英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第134話
~カイエン公爵城館・正面ロビー~
「其方は確かリィン達と共にいた……」
「あっ!クレアをぶっ飛ばした槍の人だ~。」
「き、君なあ……他にももっと言い方があるだろう?」
リタの登場にラウラは目を丸くし、リタを指さして声を上げたミリアムの言葉にマキアスは冷や汗をかいて呆れた表情で指摘した。
「フフ、レンも言っていたけど、まさか本当に貴女が彼らに力を貸しているなんてね。」
「ったく、セリカ達の事はいいのかよ?」
「ふふっ、主にもちゃんと許可をもらっているから大丈夫ですよ。」
苦笑しているシェラザードと呆れた表情を浮かべたアガットに話しかけられたリタは微笑みながら答え
「えへへ、”影の国”以来だね、リタちゃん!――――――という訳で再会の印にギュッと抱きしめてもいいかな!?」
「アハハ……いいも何も既に抱きしめているじゃないですか……」
アネラスは嬉しそうな表情でリタに話しかけた瞬間凄まじい速さでリタに近づいてリタを抱きしめ、アネラスの言動と行動にリタは苦笑していた。
「ハハ、まさかお前さんが噂の”灰色の騎士”に力を貸しているなんて、俺もシェラザード達から話を聞いた時は驚いたぜ。」
「……他の遊撃士の方達もそうですが、ジンさんもあの少女と知り合いの様子ですが……彼女は一体何者なんですか?」
懐かしそうな表情を浮かべてリタに話しかけたジンの様子を見たエレインが不思議そうな表情でジンに自身の疑問を訊ねたその時
「可憐だ………」
「ふえ……」
「またかよ………」
酔いしれた表情を浮かべながらリタを見つめて呟いたアンゼリカの言葉を聞いたトワは呆け、クロウは呆れた表情で溜息を吐いた。
「愛らしさを残しつつ、どことなくアダルトな雰囲気を纏ったアンリエット君とも並ぶ人形のような可憐な容姿……!白銀の髪と衣装の色に合わせつつも、ギャップ萌えを忘れないその槍!まさか1日にトワやティータ君と並ぶ二人もの天使と出会えるとはっ。君がレン皇女殿下の話にあったリタ君だね?さすが私の事をよくわかっている、レン皇女殿下だ!アンリエット君共々モロに私の好みをついているじゃないか!――――――という訳だから、アネラスさん、私も加わらせてもらうよ!」
「うん!二人で仲良くギュッとしようね♪」
「ア、アハハ……どうやら貴女はアネラスさんやエオリアさんの”同類”のようですね……」
アンゼリカは興奮した様子で声を上げた後リタに駆け寄ってアネラスと二人でリタを抱きしめ、抱きしめられたリタは冷や汗をかいて苦笑し、その様子を見守っていたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ほらほら、二人とも離れなさい。話が進まないでしょうが!?――――――それで?シェラザード達の反応から察するに、あんたがさっき殿下達の話にも出てきたもう一人の幽霊とやらかしら?」
顔に青筋を立てて二人に注意したサラは気を取り直してリタに問いかけた。
「はい、そうですよ。――――――”冥き途”の見習い門番、リタ・セミフです。以後お見知りおきを。」
「”冥き途”とは一体何なのだろうか?」
「”冥き途”というのは――――――」
リタの自己紹介を聞いてある事が気になったガイウスは不思議そうな表情で訊ね、リタは”冥き途”の事について説明した。
「ええっ!?という事はリタさんは……」
「こんなガキが地獄の門番とか、マジでどうなってんだよ、異世界は………」
”冥き途”の事についての説明を聞き終えたエレインは驚きの表情で声を上げ、アッシュは疲れた表情でリタを見つめながら呟いた。
「あ、言っておくけどリタって、見た目はあたし達よりも年下に見えるけど、物凄く長く生きているから、リタにとっては貴方の方が”ガキ”になるわよ。」
「ふふっ、私は”既に死んでいる”から、”長生き”じゃなくて”長死に”という言葉を使うべきだと思うけど、幽霊になってから相当な年数を過ごしてきたのは事実だね。」
「そ、相当な年数って……一体何年くらいなんですか……?」
アッシュに指摘したエステルの説明に苦笑しながら答えたリタの答えを聞いたアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エリオットは困惑の表情で訊ねた。
「さあ……?幽霊になってから過ごしてきた年数なんて数えた事がありませんからそれについては私も何と答えればいいかわかりません。あ、でも少なくても軽く数百年は過ごしている事は確実ですよ。実際、主の屋敷がある”プレイア”で”水の巫女”の”神格者”になった知り合いに偶然会って、その時に”数百年ぶりだな”って言われましたから。」
