物語の交差点
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とっておきの夏(スケッチブック×のんのんびより)
レッツ、クッキング!
-台所-
小鞠「それじゃあ始めましょうか。皆さんよろしくお願いします!」
小鞠、葉月、空、なっちゃん、木陰、このみの6人は台所に移動していた。
当初は全員で作る予定だったものの、スペースの問題でやむなく6人だけで作ることになったのである。他のメンバーは居間で談笑中だ。
葉月「ええ。よろしくね、小鞠ちゃん」
空「」ペコリ
このみ「小鞠ちゃんよろしく!ピンチのときにはいつでも助けるから言ってね」
小鞠「そう言われると緊張するなあ…」
小鞠は少し顔を強ばらせた。
なっちゃん「そげなときはあたしに任せりい!ピザトーストの10枚や20枚、すぐ作っちゃるばい!」
木陰「そう?じゃあお言葉に甘えて麻生さんに全部任せようかしら」
なっちゃん「うええ!? 空閑先輩、それは酷かですよー!」
木陰「冗談よ。ちょっとからかってみただけ」
葉月「ま、まあ大丈夫よ小鞠ちゃん。私もピザトーストは何回か作ったことあるけどそんなに難しくないから」
葉月がフォローを入れる。葉月の言葉で小鞠の緊張もほぐれたようだ。
小鞠「ですよね!ええと、まずはニンニクを刻んでバジルの葉を洗わないと...」
葉月「あ、バジル洗おうか?」
小鞠「じゃあお願いします!ニンニクは私がーーー」
空:ワタシがやる。スッ
空が手を挙げた。
小鞠「ありがとうございます、空さん!ニンニクの皮を剥いてみじん切りにしてもらっていいですか?包丁は流し下の開き戸に入っています。まな板はそこに立て掛けてあるのを使って下さい」
空:うむ、よかろう。 フンス!
空は張り切った表情で早速ニンニクの皮剥きを始めた。
このみ「おー、空ちゃん積極的だね!」
なっちゃん「空は根気のいる単純作業が好きやけんですねえ」
木陰「こまちゃん、私たちは何をしたらいいのかしら」
小鞠「そしたら木陰さんと夏海さんはミニトマトを切ってもらっていいですか?そしてこのみちゃんは…ええと……」オロオロ
このみ「小鞠ちゃん、この家ってフードプロセッサーある?」
小鞠が困っていることに気づいたこのみがさりげなく助け舟を出した。
小鞠「え?あ、そういえばなかったかも…」
このみ「なら家から持ってこようか?」
小鞠「ありがとう。助かるー!」
このみ「うん!ちょっと待っててね」
このみは台所を出ていった。
葉月「よし!小鞠ちゃん、終わったわよ。……って、梶原さん?みじん切りならそのくらいでいいんじゃない?」
バジルを洗ってザルに上げた葉月は隣で一心不乱にニンニクを刻んでいる空に声をかけた。
小鞠「どれどれ…?あっ、確かにもう良さそうですね」
木陰「こっちも終わったわ」
小鞠「ありがとうございます!空さん、流しの下からボウルをとってもらえますか?」
空:ボウル…2つでいい?
