東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.
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招かれし者(松上敏久)
終わりの始まり
鳥取市郊外にある某大学の敷地内。
冬真っ只中の12月中旬。19時過ぎともあってすでに外は暗い。むしろ大学の向かいにある100円ショップやスーパーの照明が眩しいほどだ。
あたりは誰もおらず、ただしんしんと雪が降り積もる音のみが聞こえる。
やがて大学の建物から誰か出てきた。
?「ふう、ようやく今年最後の会議が終わったー!」
グッと伸びをしたその青年は松上敏久といった。どこにでもいるような大学生である。
敏久「それにしても寒いよなあ。雪もようけ(たくさん)降り積もっとるし…。こんな日は早く帰って東方をやるに限る!よし、早く帰ろう!」
彼はある同人ゲームにハマっていた。『東方』とはその通称名である。
敏久が走り出した瞬間、後ろから誰かが呼び止めた。
?「おーい、今ちょっといいか?」
敏久「あっ、石嵜さん!」
石嵜は敏久が所属する大学祭実行委員会の委員長だ。
石嵜「松上、来年度の予算計画書はもう出したよな?」
敏久「いえ、まだです」
石嵜「おい、締め切りは明後日だぜ?明日には吉田に出さんと間に合わなくなるぞ」
敏久「すみません…」
吉田とは同じく大学祭実行委員会の先輩で会計監査役をしている人の名前だ。
敏久はもともと計画通りに物事を進めるのが苦手で、これまで何度も委員会の先輩に注意されたり怒られたりしていた。
石嵜「いいか、明日までにきちんとやっとけよ?明日の夜、吉田に出したかどうか電話で確認するからな。……それじゃ、お疲れさん」
そう言い残して石嵜は帰っていった。
姿が見えなくなったのを確認してから敏久は小さく呟いた。
敏久「これだから現実世界は嫌なんだよなあ。あーあ、本当に幻想郷に行けたらいいのに…」
はあ、と深い息をついてから敏久は夜の闇へと消えていった。
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二人は気づいていなかったが、先ほどのやり取りを上空から見ていたモノがいた。
?「ふふふ、それなら叶えてあげましょうか…。ちょうど退屈していたことだったしね」
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敏久は帰路を急いでいた。街灯は節電のため消灯してあり、周りはほぼ真っ暗である。
ゆえに彼は気づいていなかった。道端にあるマンホールの蓋がなぜか外れていたことに・・・。
敏久「げげっ、やな感じいいぃぃぃぃぃぃぃぃ………!」
ーーー敏久は見事に足を踏み外し、そのままマンホールの中へ吸い込まれていった。
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