提督はBarにいる。
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竹輪で呑もう!・1
「ちくわか」
「ちくわなんです」
資材倉庫に山積みにされた段ボール。その中身がほぼ全部ちくわと聞いた時には耳を疑った。何でも、北方海域で襲われていた漁船を助けたんだと。その船が日本の加工業者の所有するスケトウダラを獲る船だったらしく、お礼の品として自分達の製品であるちくわを贈ってくれたらしい。文字通り、山のように。
「どうしましょうか?提督」
「どうしましょう、ったってなぁ」
既に鳳翔と間宮、その他の希望者には好きなだけ持っていかせた後らしい。それでもこれだけ余ってるのか……。
「しゃーねぇな、俺が引き取るよ」
「え、大丈夫ですか?これだけの量を……」
「任せとけ、これでもちくわ料理にはチョイと自信がある」
そう言って俺は首を傾げる大淀にニヤリと笑ってみせた。
「……という事で飲みに来ました」
「いや展開が早ぇなオイ」
「そりゃ1年ぶりの更新で読者を待たせる訳にいきませんし」
「メタい話はやめーや」
じゃあ早速、とでも言うように業務終了と共に店にとび込んで来たのは大淀をはじめ常連の飲兵衛共。そしてそこに珍しい顔が一人。
「でもお前がいるのは珍しいなぁ、ウォースパイト」
「あらそう?でも期待してるのよ、提督のチクワ料理に」
「ほ~、チクワが好きとは知らんかった」
「元々魚料理は好きなのよ?でも、日本に来てから益々好きになったの!」
そうニコニコしながら話すウォースパイトに詳しく話を聞くと、やはり英国生まれ。元から魚は好きだったのだが日本に来てからその美味さにベタぼれ。特に、魚肉ソーセージをはじめとした練り物にご執心だとか。
「だって、ソーセージよ?まさか魚を肉のようにするなんて!」
「そうか?俺らにとっちゃあ昔からあるモンだからなぁ」
日本じゃ第二次大戦後くらいから作られてるらしいぞ?魚肉ソーセージ。って、それよりも今はチクワだ、チクワ。
「でもさ、チクワのツマミって割と少ないよね?」
「おでんに」
「磯辺揚げ?」
「穴にきゅうり詰めた奴とか」
「あ~、七味マヨ付けて食べると美味しいよね」
「いやいや、そのまんま囓っても十分じゃない?」
「「「「「わかる」」」」」
わいのわいのと盛り上がるツマミ談義。ホント、ウチの連中は飲兵衛だらけだぜ。
「ま、今日はそんな定番なんてのはつまらねぇから出さねぇけどな」
その分、俺が腕を振るうさ。
《ちくわとクリチの和え物2種》※分量1~2人前
(梅マヨ味)
・ちくわ:3本
・大葉:2枚
・梅干し:2粒
・クリームチーズ:40g位
・マヨネーズ:大さじ1
・醤油:小さじ1/2
【作り方】
1.ちくわを1cm幅で切り、フライパンかトースターで焦げ目が付くまで焼く。梅干しは叩いて梅肉にして、大葉は刻んでおく。
2.材料を混ぜ合わせれば完成。
※ポイント!
ちくわが熱い内に混ぜると、クリームチーズが溶けて良く絡まるぞ!
