英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第135話
~カレイジャス・ブリッジ~
「ふふ、よく戻られました。再びこうして貴方とブリッジで話せること、嬉しく思いますよ。」
「本当にご無事でよかったです。」
カレイジャスに乗り込んだ後オリヴァルト皇子とセドリックは順番にアルゼイド子爵と握手して改めて再会の挨拶をした。
「フフ……こちらのセリフです。大変なご心配とご迷惑をおかけした。殿下達の御活躍に皇太子殿下の帰還、仮面越しに眩しく映ったものです。お互いに多くのものを喪い――――――そして得たようですな。」
「はい――――本当に。ご息女や彼らを見ていると。」
アルゼイド子爵の言葉に頷いたオリヴァルト皇子はセドリックやアルゼイド子爵と共にアリサ達へと視線を向けた。
「……面映い限りです。」
「トヴァルも知ったら喜ぶだろうね。」
「ええ、そうでしょうね……」
オリヴァルト皇子の言葉にラウラは謙遜した様子で答え、フィーの推測を聞いたサラは静かな表情で頷き
「えっと……リィン君達やエステルさん達との戦闘によるダメージもそうですが、”呪い”による後遺症とかは大丈夫なんでしょうか?」
「ああ。フェミリンス殿と言ったか。彼女がかけてくれた治癒術で傷は完治しているし、後遺症もないから心配無用だ。」
「ふふ、フェミリンスさんはアイドスさんやサティアさんと違って、治癒術は専門分野じゃないのに、今まで”呪い”によって蝕まれた子爵閣下をすぐに復帰させるなんてさすが”女神”ですよね。」
「まあ、何だかんだ言っても彼女は”女神”なんだから、そのくらいは朝飯前でしょうね。」
トワの質問に答えたアルゼイド子爵の話を聞いたアネラスとシェラザードは苦笑していた。
「それにしても、”空の女神”自身が編み出した”神術”と”神技”を”空の女神”の子孫であるエステルさんが”空の女神”自身から受け継いでいたとは……いや~、エステルさんが子爵閣下を”呪い”から解放した場面に立ち会えなかったのは本当に残念でしたね。」
「はい。それに教会としては是非とも”空の女神”の”神術”と”神技”を受け継いでいる上”空の女神”の子孫でもあられるエステルさんを”巫女”――――――いえ、”聖女”として迎えて教皇猊下と共に教会を導いて欲しいのですが………」
「エステルが”巫女”や”聖女”って……一番ありえない組み合わせだろ。」
「師匠やティナさんみたいな”おしとやかさ”や”清楚”とはかけ離れているものね。」
「あはは……シスター姿のエステルお姉ちゃんも見てみたいですけど、やっぱりエステルお姉ちゃんは”遊撃士”が似合っていますものね。」
若干残念そうな表情を浮かべているトマスの話に同意したロジーヌは複雑そうな表情で呟き、ロジーヌが呟いた言葉を聞いたアガットとシェラザードは呆れた表情で呟き、ティータは苦笑していた。
「しかし、今回はエステルさん達の助力がなかったら冗談抜きで不味かったな……」
「ああ……”魔神”のベルフェゴールと多くのアンデッド達を操る”死霊使い(ネクロマンサー)”のアンリエットの守りに、子爵閣下を蝕んでいた”呪い”……どれもオレ達の力だけでは超えられなかった可能性は高かったな。」
「つーか、リタにアンリエットだったか?アンタ達教会の関係者達はあの二人がシュバルツァー達に協力している事に関して見逃してよかったのかよ?アンタ達は”悪霊退散”とかもやっているんじゃねぇのか?」
「ちょ、ちょっと、アッシュ……」
疲れた表情で呟いたマキアスの言葉にガイウスは頷き、アッシュはトマスとロジーヌに視線を向けて問いかけ、アッシュの問いかけを聞いたエリオットは冷や汗をかいた。
「それは………」
「―――――少なくてもリタさんに関しては”冥き途”――――――死者達の魂を”冥界”へと導く役割を務めている事で”上”の方から”手出し無用”のお触れが出ていますし、アンリエットさんは………死霊である事に加えて死霊使い(ネクロマンサー)である事を考えると正直、”外法認定”されてもおかしくないのですが、彼女はアイドス様――――――異世界の女神の”眷属”である事に加えてリィン君の使い魔を務めている事でメンフィル帝国の所属でもありますから、星杯騎士団――――――いえ、七耀教会が彼女の抹殺の為に動く事はないでしょう。もし私達教会の関係者がアンリエットさんに危害を加えようとすれば、アイドス様やリィン君達が阻止するでしょうし、最悪はメンフィル帝国自体がその件を口実にして七耀教会に”戦争”を仕掛けてきてもおかしくありませんからね。幾ら教会がメンフィル帝国を危険視しているとはいえ、結社すらも滅ぼすような国相手に自ら藪をつついて蛇を出すような事はしませんよ。」
一方ロジーヌは複雑そうな表情で答えを濁している中トマスは静かな表情で呟いた後疲れた表情で溜息を吐いた。
「そのアンリエットという幽霊の関係者である方々が彼女を七耀教会の刺客から守る事に関しては理解できるのですが……メンフィル帝国は一個人の為にそこまでするのでしょうか?」
「常識で考えればありえないんだが、メンフィルの場合はエステルという”前例”があるから、教会がそんな風に考えてもおかしくないかもしれんな。」
「え……という事はまさか、エステルさんもかつて教会から”外法認定”されかけて、それを知ったメンフィル帝国が教会に”戦争”を仕掛ける事を脅迫して、エステルさんを守ったんですか……!?」
