僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結
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第五章
5-⑴
年が明けて、元旦の朝。お父さんと二人っきりになって以来、食卓には、ずーと、お雑煮だけだった。藤沢さんが、お店を始めてからは、黒豆と数の子を持ってきてくれていた。今年は、私が、海老を焼いて、黒豆と数の子を用意した。お父さんは、私と二人っきりになってからは、あんまり食べなくなっていた。
私も、元旦にお休みっていうのは、久しくなかったのだ。いつも、仕事していたと思う。私は、出掛けるので、軽くお酒でお祝いをして、済ませた。
「あんまり、飲みすぎないでね」と、言って出ようとした時
「あぁ スーパー銭湯にでも行くだけで、家でTV見ているから心配するな。それより、美鈴こそ、気をつけてな。むこうの家でも、ちゃんと挨拶するんだぞ」
「わかってるよ 子供じゃぁないんだから」
駅前で待ち合わせをして、美鈴を家に連れて行った。直ぐにお母さんは、美鈴を座敷に連れて行って着替えを始めたのだ。
お父さんと僕はリビングでぐだぐたしながら飲みながら待っていたのだが、30分ほどして、美鈴が現れた。
「おぉ これは、いっぺんに華やかになったな 眼がさめるような美人さんだ」と、お父さんが、第一声だった。確かに、僕も見とれていた。
美鈴は恥ずかしそうに立っていたが、髪の毛の横には、髪飾りもお母さんは用意していたんだ。
「美鈴ちやん、蒼の横に座ってちょうだいな 腰があんまり細いからタオル巻いたのよね だから、手間取っちゃてね でも、本当に綺麗でびっくりだわ うちは、女の子居なかったから、美鈴ちゃんは小さい頃から見ているし、本当の娘みたいで、着せてて、嬉しかったの こんなの、着てくれて、ありがとうね」
「おばさま そんな 私こそ、綺麗なの着れて嬉しいです」
「さぁ 遠慮しないで食べてね 蒼 美鈴ちゃんの分 取ってあげて 飲み物は? ビール ワインとかがいいかしら」
「あのー あんまり、飲むと・・」
「お母さん この後、伏見稲荷に行こうと思っているんだ 商売繁盛」と、僕もあんまり飲ませるわけにはいかないと思っていた。
「あら そうだったわね でも 気をつけてね 混んでいるから」
しばらくして、僕達は「そろそろ 出ようか」としたら、お母さんはバタバタと美鈴の草履とか巾着を用意していた。ショールも出してきて
「ごめんなさいね 年寄りぽくて この子、もっと前に出掛けるって言ってくれてたら、ちゃんと用意したのにね」
「おばさま いいんです 素敵ですよ 気になさらないで」と、美鈴もすまなそうにしていた。
「あのね その おばさまって言い方 何とかなんない 他人行儀で・・ 美鈴ちゃん ちょっと、こっち」お母さんは、美鈴を呼び寄せていた。
「蒼 ゆっくり、歩くんだよ 着物なんだから ちゃんと、守ってあげなきゃだめよ 美鈴ちゃんも、困ったことあったら、恥ずかしがらないで、ちゃんと蒼に言ってね しっかり、蒼の腕を掴んでいてよ」と、家を出る時も、お母さんはうるさいぐらい心配していた。
「さっき、呼ばれていたのは、何だったん 変なこと言われたのか?」
「うぅん あのね おトイレ済ませておきなさいって 外では、大変だからって そんなことまで、心配してくれた」
「そうか 美鈴のこと気に入っているみたいだね」
電車の中から混んでいた。美鈴もしっかりと参道を歩いている時も僕の腕に掴まっていた。
「昔、お父さんに連れられてきたんだけど、まだキツネのおせんべい売っているのね なつかしい」と、言っていたが、別に買うでもなく、境内に進んだ。
「お賽銭 奮発しちゃった」と、参拝終わって美鈴が言っていた。今の気持なんだろうなと僕は思っていた。
そして、家に戻ると、お母さんが待っていたかのように、美鈴を招き入れて、僕の小さい頃の話とか、男の子はつまらないとかグチを言っていた。美鈴もその度に相槌をうって大変だったと思う。
美鈴がそろそろ帰ると言って、着替えたが、帰り際にお母さんが
「私が、作ったんだけど、お父さんと食べて」と、ちらしずしを美鈴に持たせていた。
「いろいろとありがとうございます お父さん、きっと、よろこぶと思います いただきます」
「蒼 ちゃんと家まで送って行くのよ 美鈴ちゃん 又 遊びにきてね」と、お母さんに言われた。
送って行く道すがら、美鈴は僕と手をつなぎながら、児童公園の暗い所に引っ張って行って
「今日は嬉しかったわ 幸せ ねえ 抱きしめてほしいの」とせがんできた。僕は、しっかりと・・
家の前まで送って行ったが、2階建てでマンションというよりアパートみたいなもんだった。
「寄って行く?」と、聞かれたが、僕は「遅くなるし、いいよ」と、断った。別れ際にも、チュっとされて、家に戻ってきた。早速、お母さんが
「蒼 美鈴ちゃんて 本当に良い娘よね 苦労したんだろうけど、いじけた素振りもないしね 着替える時、気が付いたんだけど、あなた達、同じミサンガ着けているのね 仲良いんだー 着替え終わった時ね 小さな声で 私に お母さん、有難う って言ったのよ 思わず、抱きしめてしまったわ 蒼 あの娘を大事にしなきゃだめよ」
わかっているって、そのつもりだよ
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