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兄が切実に欲しいもの

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第三章

「それをな」
「阪神の人にプレゼントしたいのね」
「ああ、それか悪送球しないボールな」
「ヤクルトが優勝した時のことね」
「そういうのが欲しいな」 
 こう言うのだった。
「本当に」
「切実ね」
「当たり前だろ、今シーズンはエラーで負けたんだ」 
 肝心のところでというのだ。
「だからな」
「そういうのが欲しいのね」
「ないか、そんなの」
「ある訳ないでしょ」
 妹の返事は一言だった。
「幾ら何でも」
「猫型ロボットは持ってないか」
「持ってるけれど野比さん家行くの?」
「行けたら行きたいな」
 兄の返事は切実なものだった。
「本当に」
「そうなのね」
「全く、来年はもっとエラーを減らさないとな」 
 兄は今度は現実に戻って話した。
「さもないとまた肝心な時に負けるな」
「それはそうね」
「ああ、それで千佳は何が欲しいんだ」 
 兄は妹に問い返した。
「クリスマスプレゼントに」
「物凄く打つ助っ人ね」 
 千佳は率直に答えた。
「出来れば守備もいい」
「メジャー探すんだな」
「そうしろっていうのね」
「ああ、あと一つ戦力欲しいんだな」
「それで来年はクライマックスよ」
「そうなったらいいな、しかし今年は僕もへこんだよ」
 兄は苦い顔で言った。
「本当に」
「そうよね」
「だから守備をよくしないとな」
「切実な問題ね」
「つくづく思ったよ」
 こう妹に言うのだった、そして母に言われて風呂に入った。妹はその兄を見送ってから自室に戻ってだった。
 カープのことを調べてから予習復習をしつつ自分が風呂に入る時を待った、そうして風呂に入ってからまた勉強をして後は寝る前に歯を磨くまでカープのことを考えた。来年愛するチームはどうあるべきかを。
 そしてクリスマスプレゼントに欲しかったものを貰ってやはり欲しいものを貰った兄に対して言った。
「また来年ね」
「ああ、今度のプレゼントは阪神の朗報も一緒だといいな」
「そうね、カープにもあって欲しいわ」
 兄妹で話した、そして間もなく来る来年のことをまた思うのだった。


兄が切実に欲しいもの   完


               2021・11・29 
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