「あの幽霊、下手したらロゼよりも年上なんじゃないの?」
「ア、アハハ……」
エリオットの疑問に首を傾げながら答えたリタの答えにアリサ達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ジト目でリタを見つめながら呟いたセリーヌの推測を聞いたエマは苦笑していた。
「ちなみにリタ君は”見習い門番”だから、リタ君にとっては”先輩”にして”親友”でもある”門番”もいるのだが、その”門番”もまたリタ君に負けず劣らず可憐なリトルレディなのだよ?」
「……他にも説明の仕方があるだろうが、阿呆。」
「うんうん!名前はナベリウスちゃんって言って、その娘もとっても可愛いんだよ~。」
「な……ん……だと……!?――――――リタ君、是非とも先程殿下達の話に出てきた君の”親友”にして”門番”を私に紹介してくれ!!」
「アンちゃん……」
「少しは落ち着けっつーの。」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたミュラーが顔に青筋を立てて指摘している中オリヴァルト皇子の言葉に同意した後に続けたアネラスの説明を聞いてショックを受けたアンゼリカは血相を変えてリタにある事を頼み、その様子を見守っていた仲間達が呆れている中トワは疲れた表情で呟き、クロウは呆れた表情で溜息を吐いた。
「ったく、そいつの正体も知らずに、よくそんな命知らずな事を頼めたもんね……」
「あの……恐らくですけど、その”ナベリウス”という人物はソロモン72柱の一柱の大悪魔――――――”冥門侯”の事ですよね……?」
一方セリーヌは呆れた表情で溜息を吐き、エマは不安そうな表情でリタに訊ねた。
「あら、よく知っていますね。ちなみにナベリウスは”悪魔”ではなく、”魔神”ですよ。」
「また”魔神”とやらか……俺達が知っているだけでも”魔神”は数人いるのに、異世界には一体どれ程の”魔神”が存在しているのだ?」
「”魔神”もそうだが、”神”もだろう……って、そういえばさっき、ヨシュアさんが君とアンリエットはエステルさんや”空の女神”が扱える”神術”や”神技”の対象外みたいな事を話していたが……」
エマの疑問に答えたリタの説明を聞いた仲間達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ユーシスと共に呆れた表情で呟いたマキアスはある事を思い出してリタに訊ねた。
「私は元々魔槍の呪いによって肉体を失い、幽霊と化したのですけど、”とある出来事”で”魔槍に込められた呪いや穢れが浄化された事”で魔槍と魂が一体化していた私も聖なる霊体――――――”聖霊”に”昇格”したんです。ですから私は他の幽霊や不死者達と違って、浄化の魔術は効かないんです。」
「……なるほどね。アンタは幽霊なのにも関わらず、聖なる霊力を感じる事を不思議に思っていたけど、そういう事だったのね。」
「その……話に出た”魔槍”というのは、リタさんが今座っている槍の事でしょうか?」
リタの説明を聞いたセリーヌは真剣な表情でリタを見つめ、エマは遠慮気味にリタの座っている槍を見つめて訊ねた。
「ええ。この槍の名前は”ドラブナ”。以前は”魔槍”でしたが、浄化された事で”神槍”となったんですよ。」
「”神槍”……」
「確かに其方の座っているその槍からは、尋常ならぬ気配が感じ取れるな……」
リタが座っている槍を”神槍”と知ったラウラは呆け、アルゼイド子爵は静かな表情で呟いた。
「……残念ですが、リタ様は”不死者”として特殊過ぎる為、フランツ様の肉体からアルベリヒを浄化させる手段の参考にはなりませんわね。」
「そうね………そういえば、リタさんはアンリエットも”例外”だって言っていたけど、アンリエットはどうしてなのかしら?確かアンリエットはアイドスの庇護下にあるからだって、さっき言っていたけど………」
辛そうな表情で呟いたシャロンの指摘に複雑そうな表情で頷いたアリサはリタに新たな質問をした。
「それについてはアンリエットの”主”であるシュバルツァー少将が深く関係していると言っても過言ではありませんわ。」
「?それってどういう事なの、フェミリンスさん。」
リタの代わりに答えたフェミリンスの説明を聞いて首を傾げたミントは質問を続けた。
「貴女も知っているように、シュバルツァー少将はアイドスと契約をしている事で、”慈悲の大女神”による”加護”が宿っています。そしてアンリエットはその”慈悲の大女神の加護があるシュバルツァー少将との契約によって互いの魔力を一体化する事で、アンリエットにも慈悲の大女神の加護が宿る”のですわ。」
