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イベリス

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第十八話 ゴールデンウィークを前にしてその十

「安心してね」
「そうか、時間は守るか」
「今もなのね」
「そう言えばあの娘昔からそうだったな」
「時間守る娘だったわね」
「約束は守るし」
「それじゃあ時間もね」
 二人で娘の言葉に頷きつつ話した。
「守るのね」
「今もそうだな」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「安心してね」
「よし、じゃあな」
「その時間に待っているわね」
「父さんは仕事次第だけれどな」
「お母さんは明日パート早くに終わるしね」
「パートあったのね、まあそれじゃあね」
 両親の話に頷いてまた言った。
「私も明日アルバイトないし」
「家にいるな」
「学校から帰ったら」
「そうするわ。部活はそんなに長くかからないし」
 漫画研究会、漫画部とも言われるそれはというのだ。
「早く帰るわね」
「それじゃあな」
「愛ちゃん待っていましょう」
「それじゃあね、あとチーズあるのね」
 咲はつまみの中のそれを見付けてそちらの話もした。
「そうなのね」
「おつまみの定番だろ」 
 父の返事はあっさりしたものだった。
「チーズは」
「ワインとかには」
「だからな」
「チーズもあるのね」
「だからいつも用意しているしな」
 それでというのだ。
「今回もだ」
「明日パートの帰りにもっと買って来るわね」
 母はこうも言った。
「そうするわ」
「やっぱり飲む方に考えが向いてない?」
「そうかしら」
「というか二人共何だかんだでお姉ちゃん嫌いじゃないのね」
 咲はこのことを察した。
「そうなのね」
「そう言われるとな」
「嫌いじゃないわよ」
 両親もそれはと答えた。
「だって姪だしね」
「赤ちゃんの頃から知ってるしな」
「嫌いかっていうと」
「それは違うな」
「むしろ好きね」
「そうだな」
 こう二人で話した。
「最近確かに派手でどうかと思っていたが」
「別に嫌いじゃないわ」
「そうなのね。だから私の言うことも強く否定しなかったのね」
 愛は外見が派手なだけで真面目で良心的だということをだ。
「そうなのね」
「そうなるな」
「言われるとね」
「そうなのね。じゃあ明日ね」
 咲は両親にモコのおもちゃ、傍に置いたままになっていたそれに気付いて拾いつつ言った。
「お姉ちゃんとね」
「じっくり話してな」
「それで一緒に飲むわよ」
「それじゃあね。あとモコのおもちゃだけれど」 
 熊のぬいぐるみのそれを手にしつつ言った。
「モコが忘れたの?これ普段ケージの中でしょ」
「あっ、お母さんが出したままだったわ」
 母が思い出した様に言ってきた。 
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