「ええ、我々も後で知ったのですがエステル君はかつて”リベールの異変”で七の至宝の一つである”空の至宝”――――――”輝く環”を破壊した事を七耀教会に問題視されて、それを知ったメンフィル帝国がリベール王国に協力を呼び掛けてリベール王国と共に教会に圧力をかけて彼女を守った事があるのです。」
「ハアッ!?」
「ええっ!?エ、エステルさんが”空の至宝”を!?幾ら”空の女神”の血族とはいえ、一体どうやって”人の身”でありながら”至宝”を………」
エレインの疑問に答えたジンの話を聞いてある事に気づいたセドリックの推測に答えたミュラーの話を聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中セリーヌは困惑の表情で声を上げ、エマは信じられない表情で疑問を口にした。そして当時を知る人物達――――――リベル=アークに乗り込んで最後の決戦にも参加したオリヴァルト皇子達が当時の説明をした。
「え、”英雄王”と一緒に”至宝”を壊したとはいえ、”ブレイサーオブブレイサー”自身も今まで使い魔にした人達のお陰で宿ったその”嵐の剣神”の”神殺し”としての霊力やその時点で”神剣”を持っていたとか無茶苦茶だよ~!」
「さすがは色々な意味で”非常識”な空の女神の子孫だけはあって、血は争えんな。」
「つーか、俺達がクロスベルで会ったセリカとかいう異世界の”神殺し”だったか?そいつとかつて契約をしていた使い魔連中とエステルが契約した事で混ざったその”神殺し”としての霊力だけで”至宝”を破壊するなんて事ができたんだから、セリカが”本気”で力を振るえば、ヴァリマールやオルディーネ達――――――”騎神”も”瞬殺”されるだろうから、今回の件――――――”巨イナル黄昏”の”元凶”である”黒の騎神”も”瞬殺”できるんじゃねぇのか?」
「間違いなくできるだろうねぇ。改めてメンフィルを含めたディル=リフィーナ勢の戦闘能力のインフレの酷さを思い知ったねぇ。」
オリヴァルト皇子達からかつての出来事――――――リベールの異変でエステルが至宝を破壊した時の話を聞いたミリアムは疲れた表情で声を上げ、ユーシスは呆れた表情で呟き、クロウとアンゼリカはそれぞれ疲れた表情で呟いた。
「まあ、そういう訳でエステルさんは至宝を破壊した件で教会で問題視されたのですが、メンフィルとリベールの圧力、そしてエステルさんが契約している異種族の中には我々聖職者達にとっては”神聖な存在”もいる事から、彼女が”至宝”を破壊した件についてはお咎めなしになったのです。」
「トマス教官達にとっては”神聖な存在”、ですか?その存在とは一体……」
「恐らくですが、エステル様がアンリエット様の相手をさせる為に呼び出した”ニル”と呼ばれた天使族の方なのではないでしょうか?」
「あ……ッ!」
「そういえばあの時エステル殿はアンリエットの対策の為に狐のような姿をした存在と天使族を呼び出して相手をさせていたな……」
トマスの説明を聞いてある事が気になったアリサの疑問に答えたシャロンの推測を聞いたエリオットは声を上げ、ラウラは静かな表情で呟いた。」
「ちなみにだけどニルさんもそうだけど、ミントちゃんも教会の人達にとっては神聖な存在なんだそうだよ。」
「え……ミントさんが?という事は彼女も何らかの異種族なのでしょうか……?」
「ああ。彼女は”竜族”なのさ。」
「なっ!?ミ、ミントさんが”竜”!?」
「もしかしてセレーネと同じ種族?」
アネラスの話を聞いて目を丸くしたセドリックの疑問に答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたマキアスは驚きの声を上げ、フィーは首を傾げて推測した。
「いや、ミント君の種族は”真竜”で、セレーネ君の姉君であるツーヤ君の種族は”水竜”と聞いているから、厳密には違うだろう。――――――とはいっても、”人の姿をした竜族”という意味では彼女達は同じ種族になると思うが。」
「”真竜”、ですか………」
「今まで聞いたことがない”竜”ね……そういえば、子爵を”呪い”から解放する時に彼女は時空間を凍結させる魔術を扱って子爵の動きを止めていたけど、もしかしてそれが関係しているのかしら?」
ミュラーの答えを聞いたエマが考え込んでいる中セリーヌは真剣な表情で自身の疑問と推測を口にした。
「え、えとえと……………………」
「――――――悪いが、ミントの正体関連について俺達は話す事はできねぇから、それ以上追及しても無駄だぜ。」
「あの娘の正体関連はある意味、エステルが”空の女神の子孫”である事よりもとんでもない事実だから、ミント本人もそうだけどエステル達の許可も無しに話す事はできないわね。」
「そうだな………ミントの正体がもし世間に知れ渡る事があれば、ミントを巡って”戦争”が勃発しかねないからな………」
セリーヌの疑問にティータが気まずそうな表情で答えを濁している中アガットとシェラザードは静かな表情で答え、シェラザードの言葉に頷いたジンは複雑そうな表情を浮かべた。
「ハアッ!?ミントってそんなにとんでもない存在なんですか……!?」
「あの”空の女神の子孫”というよりもとてつもない事実で、それも世間に知れ渡れば彼女個人を巡って”戦争”が勃発しかねる程の存在とは一体……」
「そんなこと言われたら逆にもっと気になるじゃないか~!」
(”時を凍結させる魔術”…………――――――!まさかとは思うけど”真竜”という存在は”時を自由自在に操る事ができる”のじゃないかしら?)
