたの?」
「大事なのかって思ったけれど、今」
「大事だと思うわ」
 実際にとだ、愛は答えた。
「そうしたこともね」
「そうなのね」
「これも人生の勉強よ」
「美味しいものを食べることも」
「お料理にも活かせるでしょ」
「そうね、味を知らないとね」
 さもないと、とだ。咲もはっとなって答えた。
「その味を再現出来ないわ」
「だからよ」
「美味しいものを食べて」
「その味を再現しようとね」
「自分でお料理をする」
「そうも出来るし美味しいお店を知っていたら」
 それならというのだ。
「それだけで幸せでそこに行くまでにも色々なもの見るでしょ」
「それもいいことなのね」
「都内でもちょっとした旅行よ、そして旅行は」
「人生の勉強ね」
「あちこちの色々なものを見てもね」
 それもというのだ。
「人生の勉強だから」
「いいのね」
「そうなの、だからね」
「美味しいものを食べてもいいのね」
「それで食べ歩きもね」
「旅行になるから」
「いいのよ、何でも経験することよ」
 愛はアイスを食べつつこうも言った。
「それが人生の勉強にもなるから」
「美味しいものを食べてもいいし」
「あちこち行って色々なものを見ることもね」
「いいのね」
「ただし危ない場所は気をつける」
 愛はこのことも話した。
「東京も色々な場所あるから」
「歌舞伎町なんか危ないっていうわね」
「裏手とかね、変な人もうろうろしているし」
「繁華街はそうよね」
「夜のね、高校生どころか私もね」 
 大学生でもというのだ。
「行くべきじゃないわね、若い女の人が一人や二人で行くことは」
「駄目な場所ね」
「あそこはね、男の人でもね」
「危ないのね」
「今も危ない人がうろうろしていて」
 そしてというのだ。
「危ないお店もね」
「あるから」
「気をつけないと駄目よ」
「そうなのね」
「世界屈指の大都市だけあって美味しいお店も一杯あるけれどね」
「それでもなのね」
「当然歌舞伎町にもそうしたお店はあるけれど」
 それでもというのだ。
「注意してね」
「行くことね」
「そうして楽しむことよ」
「危険な場所には最初から行かないで」
「そうしてね、しかしこうしてね」
 愛は咲と共に葛飾の街を歩きつつアイスを食べている、そうしながら咲に顔を向けてこんなことも言った。
「下町を歩くのもいいわね」
「東京のね」
「ここがあれよ、江戸っ子の場所よ」
「寅さんとか両さんとか」
「そうした場所よね」
「同じ東京でも私達のいる足立区とかとは別なのよね」
 愛はしみじみとした口調で話した。 
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