「つまり、互いの霊力をつなぐことで、アンリエットさんの相手であるリィンさんに宿っているアイドスさんの加護がアンリエットさんにも宿る事で、アンリエットさんはリィンさんを介してアイドスさんの”眷属”になる事で破邪の魔法等による”浄化”もアイドスさん――――――女神の霊力によって守られる事で”浄化”を逃れる事ができるという事ですか……」
「ま、言葉通り”互いの肉体を繋いで互いの霊力を一体化させる性魔術”で”契約”しているアイツだからこそできる反則技でもあるわね。」
「ったく、そこであの野郎のリア充な部分が関わるとか、もはや神がかっているだろ、あのリア充シスコン剣士の”そういう部分”は……」
「ア、アハハ……」
フェミリンスの説明を聞いて事情を察したエマは真剣な表情で推測し、ジト目で呟いたセリーヌの推測を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クロウは呆れた表情で呟き、トワは苦笑していた。
「……でも、話を聞いた感じ、その方法ならアリサのお父さんを助けられるかも。幸いにもアイドスを含めた”神”は数人この世界にいるし。」
「う、うん。要するに”神”に分類される人達がフランツさんと”契約”してもらって、子爵閣下の時みたいにエステルさんが扱える神術か神技をアルベリヒにぶつければ……!」
「―――――希望を抱く事を否定するつもりはありませんが、”神々”との”契約”を容易にできると思わない事ですわね。――――――”神々”との”契約”には相応の”対価”を差し出すか、神々も認める程の”偉業”を成し遂げる必要があるのですから。」
「フェミリンス………」
フィーの言葉にエリオットが頷いて続きを口にしかけたその時、フェミリンスが釘差しをし、フェミリンスの様子をヨシュアは複雑そうな表情で見守っていた。
「ハッ、テメェもその神サマなのにも関わらず、”空の女神”の血縁者であるそいつと契約を結んでいるじゃねぇか。」
「その……もしかして、エステルさんはフェミリンス様に何らかの”対価”を差し出して”契約”をしてもらったのでしょうか……?」
一方アッシュは鼻を鳴らしてフェミリンスを睨み、エマは複雑そうな表情でエステルを見つめて訊ねた。
「ううん。フェミリンスと出会ったのは”影の国”なんだけど……その時に、リウイ達――――――というか異種族全てを嫌って、人間しか大切にしなかったフェミリンスの考えを変える為にみんなでフェミリンスに挑んで勝った時にフェミリンスも今までの自分の考えが間違っていた事を認めてくれたのよ。で、その後あたし達と一緒に世界を見て回ろうって誘ったら、契約してくれたのよ。」
「さ、さりげなくとんでもない話が出てきたぞ……」
「今の話が本当ならば、エステル殿達はフェミリンス殿―――――”女神と戦って、勝利した”という”偉業”を成した事になるが……」
「しかもその後、そんな軽いノリで”契約”をするとか意味わかんないよ~!」
エステルの答えを聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中マキアスは表情を引き攣らせながら呟き、ラウラは困った表情で呟き、ミリアムは疲れた表情で声を上げ
「そういえば兄上やミュラーさん、それにシェラザードさん達もその”影の国”に巻き込まれた話は聞いていましたけど……まさか兄上達もフェミリンス様と……!?」
「ハッハッハッ、その通り。今考えてみると正直、”幻影城”での決戦よりも、フェミリンスさんとの戦いの方が”影の国”での”最終決戦”のようなものだったねぇ。」
「……あの時はまさに言葉通り、”総力戦”の”死闘”だったからな。」
「アハハ……実際、フェミリンスさんとの戦いの後は私達どころか、リウイ陛下やセリカさん達ですらも相当な疲労が出てきて、全員”庭園”でしばらく休まざるを得ない状態になりましたものねぇ。」
「そうね……特に師匠やティアさんと言った”蘇生術”の使い手の人達には本当にお世話になったわよね……師匠達がいなければ、あたし達もとっくにあの世行きだったわ……」
「まあ、その後フェミリンスに”契約”を持ち掛けたエステルのとんでもない行動には俺達どころか”英雄王”達も度肝を抜かれたがな……」
「ハハ、それを考えるとさすがカシウスの旦那の娘……いや、”空の女神”の”子孫”の”器”と言うべきかもしれないな、エステルの”器”は。」
「フフ、フェミリンスさんもそうですけど、エステルは主とサティア様にとっても”偉業”となる事を成し遂げたのですから、もしかしたら主やサティア様と”契約”する未来があったかもしれないね、エステルは。」
(い、一体ジンさん達とフェミリンスさんはどんな凄まじい戦いをしたのかしら……?)
