僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結
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お店がお休みの日、私は、お父さんを誘って京都鞍馬に出掛けた。お寺を見学した後、貴船で予約してあるので、お風呂と食事をする予定だ。
お風呂は貸し切りにする?って聞いたけど
「バカ 美鈴と一緒に入るなんて、まぶしくて、眼がつぶれっちまうよ そんなのいい いいっ」とって言っていたが、私だって・・抵抗あるんだよ。だけど・・お父さん だから・・。
お父さんは、まだまだ元気みたいで、行きも帰りも歩こうと言って、ケーブルを使わなかった。まだ、雪が残っているようなジメジメした所を私は、イノシシでも出て来るんじゃぁ無いかと思いながら、時々滑りながらもようやく歩けた。
お店に着くと、早速、枯れているが山の景色を見ながら、渓流の音も聞こえてくるお風呂で暖まっていると、私は、もう、蒼に抱かれながら、こういう風にゆったりとお風呂に入ってみたいなぁと思うようになっていたのだ。その後、山菜とイノシシ肉の味噌鍋が迎えてくれた。
「お父さん お風呂 良かった?」
「ああ こんなところで、ゆっくり出来るなんて、心までゆっくりするなぁ」
私は、お父さんにビールを継ぎながら
「あのね 私 プロポーズされたの」
「うー 蒼君にか?」
「うん 私 彼と一緒になりたいの」
「いいじゃぁないか 良い青年だよ 彼なら、美鈴を幸せにしてくれるよ」
「ありがとう 私 ずーと彼のこと想っていたのよ それでね 今のお店、広げるの 隣には、私達の住むところも建てるわ 勿論、お父さんも一緒に住むのよ」
「えぇ― ワシもかー ワシは今のアパートで暮らすから、心配するなって」
「お父さんはそう言うと思ったけど、ひとりの方が心配なのよ 今まで、二人で、ずーと暮らしてきたんだから、私の言う事、聞いてよー お願い」
「だけど、美鈴はずーとワシの面倒を見てくれて、ワシは何にもしてやれなくて・・。今度は、蒼君と幸せになれよ」
「幸せになるわよ だけど、私、お父さんも一緒の方が幸せなのよ 勿論、蒼も賛成してくれているわ わかってー」
「美鈴 すまんな いつも、気に掛けてくれて・・ だけど、なんでお母さんが居ないのかが、思い出せないんだよ お母さんがいたら、美鈴にこんなに苦労かけないかもな」
「いいのよ お父さん 私 頭ん中にお母さん居ないわよ ただね・・」
「ただ 妹が居た? そう思っているんじゃぁないのか? 言ってくれ 美鈴 知っているんだろう?」
「お父さん やっぱり 思い出していたんだ ・・・ 清音」
「きよね? そうだ やっぱり、美鈴の妹なのか? 海辺の砂浜で遊んでいたのは、美鈴ときよねなのか?」
「それは、違うわ でも、私、妹の清音とよく遊んでいたわ 小さい頃 お父さんも可愛がっていたの」
「そうか やっぱり 姉妹だったんだ なぜ きよねは居ないんだ」
「あのね 私も よく、わからないんだけど 貰われて行って、私達、離れてしまったの」
「なんだ その 貰われたって言うのは」
「だから そこは わからないんだって 私だって・・ お父さん 清音に会いたい?」
「そりゃ 自分の娘と聞くとな どうしているんだろうかと・・どんな、娘に成長しただろうかとか・・」
「そう」私は、心が揺れていた。
「美鈴 何にもしてやれないけど、美鈴が結婚して幸せを掴んでくれれば、ワシも幸せなんだよ だから、本当に良かったと思っているんだよ」
「ウン ウン」と、言ったきり、私は涙が出てきて、それ以上、言葉にならなかった。こんなに、父親って、娘の幸せ喜ぶんだろうか・・。それに、私だけ、こんなに幸せで良いんだろうかと言う感情も激しかったのだ。
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