(小悪魔風クリチ和え)
・ちくわ:3本
・クリームチーズ:30g
・ニンニクチューブ:3cm位
・ごま油:小さじ1
・醤油:小さじ1/2~1
・小口ネギ:適量
・干しエビ、鰹節、ブラックペッパー:お好みで
【作り方】
1.ちくわを1cm幅で切り、フライパンかトースターでカリッとするまで焼く。ネギは刻んでおく。
2.ちくわが熱い内にクリームチーズ、ニンニク、醤油、ごま油、ネギを混ぜ合わせれば完成。お好みで干しエビ、鰹節、ブラックペッパー等を加えると病み付き。
「はいよ、まずは軽くお通し。ちくわの2種のクリームチーズ和えだ」
「やっぱりチーズとちくわは相性いいですよね~」
「……って、この干しエビ入ってる奴うんまっ!」
「これ舐めながら酒飲んでれば無限にイケるわ」
「酒盗とクリームチーズもヤバいけど、これもヤバい」
「「「「「わかる」」」」」
やっぱり練り物とチーズって相性いいんだよな。笹かまにはんぺん、かまぼこにちくわ。どれもチーズ入りの製品あるし。梅マヨ味の方は梅干しの酸味とマヨネーズのコクが合わさって、ちくわの味を引き立てつつ淡白なクリームチーズの味もしっかりと感じられる。小悪魔風の方はニンニクとブラックペッパーがいい仕事をしていて、淡白なチーズに強いアクセントを加えつつもちくわの味を際立たせる。それに干しエビと鰹節というちくわとも違う海鮮の味と食感が加わり、更にチーズを引き立てる。コイツを舐めながら酒と交互にやると、正に病み付き。悪魔的美味さだ。
「どうだ?ウォースパイト」
「流石提督ね、とても美味しいわ!これなら手軽に作れるし、何よりお酒が引き立って……」
そう言って『ギネス』のグラスに口を付けるウォースパイト。ゴクリ、ゴクリと喉を鳴らして胃の腑に酒を流し込んでいく様は、何とも言えず艶かしい。そして満足げにぷはっ、と息を吐き出すと、
「ついてんぞ」
「?」
小首を傾げるウォースパイトに、ちょんちょんと鼻の下を指差してビール髭が付いている事を教えてやる。よっぽど夢中になってたんだな。真っ赤になって口元を拭いてやがる。
「もう、意地悪なのね。レディに対して礼儀がなってないわ」
「ははは、好いた男の前で髭も気にせず夢中でビールかっくらう奴がレディだって?ご冗談を」
むぅ、とむくれるウォースパイト。いつもの澄ました顔もいいがこういう子供っぽい顔も良いもんだ。
「提督ぅ、ツマミ足んないよツマミ!」
「お~かっわりっ♪お~かっわりっ♪」
全く、この欠食児童共め。
「わかったわかった、今作るから大人しく待ってろ。ったく……」
まったく、会話を楽しむ暇もありゃしねぇ。
《タレが決め手のチーちく焼き》※分量2人前
・ちくわ:4本
・プロセスチーズ:2個
・サラダ油:小さじ1
・白いりごま:適量
(タレ)
・にんにく(すりおろし):小さじ1/2
・オイスターソース:小さじ1
・コチュジャン:小さじ1
・酒:大さじ1
・みりん:大さじ1
・ケチャップ:大さじ1
またチーズとちくわの組み合わせだが、今度はちくわの穴に詰めてチーちくにするぞ。プロセスチーズは4等分にして、半分に切ったちくわの穴に詰めたらちくわを更に半分に切る。タレの材料は予め混ぜ合わせておく。
フライパンにサラダ油を引いて熱し、温まった所でちくわを焼いていく。この時、チーズを詰めた断面がフライパンに直接触れない様に注意な。いくら加熱処理が施されたプロセスチーズでも、熱々のフライパンに触れたら熔けるから。ちくわに焦げ目が付いたら、混ぜておいたタレを絡ませて軽く煮詰める。仕上げにいりごまをまぶしたら完成。
「今度もチーズとちくわの組み合わせだが、焼き物だ。たっぷりとタレを絡めて召し上がれ」
我先にと皿にフォークと箸が伸びる。甘辛でスパイシーなタレが、食欲を増進させる。ほんのりと利いたコチュジャンの辛味が酒を喉に呼び込んでいく。
「あ~、辛い物ってやっぱり酒の親友だよね!」
「わかる~。お酒進むもんねぇ」
「いや、お前らは何でもツマミに出来るだろう?腹ペコ二航戦コンビ」
「そうかなぁ?」
「流石に限度があるよ」
とか言いつつ、食べる手と口は止まってねぇんだよなぁ……。
「だってお前らこないだツマミがなくて塩舐めてビール飲んでたじゃん」
「だってぇ」
「あれは酔っててお店まで来るのが面倒くさかったんだもん……」
「そもそも、鎮守府の敷地内とはいえ足取りが怪しくなるまで飲むんじゃねぇよ」
それも屋外で。陽射しが気持ちいいからと、木陰でビールとツマミを拡げて飲んでたんだが、自分等の食欲を甘く見てツマミが足らなくなって最終的に塩で酒を飲んでたらしい。
「「気を付けま~す」」
こりゃまたやらかすな、絶対。
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