歪んだ世界の中で
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第二十一話 与えられた試練その七
「是非共」
「悪いね、今度もなんて」
「ですから。僕と遠井君は」
「そうだね。ずっと前からのね」
「友達ですよね」
「うん」
その通りだとだ。希望は何の躊躇もなく答えることができた。
「そうだよ。何があってもね」
「そうです。ですから」
「僕もやっぱり友井君がそうなったら」
今の自分と同じ状況になったならばだ。どうするかというのだ。
「応援するだろうね」
「そうしてくれますか」
「だって。友達だから」
それ故にだというのだ。
「そうするよ」
「そうですよね。ですから僕も」
「お互いにってことだね」
「そうです。ですから僕は遠井君の友達で」
「僕は友井君の友達だね」
「そうなります」
こう話すのだった。そしてだった。
希望は真人のその心からの言葉を受け取った。そうしてだった。
来る日も来る日も千春のところに行き薬をあげ続けた。千春の屋敷にはあえて行かずにだ。
毎日そうした。何故千春の屋敷に行かないかというと。
「千春ちゃん今痩せ細ってるらしいんだ」
「雷に打たれてですね」
「うん。それで弱ってるから」
そうなっているからこそだというのだ。
「その痩せた姿を僕に見て欲しくないっていうんだ」
「学校にも来られてないですしね」
「そこまで弱ってるからね」
希望と一緒にいられない、今の千春にとって学校に通えないとはそういうことでもあった。
「だからなんだ」
「そうですか。それで」
「うん。だから僕は」
千春の屋敷に行かないというのだ。今は。
「そうするよ」
「それもまた心遣いですね」
「実はね」
本音もだ。彼は遠い目になって真人に話した。
二人はこの日は登校中に話していた。希望は今は真人とよく一緒にいる。
「僕行きたいんだ」
「あの人のお屋敷にですね」
「うん、毎日にでも」
これが本音だった。彼の偽らざる。
「そう思ってるんだ。けれどね」
「それはですね」
「千春ちゃんがその姿を僕に見て欲しくないっていうから」
だからだというのだ。
「僕は今はね」
「我慢されですね」
「千春ちゃんにお薬をあげるよ」
彼女の本来の姿であるだ。木に対してだというのだ。
「そうするよ」
「それがいいと思います。僕も」
真人はここでも決意を語る希望の背中をそっと押した。
そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「あの人がそうして欲しくないというのなら」
「我慢するのも人を好きになるってことなんだね」
「そうなりますね」
このこともだ。真人は希望に対して頷いて答えた。
「結果として」
「そうだよね。それじゃあ」
「これからもお屋敷にはですね」
「うん、行かないよ」
そうすると言うのだった。
「千春ちゃんがまた元気になるまではね」
「頑張って下さいね。それでは」
「これまで雨も降ったり」
晴れの日ばかりではない。色々な時がある。
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