ある事に気づいたセドリックに訊ねられたオリヴァルト皇子は呑気に笑いながら答え、静かな表情で呟いたミュラーの言葉にアネラスは苦笑しながら同意し、シェラザードとアガットは疲れた表情で溜息を吐き、ジンは苦笑し、リタは微笑み、オリヴァルト皇子達が口にしたとんでもない事実にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エレインは困惑の表情でジン達を見つめた。
「エ、エステルがセリカさんやサティアさんと”契約”って……サティアさんはまだ想像できるけど、セリカさんはさすがに想像できないな……」
「ア、アハハ………というか、サティアさんの魂と同化しているママもある意味、サティアさんと”契約”している事になるんじゃないかな~?」
「う、う~ん……実際、サティアさん専用だった神剣の天秤の十字架をサティアさんの代わりにあたしが使わせてもらっているから、ミントの推測も強ち間違っていないかも……それはともかく、皇太子殿下とクロウさん……だっけ?バルクホルンさんからその二人が”巨イナル黄昏”による”強制力”で”相克”を行う事をさせない対策―――――リィン君達みたいに”神の加護”をして欲しいって話を聞いたエイドスがこれを二人に渡してくれって。」
リタの話を聞いて思わずその光景を思い浮かべたヨシュアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、苦笑しながら呟いたミントの言葉に同意したエステルの言葉にアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ある事を思い出したエステルは荷物から二つの腕輪を取り出した。
「これは……腕輪……?」
「まさかとは思うが、そいつが”神の加護”の代わりなのか?」
エステルが取りだした腕輪を目にしたセドリックは首を傾げ、クロウは困惑の表情で訊ね
「見た目は普通の腕輪ですが、エイドス―――――”空の女神”の”神気”によって形成されたものですから、古代遺物―――――いえ、”神器”と言っても過言ではない逸品ですわよ。」
「ア、古代遺物どころか、”神器”って……!」
「……確かにその腕輪からはとんでもない聖なる霊力が感じられるわね……」
「そうね……もしかしてこの腕輪に込められたエイドス様の”神気”によって”巨イナル黄昏の呪い”による”強制力”を防げるのでしょうか?」
フェミリンスの説明を聞いたエリオットは信じられない表情を浮かべ、セリーヌは目を細め、エマは真剣な表情でフェミリンスに訊ねた。
「そう聞いていますわ。―――――エステル。」
「うん。―――――はい、エイドスからは二人とも肌身離さず着けておくようにだって。」
「……わかりました。エイドス様のご厚意、ありがたく頂戴させて頂きます。」
「本来なら俺達の方から取りに行くのが”筋”なのにも関わらず、そっちから届けに来てくれた事、感謝するぜ。」
フェミリンスに促されたエステルはセドリックとクロウにそれぞれ腕輪を渡し、渡された二人はそれぞれ感謝の言葉を口にして腕輪を装着した。
「二人ともいいな~!ボク達には何かないの~?」
「ある訳ないだろうが、阿呆。」
「皇太子殿下達がもらった”相克”対策の腕輪だけで十分過ぎるだろう……」
羨ましがっているミリアムにユーシスとマキアスはそれぞれ呆れた表情で指摘した。
「それと下手な希望を持たれる前に先に言っておきますが、私を含めた現在ゼムリア大陸に存在している神々は”黒のアルベリヒ”に肉体を乗っ取られている”不死者”を”救う”等と言った”甘い”考えには一切応じませんわよ。」
「……ッ!」
「お嬢様……」
「ちょっと、フェミリンス!もっと他にも言い方ってものがあるでしょう!?」
フェミリンスは目を細めてアリサに視線を向けて指摘し、フェミリンスの指摘を聞いたアリサは辛そうな表情で唇を噛み締め、その様子をシャロンは辛そうな表情で見守り、エステルはフェミリンスに注意した。
「僅かでも可能性があるのならまだしも、”最初から可能性はゼロの事実”は回りくどい言い方をせず、ハッキリ言った方が本人達の為にもなりますわ。」
「”最初から可能性はゼロの事実”って……あんたはともかく、他の”神”の人達はわからないじゃない。」
フェミリンスの答えを聞いたエステルは真剣な表情で反論した。
「では逆に聞きますが、現在このゼムリア大陸に存在している私以外の”神”、もしくは同等の”力”を持つ者達で、”黒のアルベリヒ”に乗っ取られた”不死者”を”自身がリスクを負ってまで黒のアルベリヒの意思のみを滅するといった酔狂な事に協力してくれる”ような者達はいますか?」
「えっと……フェミリンスさん以外だと、エイドスさん、フィーナさん、クレハちゃんに未来から来たサティアさん、それとリィンさんが契約しているアイドスさん、ジェダルさんと一緒にいるフィアさんだよね?」
「フフ、それと当然ですがサティア様の肉体に宿る主――――――セリカ様も当然”神”と同等の”力”を持っていますよ。」
