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歪んだ世界の中で

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第二十一話 与えられた試練その六

「木の精だったんだ」
「そしてその木にですね」
「雷が落ちてね」
 まさにだ。そのせいでだった。
「今は起き上がれないんだ」
「そうですか」
「けれど。毎日お薬をかけていけば」
「何時かはですね」
「絶対に続けるから」
 例えだ。何があろうともだというのだ。
「そうするからね」
「あの人の為にですね」
「うん、そうだよ」
 まさにだ。その為にだというのだ。
「若し一日でも欠かせば」
「その時は」
「あの娘が消えるからね」
「それだけはですね」
「何があっても嫌だから」
 だからだというのだ。
「僕は最後の最後までね」
「あの人がもう一度遠井君の前に笑顔で戻ってこられるまで」
「本当にそれまでね」
 その決意をだ。今言うのだった。
「頑張るよ」
「そうされますか」
「ほら、諦めたら終わりっていうじゃない」
「その時にですね」
「だから僕は諦めずにね」
 遠くを見る目で話す希望だった。
「毎日行くよ」
「そうされますか」
「絶対にね」
 こう真人に話す。今二人は学校の屋上にいる。そこで青い空を見ながら話していた。
 そしてその青い空を見つつだ。希望はこうも言った。
「僕の名前だけれどね」
「遠井希望君ですね」
「ずっとね。この希望って名前嫌だったんだ」
 このことをだ。彼は真人に少しばかりの苦笑いと共に話した。
「実はね」
「それはどうしてですか?」
「大袈裟っていうかね」
 希望、その名前がだというのだ。
「何か格好つけてるみたいだし。それに」
「それにですか」
「希望なんて何処にもないんじゃないかって思ってね」
 そうも思ってだったというのだ。
「こんな名前何になるんだとも思ってね」
「それで、ですか」
「うん。嫌だったんだ」
「僕はずっといい名前だと思ってましたが」
「そう思ってくれてたんだね」
「はい、僕は」
 そう思っていたというのだ。
「ですが遠井君自身は」
「ずっとそう思ってたよ」
 過去形の言葉で述べる。
「そうね」
「では今は」
「希望を見ているから」
 先にだ。それでだというのだ。
「いい名前に思えてきたよ」
「そうなのですね」
「希望だよね」
 遠くを見る目でだ。彼は真人に言っていく。
「それを見るよ」
「そしてやがては」
「またね」
 再びだというのだ。
「また千春ちゃんと一緒にいるよ」
「では僕も応援させてもらいます」
 真人はここでも親友だった。希望にとってかけがえのない。 
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