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イベリス

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第二十一話 勉学もその十一

「いいね」
「人間としてですか」
「うん、それを知っていたら」
「底まで落ちないですか」
「そうなるからね」 
 そこまで悪くならないというのだ。
「恥を知るんだ」
「そうします」 
 咲も答えた、それで放課後は部活に出てそれが終わるとアルバイトもないので数学の予習と復習をしたが。
 父が帰るとウイスキーをロックで飲んでいる父の前に来て恥について尋ねた。
「恥って恥ずかしいってことよね」
「ああ、何かをしてな」
 父は娘に飲みつつ答えた。
「悪いことをしたりして」
「恥ずかしいって思うことね」
「それでこうしたことをしたら駄目とかな」
「思うことなの」
「それが恥なんだよ」
「そうなのね、実はね」
 ここで父に学校でクラスメイトや先生と話したことを話した、すると父は頷いてそのうえで咲に言った。
「お前今日のことは財産になるぞ」
「人生のよね」
「そうだ、恥について教えてもらったんだからな」
 それでというのだ。
「お父さんも数学のことよりもな」
「恥のことを知れて」
「よかったと思うぞ」
「そうなのね、やっぱり」
「現実にもいるしな」
「恥知らずの人って」
「文学でもいるぞ」
 そちらの世界でもというのだ。
「罪と罰って小説走ってるな」
「ドフトエフスキー?読んだことないけれど」
「完全な翻訳版は読むと重いぞ」
「そうなの」
「長いしな、暗い作品だしな」
「それでなのね」
「重いんだ、それでその作品にな」
 罪と罰にというのだ。
「当時のロシア社会で成功していてもな」
「恥知らずな人が出ているの」
「名前は何だったか」
 父はここで首を傾げさせて言った。
「忘れたがそんな登場人物もいてな、読んでいて薄汚さを感じた」
「薄汚いの」
「醜かった、恥を知らないとな」
「そんな人にもなるのね」
「そうだ、だから咲は今日な」
「薄汚い醜い人にならない為に必要なことを教えてもらったのね」
「よかったな」 
 今度は微笑んで言った。
「今日のことは忘れるなよ」
「わかったわ」
「それでな」
 父はウイスキーを飲みながら言った、つまみにチョコレートを一粒一粒食べている。そうしながら飲んでいるのだ。
「今のお父さんに言ってよかったな」
「酔いが回る前で?」
「これからどんどん酔いが回るからな」
 言いながらも飲んでいる。
「今日はボトル一本空けるぞ」
「飲み過ぎじゃないの?」
「今日は飲みたいんだ、どうもお父さん本当に転勤になりそうだ」
「ふうん、そうなの」
「都内でも神奈川でもないかも知れない」
「千葉じゃないわよね」
「埼玉かも知れないんだ」
「すぐそこでしょ」
「家がある場所からというのだ。
「歩いてもいけるでしょ」
「東京と埼玉は違うんだ」
 父はそこは厳密に一線を引いた。 
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