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犬と曾祖母のお陰で

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第一章

                犬と曾祖母のお陰で
 岩手県の田舎のことである、時代は昭和の終わり頃だ。
 この場所では家の境といえば山単位でありどの家も幾つか山を持っていた、田舎だが土地と田畑は多く持っていて林業や狩りそして田畑で暮らしていた。
 それは原家も同じでこの日も一家で畑仕事に精を出していたが。
 一家の番犬達のうちの一匹雌のハナもう十二歳になっていて犬としては立派な高齢の彼女がだった。
 家の山の一つの方を見てしきりに鳴いた。その山は一家が丁度畑仕事をしている畑のすぐ傍の山だった。
「ワンワンワン!」
「ハナどうしたんだ?」
「急に山の方に向かって鳴いて」
「山に何かいるの?」
「熊でも出たか?」 
 一家は怪訝な顔になった、それでだった。
 彼等は山に行って熊がいれば退治しようとなった、それで一家の祖父と父が猟銃を持ってハナも他の犬達も連れてだった。
 そのうえで山に入った、すると。
「ワンワンワン!」
「ワンワン!」
「ワンワンワン!」
「ワン!」
 犬達が一斉にある場所まで駆けて行った、一家はすぐにそこに行くと。
 黒いビニール袋があった、一家はそのビニール袋を慎重に空けた、すると。
 そこには生まれたばかりと思われる赤子がいた、女の子でまだ目も開いておらずただ泣くだけだった。その赤子を見て一家は仰天した。
「子供!?」
「赤ちゃんじゃないか」
「何でこんなところにいるんだ」
「捨て子か!?」
「まさか」
「すぐに助けようよ」
 一家の長男まだ六歳の弘之が言った、黒髪で子供の中では背の高い男の子だ。
「このままだと危ないよ」
「あ、ああそうだな」
「驚いてばかりもいられないわ」
「赤ちゃんはつきっきりじゃないと」
「まだ泣いてるし」
「生きてるから」
「すぐに家に連れて帰ろう」
 一家は長男の言葉に冷静になった、それでだった。
 すぐに赤子を連れて山を下りた、そのうえで家で家事をしていた曽祖父と曾祖母に事情を話すとだった。
 曽祖父はこう言った。
「まずはその子を病院に連れて行くんだ」
「生まれたばかりだから」
「それでか」
「町の病院まで」
「連れて行って」
「そして診てもらえ、そしてな」
 曽祖父はさらに言った。
「その子の親のことを探そう」
「そうしようか」
「とりあえずは落ち着いて」
「まずは病院に」
「そうするんだ」
 曽祖父は一家の長老として言った、一家は彼の三人の息子と彼等の孫達そして曾孫達からなってかなりの数で何十人もいて幾つかの家に分かれて住んでいたが。
 彼は本家にいた、そして本家の曾孫が博之なのだ。
 すぐに赤子は病院に連れて行かれた、すると幸い命に別状はなく暫く入院することになったが特に心配はいらなかった。
 そのうえで赤子の母親のこともわかったが。
「十七で子供を産んでか」
「父親はわからなくて」
「それでどうしようもなくなって山に捨てるなんて」
「町にも碌でもない奴がいるな」
 母親のことがわかった、母親は素行が非常に悪く高校を中退してぶらぶらしつつ複数の男と付き合って子供を産んだ。 
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