「……少なくてもエイドスさんとフィーナさん、クレハは応じないだろうね。3人とも”過去の存在”で”彼女達にとっては未来である今の世界”を改変する事は最小限に抑える考えだから、そんな彼女達が自分達の介入によって人一人―――――それも、”世界を救う為に滅せられるべき存在”の”運命”を変えるような事は一切応じないだろうね。」
フェミリンスの問いかけを聞いたミントは考え込み、リタは微笑みながら答え、ヨシュアは複雑そうな表情で自身の推測を口にした。
「それを考えると未来の時代から来たサティアさんとフィアちゃんも無理だし、そもそも二人にそんなことを頼むなんて”筋違い”ね……で、オズボーン宰相もそうだけど、”黒のアルベリヒ”を完全に”抹殺対象”として見ているセリカも当然無理ね。アイドスさんは………アイドスさんの”過去”を考えると、リィン君達みたいな”アイドスさんにとっての身内”の為じゃなく、ただの”他人”の為にアイドスさんがリスクを負うような事はしないだろうし、それ以前に今まで散々苦しんできてようやく幸せになれたアイドスさんにだけは頼めないわね……」
ヨシュアに続くように疲れた表情で溜息を吐いて呟いたエステルはジト目でセリカを思い浮かべた後、辛そうな表情を浮かべてアイドスを思い浮かべて呟いた。
「ふえ?エステルちゃん達はアイドスさんの”過去”を知っているの?」
「彼女は”碧の大樹”でセリカさん達や貴女達と共に攻略したって話は聞いているけど……その時に聞いたのかしら?」
エステルが口にしたある言葉が気になったアネラスは不思議そうな表情で訊ね、シェラザードは真剣な表情で訊ねた。
「うん……詳しい説明をしたら凄く長くなるから簡単に説明するけど、アイドスさんは遥か昔世界から争いを無くすために人間族と協力していたらしいんだけど、争いを諫めて導いてきた過程で人々の邪悪な心に染まって”邪神”と化してしまったのよ。」
「”邪神”……アイドスさんが………」
「い、一体アイドスさんに何があったんだろう……?」
辛そうな表情で答えたエステルの説明を聞いたガイウスは呆け、エリオットは不安そうな表情で疑問を口にした。
「―――――”やっぱり”ね。」
「ふえ?”やっぱり”って、セリーヌはもしかして今エステルが言ったアイドスの過去を知っているの~?」
その時セリーヌは静かな表情で呟き、セリーヌの答えが気になったミリアムは困惑の表情で訊ねた。
「そういう訳じゃないわ。でも、アイドス―――――”慈悲の女神”の”伝承”もそうだけど、”慈悲の女神”に深く関係する”正義の女神”の”伝承”も考えるとアイドスは当時”報われない正義”を掲げて人々に説き訴えかけて、その結果最後の最後まで信じていた人々から相当な酷い裏切りを受けたのは想像がつくのよ。」
「”報われない正義”、ですか……?そのアイドス様と正義の女神様の”伝承”というのは一体どういう内容なのでしょうか……?」
複雑そうな表情で答えたセリーヌのある言葉が気になったセドリックは不安そうな表情で訊ねた。
「その……”星座”の一つである”天秤座”と”乙女座”が関係する伝承ですと、遥か昔世界のすべての生物は、老いることなく、食物などすべての物に恵まれ、苦労も悩みもなく、幸せに暮らしていた”黄金時代”という時代があり、その当時は人と神が共に暮らしていたのですが………すべての植物が枯れる冬が生まれる事で”銀の時代”へと入った事で、人々は食べ物がなくなった事で汗水を流して生きられなくなり……やがて、人々の中で争いごとが増えた事でこれまで人と一緒に地上に暮していた神々が次々と天上界へと去っていく中、”正義の女神”とその妹神である”慈悲の女神”だけは地上に残って人々に正義を説き訴えかけていたんです。」
「だけど、”銀の時代”が終わりを告げて”青銅の時代”になると人々は更に野蛮になって、親兄弟であっても殺し合いをするようになったのよ。で、”青銅の時代”の人々のほとんどがその殺し合いで滅びた後神々を敬う英雄たちが現れる”英雄の時代”になって、その時は”銀”や”青銅”の時代と比べたらましなんだけど……”英雄の時代”が過ぎて”鉄の時代”に入ると、人々は完全に堕落して集団で争うようになって、やがては武器を持って”戦争”をするようになったのよ。そしてこの出来事によって、”正義の女神”も人間に失望して、天上界に去ってしまったのだけど……その時に天上へと登った”正義の女神”は”乙女座”に、そして正義の女神が手に持った善悪を量る天秤こそが”天秤座”になったと言われているわ。」
「それが”乙女座”と”天秤座”―――――いや、”慈悲の女神”と”正義の女神”の”伝承”か……」
「あまりにも悲しすぎる話ですね……」
「……二人の話とエステル殿の話も考えると、セリーヌが言った”報われない正義”というのは……」
「”世界から争いを無くすこと”か………」
「そして”慈悲の大女神”であったアイドス殿すらも邪悪な心に染まってしまったとは、当時の人々は一体どれ程の愚かな者達だったんだ……?」
「ハハ……”黄昏”によって祖国の人々がそんなあまりにも愚かすぎる人々になりかねないから、私達にとっても他人事ではない話だね……」
「はい……」
エマとセリーヌの説明を聞いたジンとエレインは辛そうな表情で呟き、ラウラとユーシスは重々しい様子を纏って呟き、ミュラーは複雑そうな表情で呟き、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、オリヴァルト皇子の言葉にセドリックは辛そうな表情で頷いた。
