なんかポケモンの世界に転生したっぽいんだけど質問ある?
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第8世代式 育成法って すげー!・1
トレーナー登録を済ませた後、俺達は近くのファミレスで休憩しながら真新しい免許証の様なトレーナーカードと、『新人トレーナーのすすめ』という冊子を読んでいた。
「なになに……『ポケモンリーグに参加するには、カントー地方に点在するリーグ公認ジムのジムリーダーに勝利し、ジムバッジを8つ集める必要があります』だってさ」
「『更に、トレーナーランクを上げればリーグ挑戦時に予選免除のシード権を獲得出来ます』……ねぇ。トレーナーランクってなんだ?」
原作だと無かった要素だ。シリーズが進んでオンライン対戦が盛んになった辺りにはランク付けがあったが。
「あ、ここに書いてあるわよ!『トレーナーランクは、各地で開催されているリーグ公認バトル大会で優勝するとランクがあがります。ランクには、ルーキー、モンスターボール、スーパーボール、ハイパーボール、マスターボールの5つのランクがあり、そのランクによってポケモンリーグでの予選免除の回数が変わります』だって!」
「ふ~ん……そもそも、ポケモンリーグって予選とかあんのか?」
「「はぁ!?」」
俺が疑問を口にすると、グリーンとブルーから『何言ってんだコイツ』って顔をされた。だってさ、ゲームだとバッジを集めたらそのまま四天王に挑戦して、チャンピオンに勝てば殿堂入りだったんだもの。
「いいか?ポケモンリーグってのは全国各地から集まったトレーナーによるトーナメント方式なんだぞ?公認ジムのジムリーダーや、四天王って呼ばれてる前回大会のトーナメントのベスト4進出者も含めて、全員がチャンピオンを目指して凌ぎを削る大会なんだ」
「勿論、ジムリーダーや四天王の皆さんはトレーナーランクが高いからシードでトーナメントの後半からの参加だけどね。全く、大会のルールも知らないでよくもまぁチャンピオンになる、なんてほざいたわね」
「う、しょうがないだろ、知らなかったんだから……しかしトーナメントかぁ」
多少面倒くさいぞ?四天王の手持ちなら何百、何千回と闘ったから知ってるが、他の連中も混ざってトーナメントとは。
「っていうか、さっきからレッドは黙ったままなんだが」
「ん?」
コップを口に当てたまま、レッドさんが首を傾げている。しかしその目は新人トレーナーのすすめに釘付けで、どうやら読むのに夢中になっていたらしい。
「兎に角だ。こっからは俺達皆ライバルって訳だ、どうだ?景気付けに初バトルと行こうぜ?」
グリーンが外の公園を指差す。そこにはドッジボールのフィールドのような一角があり、白線で場所が区切られていた。市街地でのバトルは出来る場所が限られており、公園等にはバトルスペースが存在するらしい。その辺はやっぱりポケモンの世界だな、と思う。
「あ~……俺パス」
だが、俺はそのグリーンの提案を断った。
ライバルとの初バトル。ポケモンシリーズでは最初の作品からあるお馴染みのイベントだ。もらいたてのポケモンで初めてのバトルをする、ドキドキワクワクのイベントだ。だが、俺は20年以上それをやって来ているもんだから、正直な所飽きているんだよ。勿論、リアルなポケモンバトルは未経験だが、それでも何となく展開が読めてしまうからな。それよりも早く、育成に取り掛かりたい思いの方が強いんだよ。試したい事もあるし。
「俺達もうライバルなんだろ?俺はなるべくお前らに手の内を明かしたくないんでね」
「手の内ったって……アンタもアタシ達もポケモン1匹しか持ってないじゃない!」
「そうだぜ、別に今なら試しにバトルするくらい……」
「ダメ、キョウヘイには、キョウヘイのやり方がある」
なおも食い下がるグリーンとブルーを止めたのは、普段物静かなレッドさんだった。流石レッドさんやでぇ。
「じゃあな、あばよ!」
ファミレスの伝票を抜き取り、そのままレジへ向かう。何しろスマホロトムの中には転生前に遊んでいたデータの持ち物や所持金がそのまま入っているのを確認している。だから今の手持ちの小遣いを使いきっても、痛くも痒くも無いのだ。これくらいは払ってやろう、歳上として。
そうして俺は3人と別れた後、トキワシティの郊外の草原に来ていた。遠くの方に巨大な建物が見えるが、あれがポケモンリーグへの入口のゲートだろう。ゲームでもあった。
