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物語の交差点

作者:福岡市民
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とっておきの夏(スケッチブック×のんのんびより)
  能ある鷹は爪を隠す

一穂「悪いねえ、ついてきてもらって」

葉月「いえ、当然のことですよ」


一穂と葉月は別働隊で追加分のピザトーストの材料を買いに車で出かけていた。バジルやトーストに使う食パンが不足していたためである。
もともとはなっつんが助手でついていく予定だったのだが、葉月がなっつんにお願いして役目を代わってもらった。


葉月「愛車が軽トラってところがいかにも田舎って感じでいいですね!」

一穂「農作業の手伝いも時々やってるからね。小回りが利くし、荷台にたくさん物が積めるから重宝してるよ」

葉月「そういえば前輪の辺りが凹んでましたけど、あれはなんでですか?」

一穂「あー、いつだったか猪とぶつかっちゃったんだよねえ」

葉月「い、猪!?」

一穂「そうそう、けっこう衝撃が強くてさ。猪は無事だったから良かったんだけど、一歩間違えればウチも猪も怪我していたかもねえ」

葉月「で、ですよね…」


『田舎ってすごいなあ。』
葉月はそう思った。


葉月「それにしても、この辺りにスーパーってあるんですか?」

一穂「うん、あるよ。いつも生ものだけそこで買って野菜は販売所で買う感じかな」

葉月「販売所?」

一穂「無人販売所。福岡にはないの?」

葉月「こっちにもあることはあります。でも私の家の周りにはないですね」

一穂「ふーん、福岡って都会なんだね」


一穂が感心したように言った。


葉月「私が住んでるところはそこそこ田舎ですかね。夜になると近所のコンビニに虫がけっこう集まってくるし、田植えの時期にはそこらじゅうの田んぼでカエルが鳴いてるから…」

一穂「へー、いつか鳥ちゃんたちの地元にも行ってみたいなあ……っと、そうこうしているうちに着いたよー」


一穂が指さす先にはスーパーマーケットがあった。


葉月「Aコープですか。JA(農協)の系列店だから大手のスーパーより鮮度が良くて安いんですよね」

一穂「あれ、鳥ちゃんってスーパー事情に詳しいのん?」

葉月「はい、自炊してるので…。少しでも節約できるよう新聞の広告やテレビのCMは毎日欠かさずチェックしてます」

一穂「へえ、偉いね。ウチも節約したいんだけどどうしたらいいか分かんなくてさー。鳥ちゃん、もし節約の極意みたいなのがあったら教えてよ!」

葉月「ええ、喜んで。まず1つ目はーーー」


ーーー


一穂「なるほど…」


葉月が一穂に教えた節約術は

①情報は常にチェックする
②商品は質より量で選ぶ
③会計前にカゴの中身を再度確認する
④買ったものは余らせずすべて使い切る
⑤時には奮発してリフレッシュする

の5つだった。


葉月「少なくともこれだけ覚えておけばだいぶ節約できますよ。初めのうちはなかなか成果が出ないと思いますが頑張って辛抱強くやって下さいね」

一穂「おー、ありがとう!しかし高一でそこまで考えられるってすごいなあ。ウチも見習わんと…」


葉月の隠れた才能(?)に舌を巻く一穂だった。



ーー
ーーー


そのころ、越谷邸では。


このみ「へー!福岡から来たんだ」

なっちゃん「はい、“とっておきの夏”に出会う旅ばしようとです!」


小鞠から誘いを受けて越谷家に遊びに来た富士宮(ふじみや)このみも加わり、皆で話しをしていた。


このみ「敬語じゃなくていいよー。私だって夏海ちゃんと2歳しか違わないんだから」

なっちゃん「そげんですか…」

れんげ「このみ(ねえ)は優しいん!だからタメ口で大丈夫なん!」

このみ「そうそう、同級生だと思ってもらっていいからね?」

渚「じゃあそうさせてもらうね。このみ君は部活は何部なのかな?」

このみ「吹奏楽部!もうすぐ発表会なんだよねー」

空:すいそうがくぶ…?