「……だが、そのアイドスが何でシュバルツァー―――――自分を手酷く裏切った”人間”と”契約”したんだ?」
「それはアイドスが”慈悲の大女神”だからこそですわ。」
「ふえ?アイドスさんが”慈悲の女神だらこそ、リィン君と契約した”ってどういう事なんですか……?」
アガットの疑問に対して答えたフェミリンスの答えが気になったトワは不思議そうな表情で訊ねた。
「既に貴方達も存じているようにアイドスは”並行世界の零の御子”によってこの世界に復活しました。そしてアイドスは自分の復活に戸惑いつつも、自身の過去を後悔しつつも再び探し求め続ける事にしたのですわ―――――”世界から争いを無くすこと”を。」
「ええっ!?そ、そんなあまりにも悲惨な過去があったにも関わらず、アイドスさんはそれでも私達人間を信じて、世界から争いを無くそうとしているんですか……!?」
「まさにその名の通り、”慈悲の女神”と称えられるべき慈悲深さを持たれた”女神”ですわね……」
フェミリンスの説明を聞いたその場にいる多くの者達が驚いている中アリサは信じられない表情で声を上げ、シャロンは驚きの表情で呟いた。
「あの女がイカれたレベルの慈悲深い女なのはわかったが……それが、何でシュバルツァーのハーレムメンバーの一員になる事に繋がるんだよ?」
「あんたね……もう少しマシな言い方をしなさいよ……」
「でも、アッシュの言う通り、アイドスがリィンと”契約”したのが意味わかんないよね。ラウラ達の話だとリィン達とアイドスが会ったのはレグラムでの特別実習の時の”ローゼングリン城”で、それ以降はリィンがクロスベルでアイドスと会うまで全く会う機会はなかったし。」
困惑の表情で疑問を口にしたアッシュにサラが呆れた表情で指摘している中、フィーは不思議そうな表情でアッシュと同じ疑問を口にした。
「フフ、それはサティア様がサティア様の”パートナー”として主―――――セリカ様を選んだように、アイドス様はリィンさんをアイドス様の”パートナー”――――――つまり、かつてのアイドス様やサティア様にはなかった存在――――――”どんな苦境に陥ろうとも、自分を信じて自分を支えてくれる存在”として選んだからですよ。」
「貴方達”人間”にわかりやすい言い方で言えば、”人の身を捨ててでも、女神である彼女達と生涯を共にしてくれる伴侶”ですわ。」
「女神であるアイドスさんと”人の身を捨ててでも、生涯を共にしてくれる伴侶”か……という事は先程フェミリンスさんの話にあった”神と契約”する為には相応の”偉業”、もしくは”対価”と言っていたが、アイドスさんがリィン君と契約した”対価”というのはもしかして――――――」
「”リィンが人としての身を捨ててでも、アイドス殿と永遠の時を共に生き続けるという対価”か……」
「その割にはリィンの他のハーレムメンバー―――――エリゼ嬢ちゃん達もリィンと一緒に永遠の時を生き続けられるようにする手段も既に考えているとか、自分の”身内”に関しては相当甘い女神じゃねぇか……」
リタとフェミリンスの説明を聞いたアンゼリカはある事に気づき、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って推測を口にし、クロウは呆れた表情で呟いた。
「……話を”黒のアルベリヒ”の件に戻しますが、私達が”黒のアルベリヒ”に肉体を奪われた貴女の父親を救わない理由は”神としての判断”以前の問題が二つあるからですわ。」
「……その”二つの問題”っていうのはどんな”問題”なんですか?」
フェミリンスに視線を向けられたアリサは辛そうな表情で続きを促した。
「まず一つ目は”加護を与える方法”ですわ。」
「”加護を与える方法”……エイドス様がセドリックとクロウ君の為にエイドス様の加護が宿った腕輪を用意してくれたような”方法”は無理なのかい?」
フェミリンスの答えが気になったオリヴァルト皇子は真剣な表情で訊ねた。
「ええ。エイドスが用意したその腕輪による”加護”は”黄昏の呪いによる強制力によって相克を始めさせない為――――――要するに外部からの呪いを防ぐ事”ですから、既に”内部――――――魂の奥底まで蝕まれた呪い”等には対応していませんわ。」
「それを考えると、既に内部――――――意思が”アリサの親父さんからアルベリヒに戻った”アリサの親父さんの肉体にはこの腕輪じゃどうしようもないって事か……―――――”ゲオルグに戻った”ジョルジュのようにな。」
「それは……………………」
「…………………」
フェミリンスの説明を聞いて理解したクロウは複雑そうな表情で推測を口にし、その推測を聞いたアンゼリカは複雑そうな表情で答えを濁し、トワは辛そうな表情で黙り込んだ。
「ちなみに、その内部を蝕んでいるアルベリヒをどうにかする”加護の方法”とやらはどんな方法なのよ?」
「……それに関しては貴女達は既にその”実例”を目にしているのですから、わざわざ答える必要はないと思いますわ。」
「俺達が既に”実例”を目にしているだと……?」
「一体誰の事だ……?」
