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レーヴァティン

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第二百二十六話 関を通りその十

「それを飲むことだ」
「そうしないと駄目ね」
「さもないと身体を壊すからな」
「現実としてね」
「俺も一度だ」
 英雄は自分の話もした。
「久志と二人で旅をしている時だった」
「西の浮島ね」
「あちらはむしろな」
「この浮島よりお水が悪いのよね」
「そのこともあってな」
「飲んでだったのね」
「腹を壊すところまではいかなかったが」
 それでもというのだ。
「少しだ」
「調子が悪くなったんだね」
「そうしたことがあった」
「あんたもだったんだね」
「久志もそうなってな」
 それでというのだ。
「以後だ」
「生水は飲まなくなったのね」
「そうなった、沸騰させたものかな」
 若しくはというのだ。
「酒をだ」
「飲んでいたのね」
「あちらでは酒はよく飲むしな」
 この浮島よりもというのだ。
「水も飲んだが」
「お酒もなのね」
「そうしていた、兎に角だ」
「生水はなのね」
「飲まないことだ」
 それに徹すべきだというのだ。
「今もな」
「だから雪もそうすることだね」
「食うな」
 そのままではというのだ。
「そうすべきだ」
「そうですね」
 良太も頷いて述べた。
「お水は容易に飲める様で」
「違うな」
「慎重に飲むべきです」
「そうだ、殺菌してこそだ」
「安心して飲めます」
「その通りだ」
「これは飲むことではないですが」
 それでもとだ、良太はさらに話した。ここで彼は自分の水筒を見たがそこの水はまだ凍っておらず動くとたぷたぷとした感じがした。
「水は火よりもです」
「危険なものだな」
「火傷よりも溺れる方が多い」
「そうも言われるな」
「火は水よりも危ういことは」
 良太はさらに話した。
「韓非子でもあります」
「中国の古典だな」
「法家の」
 この思想のというのだ。
「それにあります」
「火は強く見えるしな」
「近付くと熱いです」
「だから危険なものだとわかる」
「ですが水はです」
「見えていてもな」
「近付いても熱くはないです」
「また強くも見えない」
「ですから」
 そうしたものだからだというのだ。 
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