シェラザードとジンの話を聞いたサラは困惑の表情で声を上げ、エレインは信じられない表情で呟き、ミリアムは文句を言い、ミントについて考え込んである事に気づいたセリーヌは目を細めた。
「話を戻すが……エステル殿という例を考えると、エステル殿のようにメンフィル帝国の後ろ盾がある上其方達教会の関係者達にとっては”神聖な存在”も傍にいるリィンもそうだが、リィンの”身内”が其方達教会にとっては看過できない存在になろうともそう簡単に危害を加えるといった事等するつもりは毛頭ないという事か。」
「ええ。そもそも今のリィン君の周りはエステルさんの時以上に我々教会にとっては”神聖な存在”が傍にいるのですから、メンフィル帝国の件を抜きにしてもそう簡単に手出しする事なんてできませんよ。」
「た、確かに言われてみれば、今のリィン君の周りにはエステルちゃんの時以上に教会の人達にとっては”神聖な存在”に該当する種族たちがたくさんいますよね……?」
「ハハ、ユリーシャ君にレジーニア君、そしてルシエル君率いる天使部隊と”天使族”だけでもエステル君と比べても桁違いだからねぇ。」
「アハハ……しかもミントちゃんとフェミリンスさんがいるエステルお姉ちゃんのように、”竜族”はセレーネちゃん、”女神様”はアイドスさんがリィンさんの傍にいますものね……」
アルゼイド子爵の指摘に答えた後苦笑したトマスの話を聞いたアネラスは冷や汗をかき、オリヴァルト皇子とティータは苦笑していた。
「そういえばアンリエット――――――死霊の件で思い出したけど、もう一人の死霊――――――リタだったかしら?彼女が去り際に残した言葉から察するにこの戦争もそろそろ”決着”の時が近づいているのはほぼ間違いないでしょうね。」
「そうね……今回の件で連合はクロイツェン州、ノルティア州、ラマール州、サザ―ラント州の四州の内の三州を支配下に置いた事で、現エレボニア帝国政府や正規軍は相当追い詰められている状況なんでしょうね……」
「帝国の”屋台骨”だったザクセン鉄鉱山に加えてRF(ラインフォルトグループ)の大規模な軍需工場が集中しているノルティア州に加えて帝国の海運を一手に担っていたラマール州が連合の支配下に置かれた事は政府や正規軍にとっては相当不味い状況に陥っているはずだよ。」
「ええ……戦車や機甲兵、銃等の兵器や武器の量産もそうだけど、戦争に必要な資金や物資の入手も厳しくなっているはずよ。」
「しかも東部に関しては帝都の近郊都市である”トリスタ”まで連合の支配下に置かれた事で、既に帝都は東部から喉元に刃を突き付けられているようなものだな。」
ある事を思い出したセリーヌの指摘にエマは複雑そうな表情で頷き、アンゼリカとサラは静かな表情で推測し、ミュラーは複雑そうな表情で呟いた。
「普通、そこまで劣勢の状況に追い込まれたら、国を守る為にもエレボニア帝国がメンフィル・クロスベル連合に対して和睦を申し出ると思うのですが……」
「―――――残念ながら宰相殿の性格もそうだが、”巨イナル黄昏”の”呪い”による国民達への影響も考えると、私達が心から望んでいるその展開になる事は万が一にもならないだろうね。」
「はい………もはや今のエレボニア帝国は僕達アルノール皇家の手から完全に離れてしまっていると言っても過言ではない状況ですからね……」
「皇太子殿下……」
複雑そうな表情で呟いたエレインの指摘に対して疲れた表情で答えたオリヴァルト皇子の推測に頷いた後辛そうな表情を浮かべてセドリックをユーシスは辛そうな表情で見つめていた。
「この戦争に”決着”が着く事は連合が”元凶”を抹殺したって事になるから、そうなれば父様は例えアルベリヒが抹殺されなくても……」
「お嬢様………」
「父さんの性格を考えると、父さんは決して戦争相手である連合に”降伏”なんてしないと思うからどれだけ劣勢な状況になろうとも最後まで連合と戦うつもりなんだろうね……」
「エリオット………」
それぞれ辛そうな表情でそれぞれの身内を思い浮かべているアリサとエリオットをシャロンとガイウスはそれぞれ心配そうな表情で見つめ
「旧共和国の件を考えると連合は間違いなく、帝国軍に協力している勢力を含めた”全て”を滅ぼすでしょうね。」
「そうだな………しかも、旧共和国の時と違って帝国は”巨イナル黄昏”の”呪い”によって市民達まで闘争心を植え付けられているからな……最悪の場合、追い詰められた帝国軍が闘争心を植え付けられた市民達を”民兵”にして連合との戦争に対抗する為の”戦力”にする可能性も考えられるな。」
複雑そうな表情で呟いたエレインの推測に頷いたジンは真剣な表情である推測を口にした。