小鞠「はい、大丈夫です」
空は流しの下からボウルを取り出した。
空(どちらも同じ大きさだ…。)
カシャーン
小鞠「!?」ビクッ
小鞠が驚いた音の正体は空がボウルの縁と縁を重ね合わせた音だった。
小鞠「あー、びっくりした…。どうしたんですか?」
空:ボール。 ドヤッ
小鞠(綺麗な球じゃない…。)
葉月(梶原さん、前にも同じことしてたわよね…。)
このみ「お待たせー!……ん、何してるの?」
そこへこのみがフードプロセッサーを抱えて戻ってきた。
空:ボウルでボールを作ってた。
このみ「んー?あ、そういうことか。でも完全な球状じゃないから“ボール“とは呼べないよね」
空「!?」 ガーン
なっちゃん「空、ドンマイ!」
小鞠「……さて!続けましょう!!」パンパン
なっちゃんが空を慰め、それを見た小鞠が強引に仕切り直した。
小鞠「このみちゃんが持ってきたフードプロセッサーにみじん切りにしたニンニクとバジル、オリーブオイル、塩を入れて…と。よし、スイッチオン!」カチッ
あっという間に材料が切り刻まれ、みるみるうちにバジルソースが完成した。
小鞠「はい、バジルソースの完成です!あとは食パンにこれを塗ってチーズとトマトをトッピングして焼けばーーーあれ、食パンどこだろ?」
木陰「食パン?一穂さんは『台所に持っていった』って言ってたわよね」
皆で探すがなかなか見つからない。
そのとき、台所に眼鏡をかけた青年が入ってきた。越谷卓ーーー小鞠たちの兄である。喉が渇いたので麦茶を飲みに来たのだ。
冷蔵庫を開けた卓が食パンを見つけた。しばらく手にした食パンとそれを探す小鞠たちとを見比べていたが、やがて食パンを持って近くにいた木陰の元へ歩いていった。
卓:(-◽︎_◽︎)σ゛ツンツン
木陰「え?」
卓:(-◽︎_◽︎)つ[] スッ
卓は木陰に食パンを手渡した。
木陰「あ、ありがとう…ございます?」
卓:( _ _) ペコリ
ちなみに木陰以外の人は誰も卓に気づいておらず、未だに食パンを探し続けている。
木陰(今の人、誰かしら?……うーん、まあいいか。)
木陰「小鞠ちゃん、食パンあったわよ」
小鞠「えっ、どこにあったんですか!?」
木陰「いや、誰かが持ってきてくれて……って、あら?」
木陰は卓がいる(はずの)方向を振り向いたが卓はすでに麦茶を飲み終えて台所を出ていったあとで、もうそこには誰もいなかった。
小鞠「……え?」
小鞠が固まった。
木陰「でも確かにここにいたのよ。まさか誰も見てないの?」
ううん、と空が首を横に振った。
このみ「私も見てないよ?」
なっちゃん「あたしたち何も見とらんし、そもそも人の気配すら感じんやったですよ?」
木陰「え?」
葉月「あの…その食パン、なんか妙に冷たくないですか?」
そっと食パンに触れた葉月が言った。
小鞠「…え?」
このみ「あれ、流しにグラスが置いてあるよー?さっきまでなかったのになあ」
流しに使用済みのグラスが置かれていることに気づいたこのみが言った。
木陰「…え?」
なっちゃん「空閑先輩、先輩が見たモノってもしかして幽霊やなかとですかー?」
なっちゃんがからかうように言った次の瞬間。
小鞠「みみみ、皆さん!続きはオーブントースターさえあればどこででもできるので居間でやりましょう!」
顔面蒼白になった小鞠が言った。
木陰「そそそ、そうね。トースターどこ?持っていくわよ」
同じく顔面蒼白になった木陰が言った。
小鞠「ありがとうございます。2人で運びましょう!! 皆さんはすみませんが他のものを持ってきて下さい!」
言うが早いか2人はトースターを抱え、廊下に通じる扉を勢いよく開けた。
小鞠「水周りってよく出るんですよねー。水周りはほんとーにまずい!!」
木陰「ええ、何とは言わないけど出るのよね。あと柳の下とか病院とか…」
小鞠「そうそう、お墓とかトンネルにも!」
2人は駆け足で脱兎の如く去っていく。あとの4人はそれを呆れた表情で見送っていた。
空:効果は抜群だ…。
なっちゃん「ずっとやられっぱなしやったけん仕返ししただけなんやけどねえ」アハハ
このみ「ねえ葉月ちゃん、木陰ちゃんってお化けとか苦手なの?」
葉月「はい、ハロウィンの幽霊の仮装でさえダメで…。ひょっとして小鞠ちゃんもですか?」
このみ「そうなんだよねー。こないだ神社でやった肝試しでは小鞠ちゃんが一人でお化け役をやったんだけど、なっちゃん(=越谷夏海)曰く大声で泣き叫びながら鈴をガランガランうるさいぐらい鳴らしてたとかで…」
葉月「そ、そうなんですか…」
空:空閑先輩も小鞠ちゃんも怖がり屋さんなのだ。 フッ
このみ「ま…まあ共通点もあったし、きっと仲良くなれるんじゃないかな?」アハハ
ーーー図らずも木陰と小鞠の意外な共通点が見つかったのだった。
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