歪んだ世界の中で
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第二十話 災いの雷その一
第二十話 災いの雷
初詣から冬休みの間ずっとだ。希望は千春と共にいて楽しい日々を過ごした。そのうえでだった。
新学期、三学期を迎えた。そうしてだった。
その三学期の始業式がはじまってからだ。希望は千春にこういうのだった。
「何か楽しいままだよね」
「そうよね。じゃあ今日はどうするの?」
「今日はこの後のホームルームで終わりだから」
それでだというのだ。
「プールに行く前にね」
「デート?」
「何処かで。二人で遊ばないかな」
「うん。じゃあ何処で遊ぶの?」
「商店街は冬休みの間も行ったから」
「そうだよね。何度もね」
「ううん、それなら」
腕を組んで少し考えてからだ。希望は千春にこう言った。
「水族館はどうかな」
「水族館?」
「そう。そこはどうかな」
希望はこう千春に提案した。
「まだ行ってないよね」
「そういえばそうよね。八条水族館よね」
「そう、あそこは一杯海や川の生き物がいるし広いし」
種類も数も設備もだ。充実しているというのだ。
「いいと思うけれどどうかな」
「そうね。それじゃあね」
「あの水族館ってピラルクだっているし」
「ピラルクってあのアマゾンの」
「そう、凄く大きな魚だよ」
世界最大の淡水魚だ。これを釣ることはかなり難しいことでも知られている。
「アマゾンを忠実に再現している水槽もあってね」
「じゃあピラニアとかアロワナも」
「いるよ。他にはデンキウナギもね」
高圧の電流を全身から放つ魚だ。アマゾンの中でも危険な魚として知られている。
「いるよ」
「デンキウナギなら千春も一回見たことあるよ」
「また見に行きたい?」
「行きたくなったよ。それじゃあね」
「うん、今からね」
こう話してだ。そのうえでだった。
この日。三学期のはじめは二人で水族館に行くことになった。
このことを部室で聞いてだ。真人は笑顔で希望に述べた。
「いいですね」
「いいんだ。そこに行って」
「はい。水族館ですよね」
「そうだよ。そこに二人で行こうって思ってるんだ」
「ああした場所は学生割引が効きますし」
勉強に使うからだ。動物園やこうした場所は博物館扱いとなるのだ。
「それに一杯。色々な生き物がいますから」
「そういったのを見るのはね」
「とてもいいことです。ただ」
「ただっていうと?」
「あの水族館はカメラは厳禁ですから」
つまり撮影はできないというのだ。
「それがかなり」
「あっ、写真部としては」
「そうです。けれどそれは」
「マナーだね」
「写真は誰かを。生き物を怖がらせるものではありません」
「楽しんでもらう為のものだよな」
「はい、ですから」
撮影禁止ならばだというのだ。
「絶対にしてはなりません」
「そういうことだよね」
「マナーは大事です」
真人は真面目だった。
「それを守ってこそカメラマンですから」
「そうだね。友井君はいつもそう言ってるよね」
「カメラが好きですから」
それ故だとだ。真人は笑顔で希望に話すのだった。
「だからこそマナーを守って」
「そうだね。じゃあ僕も」
「カメラは持って行かれますか?」
「いや、持って行かないよ」
そうしないとだ。希望は真人に答えた。
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