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イベリス

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第十七話 裏側のことその十二

「例えばDVする彼氏がいて」
「そうした人からはなのね」
「逃げないと死ぬこともね」
 暴力、それを受けてというのだ。
「あるから」
「そうした場合は逃げないと駄目なのね」
「理不尽に滅茶苦茶に暴力を振るう人の傍にずっといても」
 そうしてもというのだ。
「何もならないわよ」
「それは苦労じゃないのね」
「それは災厄よ」
 こちらになるというのだ。
「まさか地震に立ち向かえっていうの?」
「それは」
 どうかとだ、咲も答えた。
「絶対にね」
「無理でしょ」
「地震に立ち向かっても」
 災害にとだ、咲は眉を曇らせて言った。ここでモコの背中を撫でるとモコは尻尾を左右に振ってきた。
 そのモコを見つつだ、咲は母に答えた。
「死ぬだけよね」
「すぐに机の下に逃げないとね」
「駄目よね」
「そう、だからね」
「逃げることもなのね」
「災厄には必要よ」
 そうだというのだ。
「これは苦労と違うの」
「災厄とは」
「そこは覚えておいてね」
「苦労には向かって乗り越える」
「それで災厄からは逃れる」
「そうしていくことね」
「そうよ、間違ってもね」
 母は娘に強い声で話した。
「向かうべき苦労と逃げていい災厄は見極めてね」
「それで苦労は乗り越えて」
「災厄は逃げてね」
「難しいわね」
「そこはちゃんと見るんだ、暴力ばかり振るう教師のいる部活にいるとな」
 ここでだ、言ったのは父だった。
「どうなる」
「体育会系の部活であるわね」
「教師のその時の気分で殴ったり蹴ったりしてくるんだ」
「そんな部活にいたら」
「もうどうなるか」
 それこそというのだ。
「わからないからな」
「だからなのね」
「そうだ、そんな部活はどんな好きなものでもな」
 そうした教師が顧問ならというのだ。
「絶対にな」
「部活に入ったら駄目ね」
「他のところでしろ」
 学校以外の場所でというのだ。
「いいな」
「さもないとよね」
「怪我をするならまだいい」
「下手したら死ぬから」
「そうした部活なら他の場所で楽しめ」 
 部活で行われる活動をというのだ。
「碌でもない奴のところにはいるなと言ったな」
「この場合もそうね」
「そうだ、逃げろ」 
 絶対にというのだ。
「何があってもな」
「そうするわね」
「父さんも思う、苦労は乗り越えてな」
「災厄からは逃げる」
「地震や津波に向かってどうするんだ」
 こうも言うのだった。 
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