「み、”民兵”って……そんなことになったら、帝国は軍人達だけでなく、市民達からも凄まじい数の犠牲者を出す事になりますよ……!」
「そうね………まあ、幾ら鉄血宰相達もそんなあまりにも非道な手段を取るとは考えたくはないんだけど……」
「”焦土作戦”という”前例”を考えると、連中が追い詰められればその可能性も十分に考えられるぜ。」
ジンが呟いた推測を聞いて信じられない表情を浮かべたアネラスの言葉に頷いたシェラザードは複雑そうな表情を浮かべ、アガットは厳しい表情を浮かべて呟いた。
「ハハ……その”最悪の中の最悪”の状況に陥ればリタ君が言っていた通り、私達も冗談抜きで”目的を果たすための非情な覚悟”を決めて連合やリィン君達と共に帝国の民達と連合の戦闘が本格化する前に早急に宰相殿達を討たなければならないだろうね………――――――そういえばジンさん。既に連合によって滅ぼされてしまった旧共和国は現在どんな状況なんだい?」
疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子はある事を思い出し、ジンに訊ねた。
「連合が共和国の首都――――――”イーディス”の占領並びにロックスミス大統領の死亡を共和国全土に宣言した当時は、共和国軍の中で連合による占領を受け入れられない一部の連中が黒月を始めとした共和国の裏社会の勢力の協力を得て連合に対する抵抗勢力として共和国領の各地でレジスタンス活動をしていたんだが………二日前に連合によって協力していた裏社会の勢力ごと完全に鎮圧された事で共和国――――――いや、”旧共和国”の状況は落ち着いたから、皇子達の援軍に向かえる余裕ができたからこうして来たんだが………帝国に向かっている間に改めて連合とレジスタンス活動をしていた旧共和国軍の事を考えてみて気づいた事がある。」
「”気づいた事”、ですか?それは一体……」
ジンの話を聞いてある部分が気になったセドリックは不思議そうな表情で訊ねた。
「恐らく連合は”共和国の裏の勢力を抹殺する大義名分を得る為に、共和国軍の中からレジスタンス活動をする連中が登場する事をわざと見逃していた事”だ。」
「ええっ!?そ、それってどういう事なんですか……!?」
真剣な表情で答えたジンの推測を聞いた仲間達がそれぞれ驚いている中マキアスは信じられない表情で声を上げて訊ねた。
「!も、もしかして………」
「トワは今のジンさんの話で何か気づいたのかい?」
一方ある事に気づいて血相を変えたトワに気づいたアンゼリカは真剣な表情でトワに訊ねた。
「う、うん………幾ら連合が共和国を占領したからといって、共和国の裏社会の勢力を例え”治安維持”の名目で抹殺したりなんてしたら、その強引過ぎるやり方に共和国の人達が連合に対して強い反感を抱く事で戦後の領地経営に支障が出る可能性は十分に考えられたけど……それが共和国の人達にとっても危険な勢力になれば、むしろ連合に感謝して、連合による共和国の支配を受け入れる考えを抱くことへと発展する事になると思うよ………」
「それは………」
「共和国の”裏”の者達が連合の占領に対して抵抗する共和国軍に協力すれば、連合は共和国の”裏”の者達を”反乱鎮圧”を名目に抹殺できるという事か……」
「ハッ、共和国の民間人が被害を受ける事を前提のやり方じゃねぇか。」
「チッ、気に喰わねぇやり方だぜ。」
複雑そうな表情で呟いたトワの推測を聞いたラウラは真剣な表情を浮かべ、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って呟き、クロウとアッシュはそれぞれ舌打ちをして厳しい表情を浮かべた。
「だけど、そのお陰で共和国政府とも繋がっている事で私達遊撃士協会がそう簡単に手出しする事ができなかった黒月を含めた共和国の多くの犯罪組織が連合によって抹殺されたから、結果的には連合が共和国が長年抱えていた問題の一つである政府と犯罪組織との癒着が解決されたのよね………」
「とはいっても、連合―――――いや、メンフィル帝国と繋がっている”裏”の勢力が旧共和国領内で台頭し始めた事を考えると、に黒月を含めた共和国の犯罪組織を抹殺した真の目的は連合が旧共和国の”表”と”裏”の双方を掌握する為だったかもしれんな。」
「”メンフィル帝国と繋がっている裏の勢力”だと?」
「一体どんな組織が旧共和国で台頭し始めたんですか?」
複雑そうな表情で呟いたエレインに続くように答えたジンの話が気になったユーシスは眉を顰め、サラは真剣な表情で訊ねた。
「”ラギール商会”という名の商人の組織だ。」
「?何故商人達の組織が”裏の勢力”なのだろうか?」
「多分だけど、”取り扱っている商品”に”問題”があるからだと思うよ。」
