吸血鬼の真祖と魔王候補の転生者
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第8話 修行
前書き
前回のあらすじ
エヴァと結ばれる
カンッ!・・・キンッ!キキン!ギギギ・・カァン!
「はぁっ!」
「まだまだ!」
皆さんごきげんよう、シルヴィアよ。
今私達は、人の来る気配の無い森の中で修業中。
事の発端は昨日。エヴァの15歳の誕生日から数日移動した旅先の町で泊まった宿でのことだ。
「義姉様、明日は1日、修行しましょう」
つい先ほどまで楽しみ、後は眠るだけという状況。
2人で抱き合いシーツにくるまっていると、我が愛しき義妹がそんな事を言い出した。
「1日中とは珍しいわね。どうしたの?」
「最近の私達、少々堕落し過ぎだと思うんです」
う~む、とうとう気付かれてしまったようね。
まぁ、暇さえあればしていたのだし、遅かれ早かれなのだけど・・・
「べ、別に義姉様とこういう事をするのが嫌だと言う訳では無くてですね・・・・・・むしろ私は、好き、というか」
「・・・」
「でもですね!私まだまだ弱いし、もっとがんばって修行して、強くもならなきゃだし」
顔を真っ赤にして私が誤解しないように説明したり、小声でちょっと惚気てくれたり。
とりあえず、何この可愛い生き物?可愛いは最強!
そう心で叫びながら、腕の中のエヴァを抱きしめ、うりうりする。
「ちょっ、義姉様?」
「わかったわ。あなたがそこまで言うなら、明日からしばらくは修行に当てましょう」
「?はい!」
きょとんとしながらも、私の言葉に元気に答え、胸に顔をうずめる我が義妹。
それじゃぁ私も、明日に備えて寝ましょうか。
・・・まぁ、寝る前に少し悪戯するかもだけどね。
その後、抱きしめた手でやんわり撫でまわされ悶々とする義妹さんがいたとかいないとか・・・
そんなこんなで日が昇ったかどうかという早朝から宿を出て、森で修行中と言うわけ。
まずはいつも通り、基本として剣術から始めた。
私は正宗、エヴァは賊から奪った長剣、片手剣で戦っている。
何度も斬り結び、間合いを取り、再びぶつかり合う。
エヴァの剣術は、本人の希望もあり私が修めている日本刀の剣術を目指してきた。
そもそも西洋剣術にあるような、『叩き斬る』剣術はこの先あまり活躍しないわ。
鎧を着た騎士が主流だった時代に比べ、これからは銃が発達し、それを使う人間自身は軽装となっていく。
なら戦闘において必要なのは、服と肉を『斬る』ということ。
別に鎧に変わった服や肉を『叩き斬る』までしなくとも、ただ『斬る』だけで運動量は落ち、手堅く止めを刺せるもの。
重要なのはその一撃を確実に叩きこめるだけの『早さ』と、確実に『斬る』技術。
当面は日本刀剣術を2人で極め、『斬る』技術を身に付けることを目標に修行を進めてきた。
極めたその後は『早さ』や、派生して『受け流し』も求めていく。
完成形としては、不死の元同僚や大タコ、タコ男やかつての恋人が出てくる、あの有名な海賊映画シリーズの戦闘シーンを思い浮かべてちょうだい。
使う得物もそれに合わせて、カットラスやサーベルを考えている。
西洋剣の基本である両刃・直剣から外れたカットラスやサーベルは、片刃・反りがある・刀身が細く軽いという特徴から、日本刀に近く、目指す剣術に打ってつけだからよ。
護拳という、剣を握った拳の一部や全体を守るガードも付いていて、いざという時殴るのにも使えるから便利だし。
どちらにしろ、使う得物は私が魔法具作成の技術を習得したら作る予定だから、切れ味・耐久力共にチートの魔剣となる予定。
まぁ、別にそのまま日本刀を作ってもいいのだけど、まだこの時代ヨーロッパに日本刀は知られていないから、腰から下げていて変に注目を浴びたりするよりは、こちらの剣を使った方がいいという判断よ。
「考え事ですか、義姉様!」
キンッ!カァン!
少々長く考え込んでいたらしく、その合間にも打ち込んできていたエヴァが攻勢に出始めた。
「えぇ、少し。今夜どうやってエヴァを可愛がろうかと思って♪」
「な!///////」
カーン!ザクッ!
私の言葉であっさり動揺したエヴァの剣を斬り飛ばし、首筋に正宗を当てる。
「ううぅ~~~」
「はいはい、可愛い顔で睨んでもだめ。次、行くわよ」
地面に刺さった剣を回収したエヴァに向かって、今度は私から向かっていく。
「はっ、やぁ!」
ドシンッ!