ホワホワ…




ー理科室ー


篠田(しのだ)あかね(吹奏楽部の後輩)
『先輩、こっちの水槽みてもらえませんか?』

このみ『あかねちゃん、その水槽の材質は?』

あかね『アクリルです』

このみ『さっきのはガラス製だったよね。水漏れの具合はどう?』

あかね『うーん、確かに水漏れはしてますけどガラス水槽よりはマシですね』

このみ『なるほど…。ガラス水槽には多く付着していた藻もそこまでついてないね』

あかね『そうですね』

このみ『…よし!これでガラス水槽よりアクリル水槽のほうが見栄えもよく耐久性に優れていることが証明されたよ!』

あかね『やりましたね先輩!今度の水槽学部の大会で発表するテーマが決まったじゃないですか!』

このみ『ありがとう、あかねちゃんのおかげだね!』

あかね『いえいえ。そうと決まればさっそくレジュメの作成にとりかかりましょう!』

このみ『うん!』




ホワホワ…




空:なるほど、それは大変だ。 ウンウン

渚「空君、そっちの“すいそう”じゃないよ…」

このみ「空ちゃんってなかなか面白い考え方するんだねー」アハハ

木陰「梶原さんはいつもこんな感じよ」

このみ「そうなんだー!」

れんげ「このみ姉は吹奏楽部のエースなん!ウチもいつかコラボレーションしてみたいん!」

朝霞「へえ、何の楽器を担当してあるんですか?」

このみ「フルート!横笛ってなんか好きなんだよねー」


そのとき、家のインターホンが鳴った。


小鞠「誰だろう、蛍かな?」


小鞠は玄関に向かった。


ーーー


しばらくすると小鞠が背の高い少女を連れて戻ってきた。


なっつん「お、いらっしゃーい」

れんげ「ほたるんなのん。にゃんぱすー!」

蛍「初めまして、遅くなってしまいすみません。一条(いちじょう)(ほたる)です。よろしくお願いします」

なっちゃん「麻生夏海です!蛍…可愛らしか名前ですねー。美人でおしゃれな一条さんにピッタリな名前やと思いますよ」

空(麻生さんの“夏海”も元気いっぱいな麻生さんにぴったりな名前なのだ。)

木陰(どうやったらあんなに背が高くなれるのかしら?)

蛍「えっと…。一応言っておきますけど私、皆さんよりだいぶ年下ですよ?」

美術部一同「えっ…?」


蛍の発言に美術部員の皆が固まった。


樹々「こまちゃん、それは本当なの?」

小鞠「はい、蛍は私の3つ下ーーー小5なんです」

蛍「大学生や社会人に間違われることが多くって。この前も近所のおばさんにお見合い写真を渡されたんですよね…」アハハ


蛍は困ったように頬をポリポリ掻いた。


美術部一同「ええーっ!?」


衝撃の事実に驚いた美術部のメンバーは驚いた。


一穂『ただいまー』ガラガラ


そのとき、一穂と葉月が買い物から帰ってきた。


れんげ「お帰りなーん!」

一穂「ただいまー。お、2人ともいらっしゃい」

蛍「こんにちは」

このみ「お邪魔してまーす!」

葉月「初めまして、鳥飼葉月です」

このみ「富士宮このみです!よろしくね♪」

蛍「一条蛍です。よろしくお願いします」

空:鳥飼さん。蛍ちゃん、いくつだと思う?

葉月「え!? だ、大学生ぐらい?でも梶原さんが『蛍ちゃん』って言っているから年下かしら...。まさか小学生ってことはないわよね?」

樹々「その『まさか』よ」

葉月「え?」

蛍「はい、小学5年生です」

葉月「ええーっ!?」

なっちゃん「信じられんやろ?あたしらも驚いたもん」

葉月「え、ええ…」




『人は見かけによらないものね。』
ーーー葉月はそう思った。 
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