ジンの答えを聞いて新たな疑問を抱いたガイウスの疑問にフィーが答え
「うーん、それがそうでもないんだよね~。」
「ミリアムちゃん……?」
「その口ぶりだと、その”ラギール商会”という組織の事をミリアム――――――いえ、”情報局”は知っているのかしら?」
疲れた表情で呟いたミリアムの言葉が気になったエマは不思議そうな表情を浮かべ、アリサはミリアムに訊ねた。
「うん。その組織は元々クロスベルに”黒月”と同時期に新たな”裏の勢力”として現れた事で、情報局では警戒・調査対象だったし、しかもギリアスのオジさん達が”六銃士”に嵌められた”西ゼムリア通商会議”の件で”赤い星座”と”黒月”がクロスベルから撤退した後、”銀”を”黒月”から引き抜いたらしいんだよね~。」
「” 銀”ですって!?」
「……驚いた。その”ラギール商会”っていう組織は”銀”まで手駒にしているんだ。」
ミリアムの話を聞いたサラは厳しい表情で声を上げ、フィーは目を丸くし
「教官。その”銀”というのは何なのだろうか……?」
サラの様子が気になったガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。
「……”銀”っていうのはね――――」
そしてサラはその場にいる全員に東方に伝わる伝説の暗殺者――――”銀”という人物の事について説明した。
「カ、カルバード共和国に伝わる伝説の暗殺者!?」
「まさかカルバードにそのような存在がいるとは……」
「そしてそのような存在を手駒にするという事は、その”ラギール商会”という組織はどう考えてもただの商人達ではないようだな。」
説明を聞き終えたアリサは驚き、ラウラは真剣な表情をし、ユーシスは厳しい表情で考え込んだ。
「あのー……その”銀”に関する件ですけど、銀本人は”裏”から手を引く事が判明していますから、ラギール商会はともかく銀についてはそれ程警戒しなくていいと思いますよ。」
「え……ど、どうしてトマス教官はそのような事がわかるのでしょうか……?」
「……もしかして星杯騎士団は銀とやらについて何か知っているのかしら?」
その時気まずそうな表情で申し出たトマスの話を聞いたエマは呆け、セリーヌは困惑の表情で訊ねた。
「皆さんも既にご存知のように、”碧の大樹”の件を解決する為に”蒼の聖典”――――――ヘミスフィア卿は特務支援課の方々やエステルさん達、そしてエリゼさんと共に”碧の大樹”を攻略したのですが……実はその”銀”自身がヘミスフィア卿達と共に特務支援課の方々に協力して”碧の大樹”を攻略したのです。」
「ハア?その東方の伝説の暗殺者とやらは何でそんなイミフなことをしたんだ?」
「だよなぁ?つーか、”特務支援課”の連中は”警察”なのに、何でその銀とやらを逮捕しない所か、協力関係を結んだんだ?」
ロジーヌの説明を聞いたアッシュとクロウはそれぞれ困惑の表情で疑問を口にした。そしてトマスとロジーヌは銀がロイド達に協力した理由を説明した。
「ま、まさかその”銀”とやらの正体がアルカンシェルの”炎の舞姫”イリア・プラティエに並ぶあのリーシャ・マオだったなんて……!?」
「し、しかもイリア・プラティエが重傷負わされた事で復讐心に囚われていたその銀――――――いえ、リーシャさんという方を目を覚まさせる為に一騎打ちで戦って勝利して目を覚まさせたロイド君はとてつもない”偉業”を成し遂げていますよね……」
「ええ……幾ら”迷い”があったからとはいえ、エステルやリィン少将と違って”異能”のような何らかの特別な”力”がある訳でもない一警察官が”本気”を出した伝説の暗殺者相手に一騎打ちで勝利しているものね……」
「ヘっ、黒の工房の時は碌に話す暇も無かったが中々熱い性格をしているみたいだな、ティオのリーダーは。」
「えへへ、そういう所はエステルお姉ちゃんとちょっと似ていますよね。」
説明を聞き終えたマキアスは信じられない表情で声を上げ、表情を引き攣らせたアネラスの言葉にシェラザードは疲れた表情で頷き、アガットは口元に笑みを浮かべ、ティータは無邪気な笑顔を浮かべていた。
「今の話は私達も初耳でしたけど……それなら、どうしてイーディス――――――いえ、共和国側のギルドに情報が回らなかったのでしょうね?恐らくエステルさん達の報告でクロスベルのギルドも”銀”の件について把握しているでしょうし……」
「もしかしたら、それがクロスベルのギルドの”銀”に対する気遣いかもしれんな。銀――――――いや、リーシャ・マオは”銀”としての活動を止めて表の世界で一アーティストとしての活動に専念するつもりとの事だから、リーシャ・マオはかつての自分の件について騒いでほしくないだろうからな。」
