東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.
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招かれし者(松上敏久)
幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble
雪合戦のあと、流石に疲れたので4人はしばらく岸辺に寝転がって休んでいた。
敏久「さて!充分休んだことだし、これからどうしようかーーーん?」
大妖精「どうかしました?」
敏久「なあ、何か聞こえてこないか?」
耳を澄ますと、確かに風の音に混ざって音楽のようなものが幽かに聞こえてくる。
ルーミア「本当だ。ちょっと行ってみようよ」
敏久「ん、そうだな」
ー
ーー
ーーー
音がした方向に行くと古びた洋館があった。中から合奏曲のような音楽が聞こえてくる。
敏久(やっぱりか…。)
敏久はすでに演奏者の名前を知っていたが、あえて他の3人に尋ねた。
敏久「なあ、この館には誰が住んでいるんだ?」
大妖精&ルーミア「「わかんない(です)」」
だらず「最強のあたいが教えてあげる!リバーウォーク北九州よ!」
敏久「プリズムリバー三姉妹な」
ちなみに「リバーウォーク北九州」とは福岡県北九州市にある大型複合商業施設の名称である。
大妖精「思い出しました!何回か演奏を聴いたことがあります。ここに住んでいたとは…」
ルーミア「へー、そーなのかー」
敏久「まあなんだ、せっかく来たことだし見学させてもらうか?」
大妖精「そうですね」
4人は建物の中に入っていった。
ー
ーー
ーーー
洋館は2階建てで意外と広く、まるで迎賓館のような洒落た建物だった。
1階部分の中央にあるホールでは、これまた妙な帽子を被った3人の少女が楽器を演奏していた。
金髪で黒を基調とした服を着た少女はバイオリンを、薄水色に髪を染め薄桃色を基調とした服を着た少女はトランペットを、茶髪で赤を基調とした服を着た少女はキーボードをそれぞれ演奏していた。
まだこちらには気づいていない。
しばらくして金髪の少女が休憩を告げると他の2人はどこかへ行ってしまった。
大妖精「あの、ちょっといいですか?」
大妖精が声をかける。ようやく金髪の少女はこちらに気づいた。
?「あら、貴女たちは…」
大妖精「突然お邪魔してすみません。湖で遊んでいたら音楽が聞こえてきたもので…」
?「別に構わないわ。…そちらの御仁は?」
敏久「松上敏久、外界人だ。よろしくな、ルナサ・プリズムリバー」
ルナサ「よろしく…って、なんで私の名前を知っているのよ」
敏久「カクカクシカジカ四角いムーヴ、と言うわけだ」
ルナサ「(四角いムーヴ?)……へえ、それはすごいわね」
ルナサはいつも暗いため、なかなか会話が盛り上がらない。
ちなみに彼女の演奏はソロで聴くと鬱になる。精神力が弱い人だと死に至ることもあるそうだ。
そこへさっきの2人が戻ってきた。
薄水色の髪の少女「姉さん、お茶が入りましたよ……って、お客さんですか?」
ルナサ「ええ、彼は外界人の松上敏久さん。私たちのことも知っているみたいよ」
茶髪の少女「へえー、珍しいこともあるもんだね」
メルラン「いちおう自己紹介しておきますね。私はプリズムリバー家の次女、メルランです」
薄水色の髪の少女ーーーメルランが言った。
リリカ「同じく三女のリリカだよ。よろしくね!」
茶髪の少女ーーーリリカが言った。
敏久「松上敏久だ。よろしくな」
〜〜〜〜
それから7人で色々な話しをした。
敏久「前に『ルナサとメルランの演奏をソロで聴くとヤバいことが起きる』って聞いたんだが、そんなにヤバいのか?」
メルラン「はい、前に里でソロライブをやったら観客全員が躁状態になっちゃって…。そのあとが色々と大変でした」
メルランの演奏するトランペットの音を聴くと異常なほどに気分が高揚する。長時間聴き続けていると心が壊れてしまうことがあるらしい。
リリカ「この3人のなかでまともに聴いていられるのは私の演奏だけだよ!」
リリカのキーボードは「この世にない音」を奏でるため、ソロで長時間聴いたとしても体に害を及ぼすことはない。
さらに合奏でもリリカのキーボードで相殺されるので、鬱や躁になることなく長時間にわたって演奏を聴くことができるのだ。
ルナサ「さて、そろそろ始めましょうか」
ルナサが立ち上がるのに合わせてあとの2人も立ち上がった。
敏久「練習風景を見学させてもらってもいいか?」
ルナサ「構わないわ。ちなみにいま練習している曲は“幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble”という私たちのテーマ曲よ」
ルーミア「そーなのかー」
『ワン、ツー、スリー』というルナサの掛け声で演奏が始まる。
敏久たちはそれを静かに聴いていた。
ー
ーー
ーーー
敏久「いやいや、ホンマにすごかったわあ!」
ルーミア「うん。惚れ惚れしちゃったね」
大妖精「流石はプロの演奏家ですね」
だらず「生協のあたいでさえすごいと感じたわ…。あの幽霊トリオ、なかなかやるわね!」
帰り道、各々で感想を言い合う。
相変わらずだらずが言い間違えているような気がせんでもないが、ここはスルーすることにしよう。
敏久「『いつでも来て下さいね』と言われたことだし、いつかまた行こうや」
大妖精「そうですね」
時刻は間もなく17時になる。太陽はすでに西に沈んでいるため辺りは薄暗く、空気が冷たかった。
霧の湖でだらずや大妖精と別れ、再び博麗神社の近くまでルーミアに送ってもらった。
ルーミア「それじゃあ、またねー!」
敏久「おう、今日は色々ありがとな」
ーーー闇を展開しながらルーミアがどこかに去っていく。
早く帰って今日の出来事を霊夢に話して聞かそうと、敏久は石段を一気に駈け上がっていった。
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