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イベリス

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第十七話 裏側のことその二

「ブラッシングはしないし爪は切らないしな、トイレもな」
「ケージの中なの」
「ああ、取り換えるなんてしなくてな」
「それじゃあ」
「わかるな、もう完全にもの扱いでな」
「子犬や子猫産むだけなの」
「それでもう産めなくなったらな」
 父はその時のことも話した。
「業者が引き取るが」
「碌な業者じゃないわよね」
「闇に近いな」
 その筋にというのだ。
「そうしたのに引き渡して終わりだ」
「殺処分?」
「そうだな、山奥の小屋で死ぬまでほったらかしだ」
「餓死なの」
「そんなのだ、売れ残った子犬や子猫も同じだ」 
 彼等もというのだ。
「そうなるからな」
「酷いわね」
「ヤクザ屋さんが関わってるって話もある」
「ヤクザ屋さんがなの」
「色々とな」
「覚醒剤とか銃とかだけじゃないの」
「金になるならな」
 それならというのだ。
「もう何でもな」
「するのね」
「それがヤクザ屋さんでな」
「ペット業界にも関わっているの」
「ああ」
 そうだとだ、父は咲に話した。
「そうなんだ」
「何でもね」
 母も言って来た。
「ブリーダーの人でもいるらしいのよ
「ヤクザ屋さんが」
「入れ墨入れた様な人がね」
「動物好きの人がやってるんじゃないの」
「そうした人も多いけれど」
「ヤクザ屋さんもいるの」
「世の中いい人も悪い人もいるんだ」
 父がまた言ってきた。
「どんな場所でもな」
「ペットの世界でもなの」
「特に命を預かってお金にもなるからな」
 それ故にというのだ。
「そうした人が関わっていたりお店の裏でな」
「そうしたこともあるの」
「そうだ、それで飼い主もなんだ」
 穏やかだが強い言葉だった。
「うちみたいな家、もっといい家があってな」
「酷い家もあるのね」
「虐待する家や捨てる家もあるだろ」
「あるわね」
 そうした話は咲も聞いていた、それで父に暗い顔で答えた。
「実際に」
「折角飼ったのに捨てるとかな」
「何で捨てるのかしら」
 咲は顔を曇らせて首を捻った。
「わからないわ」
「理由は色々だけれど酷い理由もあるんだ」
 捨てる理由、その中にはというのだ。
「飽きたりしてな」
「飽きたって」
「あと自分達の子供が出来て興味がそっちに行ってな」
「捨てるの」
「新しいおもちゃが手に入ってな」
 自分達の子供がそれだというのだ。
「それでなんだ」
「捨てるのね」
「ケージの中に入れたままで無視する様になったらな」
「だったら最初から飼わなければいいでしょ」
 咲は怒って言った。 
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