「つまり銀の件についての情報を知る者達を制限する事で、銀についての情報漏洩のリスクを少しでも減らす為ですか……」
戸惑いの表情で呟いたエレインの疑問に答えたジンの推測を聞いたサラは疲れた表情で呟いた。
「まあ、そういう訳で”銀”本人であるリーシャ・マオさんは”碧の大樹”消滅を機に”銀”としての稼業を引退してアーティスト稼業に専念する事を特務支援課の皆さんやワジ達にも話しましたから、ワジやケビンの報告で星杯騎士団も”銀”はもはや危険な存在ではない事も把握しているんです。それとこれはワジの勝手な憶測ですが、リーシャ・マオさんが裏稼業から手を引く事を決めた理由の一つは特務支援課のリーダー――――――ロイド・バニングス君の”恋人”の一人になったからというのもあるとの事です。」
「ええっ!?」
「アルカンシェルのあのリーシャ・マオに恋人ができたって……何気にとんでもないスクープじゃないですか!?」
「いや、気にする所は”そこ”じゃないでしょ……」
「つーか、バニングスの”ツレの一人”って言い方をしたって事は、まさかバニングスはシュバルツァーみたいにハーレムを築いているのかよ?」
トマスが口にしたら更なる驚愕の事実に仲間達がそれぞれ驚いている中エリオットとマキアスは驚きの声を上げ、セリーヌは呆れた表情でマキアス二指摘し、ある事に気づいたアッシュはジト目で訊ねた。
「アハハ~……ワジが面白半分な様子で語った話になるのですが、ロイド君は元々特務支援課のサブリーダーであり、マクダエル元議長の孫娘でもあるエリィ・マクダエルさんと半年前くらいから付き合い始めたとの事ですが、ロイド君はディーター・クロイス政権からクロスベルを解放する前夜にリーシャさんを始めとしたロイド君に想いを寄せている多くの女性達から一斉に告白されて、その中でも一番積極的に攻めていたリーシャさんがロイド君の”2番目の恋人”になったとの事です。あ、ちなみにその告白した女性達の中には”影の国”オリヴァルト殿下達も知り合う事になった特務支援課の一員でもあるティオ・プラトーさんも含まれているとの事ですよ。」
「ふえええっ!?ティ、ティオちゃんも……!?」
「マジかよ……」
「あはは………”影の国”での”庭園”で休憩していた時のおしゃべりでティオちゃん、リウイ陛下やセリカさん達みたいな複数の女性達を侍らせている男性なんかには絶対惚れないみたいな事を言っていましたけど、その過去の自分を否定するような男性であるロイド君と出会って惚れちゃったみたいですね……」
「ほほう……?ならば”黄昏”の件が終わったら、是非ともティオ君に春が来たことをお祝いしなくちゃならないね♪」
「その前に貴様には山ほどやる事があるだろうが、阿呆。」
苦笑しながら答えたトマスの話を聞いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ティータは驚きの声を上げ、アガットは信じられない表情を浮かべ、アネラスは冷や汗をかいて苦笑し、興味ありげな表情を浮かべた後呑気に笑い始めたオリヴァルト皇子をミュラーは顔に青筋を立てて睨んで指摘し
「クスクス、どうやらロイド様はリィン様と”同類”のようですわね♪」
「そうね……さすがにリィン程ではないと思いたいんだけど……」
「くっ……可憐かつスタイルも抜群のエリィ君だけに飽き足らず、あのイリア・プラティエと並ぶアルカンシェルの超人気アーティストであるリーシャ・マオに加えてティオ君、そしてまだ私達も知らない女性達まで侍らすとは……!リィン君といい、ロイド君といい、何故世の中はこんなにも不公平なんだ……!?」
「ア、アンちゃん……」
「その意見には全面的には賛成だが、”女”で、しかも大貴族の令嬢のお前が言うセリフじゃねぇだろ。」
からかいの表情を浮かべて呟いたシャロンの推測にアリサはジト目で同意し、悔しそうな表情で声を上げたアンゼリカの様子にトワが冷や汗をかいている中、クロウは呆れた表情で指摘した。
「色々と話が逸れてしまったが、結局その”ラギール商会”とはどのような犯罪組織なのだ?」
「ん~、それなんだけど、現在情報局が把握している限り”犯罪自体は行っていないんだよね~。”」
「”犯罪自体は行っていない”……一体どういう事なんだ?」
話を戻したアルゼイド子爵の質問に答えたミリアムの話が気になったガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。
「そのままの意味だよ。”ルバーチェ”や”黒月”のような非合法ビジネスをしている訳じゃないんだ~。法律上問題がない商品なら”何でも扱って、誰にでも販売している”だけだよ~。」
