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イベリス

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第十七話 裏側のことその十一

「人は努力しないとね」
「よくならないわね」
「磨けば磨く程よくなるのよ」
「だから努力すべきね」
「そうよ、例えばモコと一緒にいて」
 今も遊んでいる彼女を見つつ話した。
「お世話するだけでもね」
「いいのね」
「色々わかるでしょ」
「命に触れて」
 そしてというのだ。
「モコの気持ちや身体を考える」
「それだけでもね」
「自分を磨けるのね」
「相手のことを考えて想うだけで」
「些細なことよね」
「けれどその些細なことがね」
 そういったことがというのだ。
「大きくて」
「自分を磨けるの」
「そうよ、それで人として成長して」
「よくなっていくのね」
「そうよ。あと苦労も人を磨くっていうけれど」
 母はこうも言った。
「これは向こうから来るから」
「苦労は」
「そう、咲もこれまで辛い思いしたことあるわね」
「何度もね」 
 高校に入学した今までを振り返った、やはり咲にしてもこの十五年の間でそれなりのことがあった。
「酷い風邪ひいたり。受験勉強したり」
「あったでしょ」
「成績が思う様にのびなくて悩んだり」
 中学二年の二学期のことだ。
「怪我したりね」
「そうでしょ、何かとあったでしょ」
「そういうのも苦労で」
「これからもっともっとあるけれど」
 苦労する時はというのだ。
「それは求めなくてもいいの」
「向こうから来るから」
「だからね」 
 そういったものだからだというのだ。
「別にね」
「求めないで」
「来たそれをね」
 苦労をというのだ。
「乗り越えていけばいいの」
「そうなの」
「ただ。その苦労から逃げ続けて」
 そしてともだ、母は話した。
「何も努力しないとね」
「成長しないのね」
「そして何もしないと」 
 それならというと。
「堕ちてね」
「餓鬼にもなるのね」
「そうした人もいるから」
「来た苦労からはなのね」
「逃げないで」
 そしてというのだ。
「向かっていってね」
「わかったわ」
 咲は母の言葉に頷いた。
「そうしていくわ」
「お願いね」
 このことはと言うのだった。
「いいわね」
「苦労からは逃げない」
「出来るだけね、ただどうしようもない災難は」
 これはというと。
「逃げないととんでもないことになったりするから」
「逃げてもいいのね」
「そうなの」 
 娘にこうも言った。 
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