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兄が切実に欲しいもの

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第二章

「本当にあの状態の巨人だとね」
「勝てるって思ったわよね」
「阪神にしても」
「そうよね」
「ええ、私も阪神が絶対に勝つと思ったわ」
 実は千佳は確信していた。
「ヤクルトにはどうかって思っていたけれど」
「それがね」
「あの通りでね」
「見事連敗して」
「敗退したから」
「菅野さんに完封負けしても」
 初戦でそうなってもというのだ。
「もう巨人のカードはないから」
「後は連勝して終わり」
「クライマックス第一次は阪神」
「千佳ちゃんも思っていたのね」
「それがよ」
 そう予想、確信していたがというのだ。
「あの通りだったわね」
「まさかの連敗でね」
「しかもそれがエラーから」
「もう呪いレベルの負けだったわね」
「信じられないわね」
「だからお兄ちゃんも三日間そうなったわ」
 生ける屍になったというのだ。
「毎年何があってもその日で終わってのに」
「そこまでショックだったのね」
「八条学園中等部特進科のエースが」
「スキー部はおろか自転車部でも注目されてる人が」
「三日間なのね」
「そうなっていたわ、学校には行って予習復習して部活は行っていても」
 やることはやっていてもというのだ。
「そうだったわ」
「それで今は復活してるのよね」
「そのショックから立ち直って」
「そうよね」
「今はね、しかしその間声はかけられなかったわ」
 妹である彼女もというのだ。
「あんまりでね」
「大変だったのはわかるわ」
「あれはなかったからね」
「幾ら何でも酷過ぎる結末だったから」
「それでね」
「本当に見てられなかったわ」
 千佳は学校でクラスメイト達に兄のことを話した、そして家に帰ると。
 兄は部活と予習を終えてから晩ご飯を食べて入浴までの一時に月刊タイガースを読んで阪神のことを勉強していた。
 その兄にだ、千佳はふと尋ねた。
「お兄ちゃん今年のクリスマスプレゼント何が欲しいの?」
「サンタさんにか」
「ええ、何が欲しいの?」
「エラーしないグローブがいいな」 
 妹を見ないで答えた、雑誌を熱心に読みながら。 
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