「法律上問題がないとはいえ、”商品なら何でも扱う”や”誰でも販売する”って言い方から察するに、例え客が犯罪者だろうとどこぞのマフィアだろうとそいつらが望む商品が”法律上問題がなければ、販売する”って事か?」
ミリアムの説明を聞いてある事に気づいたクロウはミリアムに確認した。
「そだよ。ラギール商会も黒月のようにクロスベルに進出した時も当時のクロスベル最大のマフィアの”ルバーチェ”と抗争したりしたけど、今の所違法な裏取引は確認されていないんだ~。」
「”裏”の取引の時点で違法もクソもねぇだろうが。」
「……話を聞いた感じでは”犯罪組織”ではないようだが………」
「そうね。だけど、それは情報局ですらも把握できていないだけかもしれないのだから、今の所は黒に近い灰色な組織って所でしょうね。」
ミリアムの話を聞いたアッシュが呆れた表情で指摘している中戸惑いの表情で呟いたラウラの言葉に頷いたサラは真剣な表情で呟いた。
「なるほどな………やれやれ、どうやら”ラギール商会”は犯罪組織というよりも裏解決屋に近い存在のようだな。」
「そうですね………連合によって黒月を始めとした共和国の多くの犯罪組織が潰されたとはいえ、裏解決屋には手出ししていませんから、今後は彼ら共々警戒する必要がありそうですね。」
疲れた表情で呟いたジンの言葉に頷いたエレインは複雑そうな表情で呟いた。
「えっと……その、裏解決屋というのは一体どういう存在なのでしょうか?」
「裏解決屋というのは共和国における裏社会の職業の一つでして……彼らの仕事内容は”依頼によって探偵、交渉人、賞金稼ぎと様々な立ち位置になって解決に当たる事です。”」
「ふえっ!?そ、それってエステルお姉ちゃんやアガットさん達と同じ……」
「ああ……その仕事内容だと、俺達”遊撃士”と被っているじゃねぇか。それのどこが裏社会の職業の一つなんだ?」
セドリックの質問に答えたエレインの説明を聞いてある事に気づいたティータは驚きの表情で呟き、アガットは困惑の表情でティータの言葉に頷いた後疑問を口にした。
「裏解決屋と俺達遊撃士と違う点は、””ミラさえ払えば依頼者がどんな立場であろうと依頼を引き受ける事”――――――それこそ、依頼者が犯罪者や猟兵だろうと依頼を引き受ける事からギルドでは絶対に請けないような『表沙汰にできない案件』も解決する点だ。」
「それと裏解決屋は遊撃士協会のような組織ではなく、”個人による開業”ですから、”報酬”は当然彼ら自身が決めた金額になりますので、裏解決屋によっては高額の料金を提示して対応するケースもある事から、遊撃士協会からも問題視されているんです。」
「そ、そんな私達遊撃士のやり方を悪用している存在が共和国にはいるんですか……」
ジンとエレインの話を聞いたアネラスは複雑そうな表情で呟いた。
「色々と気になる事はありますが、これからどうしましょう?今回のエステルさん達の邂逅で、断片的ではありますが”元凶”の存在が判明しましたが……」
「”巨イナル黄昏”の”元凶”――――――”黒の騎神イシュメルガ”ね。」
「ぶっちゃけた話になるけど、その”黒の騎神”をどうにかする事ができれば、幾ら宰相殿達でも戦争の続行を諦めてくれると思うんだけどねぇ。」
「”黒の騎神”をどうにかするって言っても、黒の騎神の起動者はギリアスだから、今の俺達じゃどうしようもねぇだろ。」
「そうだな……そもそも現状の戦力だけで帝都に乗り込む事自体が不可能だな。」
セドリックの疑問に対してセリーヌは目を細めて呟き、オリヴァルト皇子とクロウは疲れた表情で呟き、クロウの意見にミュラーは重々しい様子を纏って同意した。
「えっと……今後の方針の事なんですけど……実はロゼさんから連絡があったんです。」
「え……お、お祖母ちゃんからですか?一体どのような連絡が……」
その時トワが遠慮気味な様子で申し出、トワの申し出を聞いたエマは不思議そうな表情で訊ねた。
「ロゼさんの話によるとレン皇女殿下からの連絡で今から1週間以内にロゼさんも連合の協力者として連合による召喚がある内容を伝えられたらしくて、それを知らされたロゼさんが連合に召喚される前に”ロゼさんの最後の役割”を果たしたいから、二日後に私達にミルサンテの近くにある”月霊窟”に来てくれって。」
「”ロゼの最後の役割”ですって……?」
「その話も気になるが、レン皇女殿下からの連絡というのも気になるね。」
「ええ……連合がロゼさんを召喚するという事は、1週間以内に連合と帝国軍の大規模な戦い、もしくは決戦が始まるという事にもなりますし……」
