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僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結

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6-⑼

 夜遅めに、美鈴の店が終わってから、駅前のカフェで会っていた。なんか、もやもやして美鈴に言っておかなければと思っていた。

「店は順調なのか?」

「うん 7月に入って、新しい子も頑張ってくれているし、舞依ちゃんの提案で夏向けにピリ辛メニューも増やしたしね 舞依ちゃんがいろいろやってくれるので、助かっている」

「そうか、良かったね 先日ね、会社の新製品のことで、相談があって、松永さんに会って来た」

「そう 変わりなく、元気?」

「元気そうだよ 少し、美鈴のこと心配していた 美鈴が働きづめだから」

「なんもー 私なら、大丈夫だよ あの人、親がわりみたいなもんだからなー いつも、心配してくれてー」

「そうなんだけどー もっと、心配なのは、シャルダンのことだよ 無理に対抗しようとしていること」

「なんにも 無理なことなんて無いわ 私の、目標なだけ」

「それは、わかるが 急ぎすぎているんじゃぁないんか」

「そんなことないわよ 私だって、高校も大学生活もあきらめて・・ 蒼達と楽しくやりたかったわ でも、その間、考えて・・ ゆっくり、していたら、おばぁちゃんになるわ」

「だけど、今でも、充分に対抗しているじゃぁないか あそこに行く客も大分、ナカミチが奪っていると思うよ」

「まだまだ 駄目よ ナカミチをガタガタにしたんだから うちの家庭も・・ あの上野って男も・・お母さんだって・・許せない あっ ごめんなさい こんなこと蒼にしか言えないから・・」

「それは、理解しているつもりだよ でもね、今でも、借入金あるんだろう それに、上乗せするって」

「今のところは、順調に返せているから 蒼 こんな借金だらけの女は嫌だって言うのなら 私 覚悟できているよ ずーと 蒼の愛人のままでもね」

「バカ そんなこと考えてもいないよ ただね 昔のことは、忘れて、僕と新しい生活を作っていければ、それでいいじゃぁないか 昔の美鈴の悔しさは、僕と美鈴で取り返していこうよ」

「お父さんもきっと悔しいと思っているわ あんな風になってなかったら だから、私はその思いも背負っているのよ 蒼に負担かけたくないわ 私のことは、もう・・忘れてもらっても・・」

 と、言うなり、席を立って出て行ってしまった。僕は、しばらく動けなかったのだ。「何かがくい違っている」と思っていた。

 僕が、やるせない気持ちで店を出ると、美鈴が立っていたのだ。

「蒼 私、蒼が好き 蒼が他の女の子好きになっても、それでも良いの」

「ちっとも他の子が好きになったなんて言って無いやんか」

 と、僕は、送って行くよと言って、手を取って歩き出した。美鈴は腕を組んできた。その間、ふたりは無言のままだった。美鈴のマンションの前まで来た時

「僕は、美鈴が好きだ 君がお父さんを思う優しさも好きだ 借金があろうと関係ない 美鈴を好きなんだ」

 と言って、抱き寄せて、唇を寄せて行った。美鈴も僕にすがるように抱きしめてきていた。
 
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