「もったいぶらずに教えてよ~!」
サラの問いかけに対して答えたフェミリンスの答えが気になったユーシスとマキアスは考え込み、ミリアムは文句を言った。
「あの……恐らくフェミリンス様が仰った”実例”というのはリィンさんの”鬼の力”が”消えた方法”の事ではないでしょうか……?」
するとその時フェミリンスの答えの意味を既に理解していたエマが気まずそうな表情で指摘し
「リ、リィンの”鬼の力が消えた方法”って………――――――あ”。」
「も、もしかしなくても”性魔術”だよね……?」
「実際リィンとアイドスさんが”性魔術”をしたことで”鬼の力”がなくなったという話だからな……」
「ったく、ここであのエロ魔術の出番とか、完全に空気ぶち壊しだろ。」
エマの指摘を聞いて心当たりを思い出したエリオットとアネラスは表情を引き攣らせ、ガイウスは困った表情で呟き、アッシュは呆れた表情で呟いた。
「えっと……その”性魔術”というのは一体どういうものなのでしょうか……?」
「”魔術”の名がある事からして、恐らく何らかの魔術の類と思うのだが……」
「そういえばジンさんはまだ”性魔術”の事については知らなかったわね……」
「正直知らない方がよかったと思うような内容だぜ……」
一方”性魔術”の事を知らないエレインとジンは不思議そうな表情を浮かべ、二人の様子を見たシェラザードは疲れた表情で、アガットは呆れた表情でそれぞれ溜息を吐いた後二人に”性魔術”の事について説明した。
「ええっ!?い、異世界の魔術にはそんな淫らな方法まであるんですか……!?」
「あー………俺はその”性魔術”とやらの感想は控えさせてもらうが……確かにその方法なら、”内部”に対しても効果は発揮しそうだがフェミリンス達にとっても問題……いや、”大問題”になる方法だな。」
「というか、アリサにとっても大問題な方法なんじゃないの?――――――アリサのお父さんがアリサのお母さんを裏切って浮気するようなものだし。」
「う”っ………」
「フフ、会長でしたら事情を知れば、その事実を受け入れるような気もしますが………ちなみにもう一つの問題とはどういったものなのでしょうか?」
”性魔術”の事についての説明を聞き終えたエレインは驚きの声を上げた後頬を赤らめ、ジンは疲れた表情で呟き、ジト目のフィーに指摘されたアリサは疲れた表情で唸り声を上げ、シャロンは苦笑した後気を取り直してフェミリンスに続きを訊ねた。
「もう一つの問題は、そもそも今回の件の”元凶”――――――”呪いの大元を滅した時点で、アルベリヒとアルベリヒが宿っている肉体も消滅する為、アルベリヒが宿っている肉体の消滅は避けられない”からですわ。」
「あ………」
「そうか……言われてみれば、その件もあるから、アルベリヒが乗っ取っている彼女の父親に関してはフェミリンス達でもどうしようもないのか……(それを考えると黒のアルベリヒに乗っ取られた彼女の父親を助けられる人物はフェミリンス達じゃなく……)」
「………………………………」
「え……………………そ、それってどういう事なんですか…………!?」
フェミリンスの答えを聞いたエステルは呆けた声を出した後辛そうな表情で黙り込み、ヨシュアは複雑そうな表情で呟いた後ミントに視線を向け、ミントは辛そうな表情で黙り込み、アリサは呆けた後血相を変えて訊ねた。
「その……オリビエ達やⅦ組のみんなも、ロイド君達――――――”特務支援課”が保護している女の子――――――キーアちゃんが”本来の歴史”の事を識っている事を知っているわよね?そのキーアちゃんから聞いたんだけど、リィン君達が助かった歴史と助からなかった歴史、いずれの歴史でも”呪いの大元”の”黒の騎神”が”相克”でリィン君――――――”灰の騎神”に負けた後起動者のオズボーン宰相もそうだけど、”黒の騎神の下僕として生み出された黒のアルベリヒ”も”肉体が不死者だったから肉体ごと消滅した”そうなのよ………」
「何ですって!?」
「という事は今回の件の元凶はオズボーン宰相が駆る”黒の騎神イシュメルガ”という訳か……!」
「し、しかもアルベリヒはその”黒の騎神”が生み出した”眷属”だったなんて……!」
「……なるほどな。”相克”で敗北した”騎神”は降した”騎神”に”吸収”されるから、”騎神”との繋がりによって存在できた不死者達も”騎神”との繋がりを切られれば、当然消えちまうから、”黒の騎神”が消えちまえば肉体が”不死者”のギリアスもそうだが、アルベリヒも肉体ごと消えちまうって訳か……」
「―――――つまり、連合はその”元凶”である”黒の騎神”も滅ぼすつもりでしょうから、”黒の騎神”が滅ぼされた時点で”黒の騎神”の”眷属”のアルベリヒも肉体ごと滅ぼされることになるのね……」
エステルが口にした驚愕の事実にその場にいる多くの者達が血相を変えている中サラは真剣な表情で声を上げ、ミュラーは厳しい表情で呟き、エマは不安そうな表情で呟き、クロウとセリーヌは重々しい様子を纏って呟いた。
「まさかこんな形で”元凶”を知る事になるとはな……」
「そだね。でも、何で”黒の騎神”だけそんな事になったんだろうね。ヴァリマール達――――――他の”騎神”達は”起動者”達の意思に委ねるような感じなのに。」
