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ペットショップにいた時から

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第二章

「ふわりは本当にいい娘だよ」
「下手な人間よりもね」
「ものをずっと大事にするなんてな」
「ええ、本当に下手な人間よりね」
「ずっと立派ね」
「あの連中なんてな」
 怒った顔でだ、洋介は言った。
「自分達の子供が産まれたら」
「もうその瞬間にね」
「ふわりをどうでもよくなって」
「全く相手にしなくなって」
「もういらない、だったからな」
「保健所にポイ、ね」
「ふわりはおもちゃでも大事にするんだぞ」 
 このことを言うのだった。
「そうするんだぞ」
「けれどあの人達は」
「そんなことしないでな」
 一切、というのだ。
「そしてな」
「ふわりを捨てたわね」
「命あるのにな」
「保健所だからもう殺処分になってもいいね」
「命を何だと思ってるんだ」
 話せば話す程怒りが増していた、その怒りのまま言葉を続けた。
「ふわりより遥かに酷いな」
「あの人達にふわりは勿体なかったのね」
「そうだよな、それで親父が帰ってきたら」
 洋介は母に話を変えた。
「その時は」
「ええ、お父さんによね」
「あそこの旦那の職場の人から証拠貰ってきたから」
「やっぱり上の娘ほったらかしにしてるのね」
「その証拠貰ったから」
「もう見たの?あんたは」
「見たよ、俺そういうのはわからないけれどな」
 それでもとだ、洋介は母に答えた。
「育児放棄の法律のこととか。けれどまだ一歳の子供をほったらかしにしてることはな」
「わかるのね」
「床ずれあっておむつも替えてなくて身体も汚れていたよ」
「写真でもわかるのね」
「部屋も掃除してなくてな」
「ミルクあげてるわよね」
「あまりな感じだったな」
 写真を見ると、とだ。洋介は母に答えた。
「痩せてたから」
「それは危ないわね」
「だから旦那さんの会社の人に急げって言われたよ」
「死にかねないから」
「下手したら」
「そう、もう上の娘には飽きたから」
「別のおもちゃが手に入ったからな」
 それでというのだ。
「下の娘が」
「だからね、じゃあ」
「ああ、親父に写真渡すな」
 ふわりを見ながら話した、ふわりは今も熊のぬいぐるみのおもちゃと遊んでいた。そこで玄関から父の文太の帰ったぞという声が聞こえて来た。


ペットショップにいた時から   完


                   2021・9・24 
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