「おい、ロトム」
「なんだヨ?」
周りに誰も居ないのを確認してから、ポケットに入れっぱなしだったスマホロトムに話しかける。
「確認するが、スマホの中に入ってるデータをお前はそのまま引き出せるんだな?」
「あぁ、アルセウス様の計らいでナ。お前が死ぬ前に所持していたポケモン・アイテム・金はオレサマが全部預かってて、いつでも引き出せるゼ?」
ケケケ、と笑いながらどや顔を見せるロトム。だが、そのどや顔を許せる位には素晴らしい能力だ。
「そうか……ククク、なら俺はとんでもないチートを手に入れたも同然じゃねぇか!」
「お前、すんごい悪い顔してるゾ……?」
「よし、早速……出てこい、ワニノコ!」
「ワニャ~っ!」
モンスターボールを放り投げると、ポン!という軽い音と共に水色の二足歩行のワニが出てきた。外が嬉しいのか、ピョンピョン飛び跳ねてやがる。元気いいなぁ。
「よし、ワニノコ。こっちこい」
「ワニィ?」
「俺はキョウヘイ。今日から俺がお前の仲間だ、よろしくな」
「ワニィ!」
「で、だ。俺は世界最強のポケモントレーナーを目指す。お前にもその高みを目指して欲しいし、お前にはその才能がある。どうだ?俺と最強を目指して見るか?」
俺の言葉を理解しているのか、目付きが鋭くなり、フンスと鼻息を荒く吐き出した。
「よし、早速だが……ロトム、この道具を引き出してくれ」
「おいおい、これ全部カ?」
「あぁ、この世界には無い最新の育成法って奴を見せてやるぜ」
誰かが言っていた。『ポケモンは学問である』と。決められた法則に則ってステータスや習得できる技が決められ、世界中のトレーナー達はその中で自分の個性を見出だし、自分のポケモンを自分の考える最強の相棒に育て上げる。その蓄積は俺の中にもある。
「さぁて、まずは努力値からだ。ワニノコ、この薬を全部飲むんだ」
「ワニっ!?」
ワニノコはマジで?って顔をしているが、マジもマジ。大真面目だ。ポケモンのステータスを決めるのは主に4つの要素。《種族値》・《個体値》・《性格》・《努力値》の4つだ。種族値ってのは、そのポケモンが動物としてどういう生き物かを表している。まぁ生物学的特徴って奴だ。難しく言うと。個体値はそのポケモンそれぞれの才能、持って生まれたポテンシャルだ。性格はその種類によって上がりやすい能力と上がりにくい能力が発生する。得意不得意と言い替えても良いだろう。そして努力値。これはトレーナーがポケモンをどのように鍛え上げたかを示す、言わば育成方針だ。得意分野を伸ばすのか、それとも苦手を潰すのか。それはトレーナー次第って訳だ。そこで、俺の貰ったワニノコのステータスを見てみよう。
《ワニノコ》
Lv:5
性格:ひかえめ
特性:ちからずく
固体値:6v
ってな感じだ。ポケモン経験者からするとズルい!と文句言われそうなレベルだ。いや~、ホントこんなの貰っていいんだろうか。あ、個体値とかのスキャンはスマホロトムがやってくれました。マジ有能。んで、今は努力値を上げる為にワニノコにドーピング中。ド〇クエの力の種みたいに、ポケモンにもステータスアップの道具があるんだよね。って言っても具体的に数値が上がるとかじゃなく、各ステータスの努力値(最近は基礎ポイントって呼ばれてる)を上げて、一定の数値に達するとそのステータスが上がるって仕組み。昔はこれマスクデータだったから、努力値振るのも大変だったよなぁ……(しみじみ)。でも最近は、努力値が可視化されて凄く楽になりました、ありがとうゲーフリ。
「ワ、ワニィ……」
思い出に浸ってたら、ワニノコがドーピング用の薬を全部飲み終えたらしい。お腹がぽっこり膨れて、今にも破裂しそうだ。
「よしよし、よく頑張ったなワニノコ。ご褒美にお菓子をやろう」
「ワニャっ!?」
お菓子と聞いてすぐ元気になるワニノコ。こいつ、意外と食いしん坊なのか?
「ほ~ら、甘くて美味しい美味しいアメちゃんだぞ~?」
あ~ん、と大きく口を開けたワニノコの口の中にポイっとアメを放り込む。ボリボリと噛み砕いて飲み込んだ瞬間、ワニノコの身体がブルブルと震え出した。
俺がただのアメちゃん食わせる訳ねぇだろぉ?(ニヤリ)
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