レーヴァティン
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第二百十五話 渡河その八
「それぞれの議会でね」
「帝国に降る様に言う議員が出て来たか」
「そうなってきているわ」
「そうか、じゃあ上手くいけば」
「この国は割れるわ」
「四つ、いやもっとか」
「諸侯単位でもね」
国どころかというのだ。
「そうなるかも知れないわ」
「じゃああの国にも噂を流すか」
「降伏を言う議員を増やしてね」
「大勢になれば降る可能性が現実味を帯びるしな」
議会の意見がそうなってというのだ。
「それじゃあな」
「そうした話を流していくわね」
「そうするな、それと王国軍の戦意はどうなってるんだ」
久志はこちらのことも問うた。
「それで」
「確かに十万の兵を集めましたが」
夕子が言ってきた。
「先の敗戦と今の劣勢、そして噂を耳にして」
「落ちてるか」
「かなり」
そうなっているというのだ。
「今では。脱走兵もです」
「出ているか」
「徐々に増えているそうです」
「そうか、じゃあな」
それならとだ、久志は言った。
「ここは敢えて堂々とな」
「戦場に向かい」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「戦うな」
「そうしますか」
「隠す時は隠して」
そしてというのだ。
「見せる時はな」
「見せるものですね」
「戦はな」
まさにというのだ。
「そして政もな」
「そちらもですね」
「ああ、だからな」
「これからもですね」
「そうして戦うな、しかし王国軍が決戦を挑んだことはな」
最後のそれをと言うのだった。
「意外だったな」
「戦うにしてもだな」
正が応えた。
「そうだったな」
「ああ、それぞれの地域で戦うかな」
「籠城だな」
「そうして戦うと思っていたからな」
「まさか戦力を集めるだけ集めて」
そしてというのだ。
「そのうえでな」
「決戦を挑むとはな」
「思わなかったからな」
「あれだな、長く戦ってもだ」
「負けるか」
「もう王国に帝国に対抗出来る戦力はない」
先の水路が入り組んだ平原での決戦でというのだ、騎士団が降り王国と連合王国が主力を失ったその戦だ。
「敗北は確実だ」
「それならか」
「長い時間をかけて負けたいか」
正は久志に問うた。
「そうしたいか」
「あれだな、長く時間がかかるよりな」
それよりもとだ、久志は答えた。
「すぐに負けてな」
「楽になるだ」
「その方が心理的に楽だな」
「さっさと決める方がな」
「だからか」
「そうした考えが出たと思われる」
まさにとだ、正は答えた。
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