「・・・やるわね、エヴァ」
「えへへ」
地面に放り投げられた私がそう声を掛けると、エヴァが照れながら手を差し出してくれる。
私はその手を取ると立ち上がり、再び向かい合う。
剣術の次は体術の時間。
体術では、柔術を極めることにした。
相手の力を利用し、受け流し、はね返す。原作のエヴァも修めていたように相手の力を利用するこの体術は、何らかの事情で自分の力が封じられた際にも有用だから、ほぼ即決で決めたわ。
・・・・・・相手の力で相手を倒す。おちょくるのにも使えるかな?なんて考えてないわよ?
柔術って、日本古来の武術の一部総称らしい。合気道とかもこれに含まれるとか。
そんな訳で全く素人の私達は、魔導書片手に型を覚え、いくつか身に付けたら模擬戦で試す、を繰り返してきた。
最初のころは素人全開だったが、これでも修行を始めて5年経っている。
今ではそこそこ見られるレベルにはなっている・・・と思うわ。
実際はその道を極めた人間が居ないから、いまいち完成度がわからないのだけど。
まぁ、時間だけはたっぷりあるから・・・あせらず行きましょう。
「『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!氷の精霊、101柱、集い来りて敵を射て!魔法の射手・連弾・氷の101矢!』」
ヒュヒュヒュヒュヒュッ!ザクッザクザクザクザク!
朗々と紡がれた詠唱が、精霊との契約となり魔法として具現する。
放たれた101本の氷の矢が、目標にした大岩に突き刺さる。それはまるでハリネズミのよう。
この5年、魔力の制御と出力・効率アップに重点を置いて修行してきた。
その成果として、無詠唱で51本、詠唱有りなら101本まで射出できるようになったわ。
更に言えば、その1本の攻撃力は、普通の魔法使いの3本程度に匹敵する。
その代り、魔法の射手以外の攻撃魔法はまだ覚えていないのだけど。
認識疎外や防音と言った、生活に使える基本魔法と、制御などを合わせると、それだけでかなりの時間を取られてしまったのが原因。
まぁ、それでも十分な威力を確保できていると思うわ。
・・・・・・時折遭遇する魔法使い(嘲笑)達が、詠唱有りで30本程度なのは気のせいよね。
私達2人はチートだし、たった5年で威力換算300本とかまだまだ序の口よね。
・・・うん、序の口よね?
「ふぅ、さすがに疲れましたね」
時刻はすでに夕方。もうそれほどせずに日も沈むだろう。
そんな夕焼けの中をエヴァと手を繋ぎ帰路についている。
もう街は視界にとらえているのでそう時間はかからないわね。
「1日通しての修業だったしね。それに剣術・体術・魔法と体力の使うものばかりだったし」
「そういう割に義姉様、最後にはあのハリネズミ岩、雷の矢で消滅させましたけどね」
「・・・」
そう、修行の最後に派手にいこうと、私は詠唱有りの雷の矢を101本、エヴァが串刺しにした岩に叩きこんだのだ。
『魔法の射手・雷の矢』は氷の矢と違い、物理的に貫くと言うより、その熱で焼き貫くという攻撃だ。
それを叩きこむとあら不思議、氷の矢が串刺しにされていた岩が綺麗に消滅してたとさ。
・・・ちなみに岩の大きさは、片側1車線の道路が簡単に塞がる程度の大きさだったと言っておくわ。
・・・・・・はいはい、チートチート。
「まぁ、それは置いといて、明日はそれぞれの技術習得に集中しましょうか」
「そうですね。私も早く人形を自由に使えるようになりたいですし」
強引に話を変えると、エヴァも続く。
結局エヴァは、人形使いを目指すことになった。
明日エヴァは人形使い、私は魔法具作成の修行に明け暮れるだろう。
「それじゃぁ今日も早く帰って休まないとですね」
「えー」
「えーじゃありません」
「本当にいいの?」
そこまで言った私は後ろからエヴァに抱きつき、囁く。
「っ!義姉様?」
「本当に、なにも無しでいいの?」
「それは//////」
「エヴァも好きだものね、気・持・ち・い・い・こ・と♪」
「!!!!!!」
耳元で甘く、ねっとりと囁き頬を撫でてあげる。
そうすれば、夕日もびっくりするくらい顔を真っ赤に染めた、我等の最終決戦兵器の出来あがり。
うむうむ、この子さえ居れば、私は3年どころか100年200年、むしろ永遠に余裕で戦えるわね。
そんなふうにじゃれつきながら、2人並んで歩いていく。
・・・・・・翌朝、若干げっそりしながら艶艶の義妹と、にっこり艶艶の義姉が居たとかいないとか。
後書き
お読みいただきありがとうございます。
チート姉妹が修行を始めました。
さてさてどうなることやら・・・
まぁ、合言葉の通りなんですが。
ご意見・ご感想、お待ちしております。返信は感想板の方へ。
それではまた次回。
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