真剣な表情で呟いたラウラの言葉に頷いたフィーは真剣な表情で考え込み
「…………父様…………」
「お嬢様……」
顔を俯かせ悲しそうな表情で呟いたアリサの様子をシャロンは心配そうな表情で見守っていた。
「そういえば先程から気になっていたが……リタ、何でお前さんが例の”灰色の騎士”に力を貸しているんだ?」
「ああ……俺達もレンから話を聞いた時に気になっていたな。セリカ達がこの世界にいるにも関わらず、、何でわざわざセリカ達と離れてまであまり接点が無いように思えるシュバルツァー達に力を貸す事にしたんだ?」
「あ……っ!あたしもそのことを聞くのをすっかり忘れていたわ!」
「もしかして、リタちゃんと同じ”幽霊”のアンリエットちゃん関連かな?」
その時その場の雰囲気を変える為に話を変えたジンはリタに訊ね、ジンに続くようにアガットもリタに訊ね、二人の質問を聞いたエステルは声を上げ、アネラスは苦笑しながらリタに訊ねた。
「はい、アネラスさんの予想通りですよ。」
「アネラスさんの予想通りという事はやはりアンリエットさんが関係しているのか……」
「えっと……一体何があって、リタちゃんとリィンさん達、それにアンリエットさんが関わる事になったの?」
「それは―――――」
リタの答えを聞いたヨシュアは考え込み、ミントがリタに訊ねるとリタはアンリエットとの出会いについての説明をした。
「クロスベルでそのような事が……」
「……察するに、アンリエットもまた、リィンが”黒の工房”の件以降新たに”絆”を結んだ者達と事情は同じようだな。」
「間違いなくそうでしょうね。」
「ここでも”並行世界の零の巫女”が出てくるとはね……ったく、何で”並行世界の零の巫女”は”特務支援課”じゃなく、リィンの事をそんなに贔屓してあげているのよ……」
リタの説明を聞き終えたラウラは真剣な表情で呟き、アルゼイド子爵の推測にセリーヌは頷き、サラは呆れた表情で溜息を吐いた後ジト目になった。
「フフッ、”初めて出会った自分と同じ理性がある幽霊と仲良くなりたい”という理由で心から慕っている人物達の下を離れてリィン君達に力を貸しているなんて、中々可愛いらしい理由じゃないか。」
「うんうん、まさに可愛いことは正義だね!」
「というか、”灰色の騎士”もとんでもない度胸をしているわよね……セリカさんの許可があったとはいえ、自分の使い魔と仲良くなりたいからという理由で自分達の所に厄介になっているリタ―――――よりにもよってセリカさんの関係者を”戦場”に出すなんて。」
口元に笑みを浮かべたアンゼリカの指摘にアネラスは嬉しそうな表情で同意し、シェラザードは疲れた表情で呟いた。
「あ、”戦場”に出る事は私自身が申し出た事で、リィンさんは元々”灰獅子隊の客人”として扱っている私を”戦場”に出すつもりはありませんでしたよ。」
「へ……リタ自身が?何で??」
しかしリタが口にした意外な答えに驚いたエステルは戸惑いの表情で訊ねた。
「アンリエットと仲良くなりたいという私の”私情”の為にレヴォリューションに滞在させてもらっている”恩返し”という意味もあるけど……主の今回の”敵”はオズボーン宰相達で、”エレボニア帝国軍”はオズボーン宰相達に従っているよね?だから、エレボニア帝国軍と戦って、一人でも多くの兵士を殺して主の敵を減らす事は主の助けにもなるから、リィンさんに私の事も遠慮なく”戦力”として活用してくださいって言ったんだ。」
「そ、そんな理由の為だけにリィン君達に協力して、エレボニア帝国軍の人達を殺しているなんて……」
「ハッ、あのアンリエットとかいうアマのように、やっぱ”幽霊”だけあってイカれた考えをしていやがるぜ。」
「ハハ……セリカさんの事を心から慕っているリタ君らしい理由ではあるね……」
「つーか、帝国軍の連中は”政府に従うのが当然という教育をされているだけ”なのに、セリカ達の”敵”認定された帝国軍の連中は哀れすぎだろ……」
リタが口にした説明を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワは複雑そうな表情でリタを見つめ、アッシュは鼻を鳴らし、オリヴァルト皇子とアガットは疲れた表情で呟いた。
「フフ、争いによって”死者”が出る事を嫌う皆さんの考えも決して間違ってはいませんね。――――――ですが今回の件――――――”巨イナル黄昏”を解決するには、”元凶やその周りの者達を討たなければ、後の災厄になるのは明白”です。戦争も終盤に入りかけているのですから皆さんもエレボニア――――――いえ、”ゼムリア大陸の為には元凶達を討たなければならないという覚悟”をそろそろ決めた方がいいと思いますよ?」
「そ、それは………」
「…………………」
リタは苦笑した後アリサ達を見回して指摘し、リタの指摘にトワが複雑そうな表情で答えを濁している中アリサは辛そうな表情で黙り込んだ。
「それでは私はこれで失礼しますね。」
そしてリタは城館の方へと去っていった。
その後エステル達と別れたアリサ達はカレイジャスに乗り込んでオルディスから去って行った――――――
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