イベリス
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第二十六話 部活ではその六
「斜陽とか人間失格とかは注意して読まないといけないけれど」
「それでもなの」
「そう、読みやすいから。しかもそんなに長くない作品ばかりだから」
「読んでもいいのね」
「しかも太宰ってね」
ここで同級生は咲に笑って話した。
「イケメンでしょ」
「そうそう、写真見たらね」
まさにとだ、咲も応えた。
「太宰って男前よね」
「そうでしょ」
「これはもてるってお顔よね」
「あれで背は一七五あったらしいわ」
「背もあったのね」
「芥川も美形だったけれど」
太宰が終生敬愛していたこの作家もというのだ。
「太宰もね」
「芥川も確かに美形よね」
咲はこのことも認めた。
「今でももてるわね」
「絶対にね」
「流行作家であの顔で」
「ちなみに太宰実家はあれでしょ」
「今も政治家さんよね」
「そう、それで津軽の大地主だったのよ」
このことが太宰の人生に大きな影響を及ぼしている、そして六男であったことも彼の人生にそうさせたという。
「お金持ちのね」
「家の人で」
「それで性格結構明るかったっていうし」
「自殺しても?」
「躁鬱だったかもね」
「急に上がったり落ち込んだり」
「そんな人でね」
同級生は太宰について考えながら話した。
「それでじゃないの?」
「自殺したの」
「時々死にたいって衝動が起こって」
「鬱の時に」
「それでじゃないの?けれど普段はね」
「明るかったの」
「だったらもてるわね、ただ私はね」
こうもだ、同級生は咲に話した。
「作家さんのお顔で言うと三島由紀夫ね」
「あの人も美形ね」
咲はこの作家の顔も思い出した。
「確かに」
「小柄だったらしいけれどね」
「ボディービルや剣道もしていて」
「身体も鍛えていてね」
「精悍な感じだったのよね」
「それで私としてはね」
「三島由紀夫が好きなのね」
同級生に問い返した。
「作家さんのお顔ですと」
「そうなのよ」
「ああした人がタイプなの」
「そうなのよ」
「成程ね」
「咲ちゃんはどんな人がタイプ?」
同級生はここで咲に聞き返してきた。
「それで」
「そう言われたら」
どうかとだ、咲はふと考えた。すると。
脳裏に不意に速水の姿が思い浮かんでこう言った。
「スマートで奇麗な人?」
「そんな人?」
「ええ、ただね」
それでもだ、咲は話した。
「あまりね」
「あまりっていうと」
「何でかしら」
自分でもわからなかった、何故速水が脳裏に思い浮かんだのか。それで内心戸惑いつつ同級生に話した。
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