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ラブレターを奪われて

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第三章

「沖って聞いてまさかと思ったけれど」
「やっぱりここ先輩のお家でしたか」
「ええ、名字でわかったわね」
「お家がご近所と聞いていましたけれど」
「同じ高校でね」
「はい、ですが」
「ええ、猫治郎が咥えていたものね」
 理恵はその猫を両手で抱いたまま笑顔で言ってきた。
 そしてだ、その咥えていたものを出してさらに言った。
「これね」
「あの、それは」
「見ればわかるわ、ラブレターね」
「はい、実は」
「私宛てよね」
「そうです」
 それはとだ、徹は素直に答えた。
「もう一度と思いまして」
「そうよね」
「読んでくれますか」
「そうしていいかしら」
「お願いします」
「わかったわ」 
 理恵は頷いてだった。
 封を開いて読んだ、そして読み終わってから徹に語った。
「一度はお断りしたけれど」
「校舎裏ではですね」
「それからもずっと私見てたよね」
「先輩が好きなんで」
「その気持ちがあって」
「それで、です」
 まさにというのだ。
「どうしてもと思って」
「わかってたわ」
 理恵は笑顔で応えた。
「あれからもずっと私を見ていてくれたことは」
「そうだったんですか」
「凄く熱い視線だったから。それにずっとそこまで想われていて」
 ここでだった、理恵は。
 顔を赤くさせた、そうして彼に話した。
「何も思わないなんてどうかしてるわ」
「どうかですか」
「熱烈に好きって想われたら」
 徹の様にだ。
「自分もってなるわ」
「それって」
「ええ、私でよかったら」
 理恵は徹に赤くなった顔で答えた。
「宜しくね」
「有り難うございます」
 徹は跳び上がらんばかりになった、そのうえで。
 今も理恵に抱かれている猫を見て言った。
「こいつが先輩に手紙を送ってくれたんですね」
「うちの子なの」
「そうだったんですね」
「雄で猫治郎っていうの」
「ニャア」
 猫は明るく鳴いた、そして。 
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