「当然その大規模な戦いや決戦にもリィン様達――――――”灰獅子隊”も何らかの形で関わる事になるかと。」
「リィン……」
トワの話を聞いたセリーヌは眉を顰め、アンゼリカとラウラはそれぞれ複雑そうな表情で呟き、静かな表情で呟いたシャロンの推測を聞いたアリサは辛そうな表情でリィンを思い浮かべた。
「トワ会長、お祖母ちゃんはそれ以外に何か言っていなかったのですか?」
「うん、他にも伝えられたことがあってね。なんでも”月霊窟”は代々の巡回魔女が穢れを払ってきた”水鏡”の霊窟だからそこは真実を映し――――――『黒の史書』の本体とも繋がっていると思われる場所だとの事だよ。」
「その名をここで聞くとは……」
エマの質問に答えたトワの話を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中オリヴァルト皇子は真剣な表情で呟いた。
「『帝国の呪いについての最後の真実が知りたければ来るがよい。我が真名と使命に賭けてヌシらの疑問に答えてみせよう。必要なのはⅦ組全員とセリーヌの試練だけど、セリーヌには人型になってⅦ組と共に試練に挑む事を伝えるように』だって。」
「へ!?」
「お、お祖母ちゃんがそんなことを……?」
トワのロゼからの伝言を知ったセリーヌは困惑の表情で声を上げ、エマは戸惑いの表情で呟いた。
「というか今、さり気なくとんでもない事実が聞こえたんだが……」
「もしかしなくても、セリーヌって人の姿になれるの~!?」
一方ある事に気づいたマキアスは表情を引き攣らせ、ミリアムは興味ありげな表情でセリーヌを見つめて訊ねた。
「え、ええ、実は……」
「人の姿はあんまり好きじゃないのよ。全く、何でⅦ組じゃないアタシまで……」
「フン、何を”今更”な事を言っている。――――――それよりも気になっていたが、”Ⅶ組全員”という事はリィンとセレーネも含まれているのか?」
「あ………」
「リィン様とセレーネ様も含めるとなると、お二人に連絡する方法を考えなければなりませんわね。現状、紅き翼は灰獅子隊への連絡手段を持ち合わせていないのですから。」
「それに例え連絡できたとしても、あの二人がこっちの頼みに応じるかよ。今のリィンは完全に軍務最優先の軍人思考のようだから、”軍務”には無関係のあたし達の”試練”とやらに応じない可能性の方が高いわよ。」
ミリアムの疑問にエマがセリーヌを気にしながら答えるとセリーヌは疲れた表情で答え、セリーヌの言葉に呆れた表情で指摘したユーシスはある疑問を口にし、ユーシスの疑問を聞いたアリサは不安そうな表情を浮かべ、複雑そうな表情で呟いたシャロンの言葉に続くようにサラは厳しい表情で答えた。
「いえ、その点は大丈夫です。わたしもそこが気になってロゼさんにリィン君達の事を訊ねたら、『正確に言えば蒼と紅の起動者とその準起動者達に試練を受けてもらう必要がある』って言っていましたから、リィン君達はいなくても大丈夫です。」
「え……蒼と紅の起動者という事はクロウさんだけじゃなく、僕もですか。」
「フム……ならば、それぞれの”騎神”の準起動者としてⅦ組のみんなのようにオルディーネとテスタロッサを援護できる私やトワ、それにアッシュ君もその中に含まれているのか。」
「ハッ、”試練”の内容がどんなものかは知らねぇが、ここまで来て除け者にされたらそれはそれで腹が立つから、めんどくせぇが付き合ってやるしかなさそうだな。」
トワの答えを聞いたセドリックは呆けた声を出し、アンゼリカは考え込みながら呟き、アッシュは鼻を鳴らして不敵な笑みを浮かべた。
「フフ、話は決まったみたいだね。ならば明後日までは各地からの支援要請を片付けつつ各地や連合、そして帝国軍の状況を調べて明後日になれば、ガラ湖に向かうとしようか。」
「はい……ッ!」
そしてオリヴァルト皇子の言葉にアリサ達は力強い返事をした――――――
後書き
いつもより遅めの更新ですみません(汗)実は今後の展開で更なる黎の軌跡キャラを登場させる事になりましたので、その話関連もそうですがその”フラグ”となる今回の話を作るのにいつもより時間がかかってしまいました(冷や汗)まあ、今回の話を読めば登場が確定しているエレインに続く黎キャラはわかったも同然でしょうが(苦笑)なお、そのキャラが所属する事になる陣営はⅦ組陣営ではなくリィン陣営で、しかもそのキャラと共に他の黎キャラが後1~2人リィン陣営に所属する事になる事で今後の原作(黎の軌跡の続編(気が早すぎぃっ!))ですらもありえるかどうかわからない夢の共闘?が実現する事になりますww
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