セルビアの子犬達
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第三章
そこに向かった、そこは排水管であり。
「ワン」
「ワンワン」
「クゥン」
覗くと三匹の子犬がいた、それぞれ黒と白の毛色で母親の遺伝を感じさせた。マリンコビッチは子犬達を見ると同僚に話した。
「見付けたけれどな」
「排水管の真ん中から出て来ないな」
「ちょっとこのままじゃな」
「救助出来ないな」
「どうするか」
マリンコビッチはここで考えた。
「一体」
「二人いるし排水管の双方につくか?」
「そうしてか」
「一方から棒か何かで追い立ててな」
「もう一方に行かせてか」
「それで保護するか」
同僚はこう提案した。
「そうするか」
「そうだな、じゃあな」
マリンコビッチも頷いた。
「そうするか」
「それじゃあな」
こうしてだった。
二人は話した通りにして子犬達を保護してだった。
そのうえで母犬も保護して施設に連れて帰った、そのうえで獣医に診せて食事と水をあげて里親を募集すると。
オーストリアからSNSを観た人が来た、そうして母犬ベラと名付けられた彼女と診ると雌だった子犬達ヘラ、デメテル、ヘスティアの三匹もだった。
「引き取ってですか」
「家族に迎えたいです」
その人は所長に話した。
「四匹全員を」
「そうしてくれますか」
「是非」
こう言って四匹全員を家族に迎え入れた、そして後日彼女達がオーストリアで幸せに過ごしている姿をメールで送ってくれた。
それはココを引き取ったドイツの人も同じで。
マリンコビッチは妻に彼等のことを妻に話して言った。
「どの子もよかったよ」
「幸せになってね」
「この国は野良犬や野良猫が多いけれどな」
「ずっと戦争でね」
「色々大変だからな」
長く続きユーゴスラビアが崩壊しセルビアだけになる中でというのだ。
「戦争が終わっても」
「傷跡は酷いから」
「犬や猫にもしわ寄せがきてな」
「大変だから」
「そうなっている、けれどな」
それでもとだ、彼は妻に話した。
「少しずつでもな」
「助けていかないとね」
「同じ命だ、だからな」
それ故にというのだ。
「これからも助けていくよ」
「私も手伝うわ」
「宜しく頼むな」
「一緒に少しでも多くの命を助けていきましょう」
困っている犬や猫達をとだ、夫婦で誓い合った。まだ内戦の傷跡が残るセルビアにおいての話である。
セルビアの子犬達 完
2021・10・26
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