物語の交差点
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とっておきの夏(スケッチブック×のんのんびより)
始まった物語
夏真っ盛り。空はどこまでも晴れ渡り、山はより一層輝きを増している。夏の暑さに負けじとばかりにセミも最大音量でアンサンブルを奏でているようだ。
そんな炎天下の田舎道をぞろぞろと連れ立って歩く8人の女子高生がいた。彼女らは福岡県内の県立高校に通う生徒で全員が美術部の所属だった。夏休みを利用し、2泊3日の行程で旅行をしているのだ。
夏海「うーん、空が青かねえ!いかにも夏って感じばい!」
麻生夏海が博多弁混じりにそう言った。
渚「ミンミンゼミの大合唱に飛び交うナツアカネ………。思えば遠くへ来たもんだねえ」
樹々「あれ?栗ちゃん、福岡にミンミンゼミはいないの?」
栗原渚がしみじみ呟いた言葉に佐々木樹々が反応した。
渚「おっ、いい質問だね樹々君。ミンミンゼミは暑さが苦手で、ある程度標高が高いところじゃないと生きられないんだ。私たちが普段よく見かけるセミはクマゼミやアブラゼミという別の種類のセミでミンミンゼミは福岡の都心部にはほとんどいないから、ミンミンゼミの鳴き声はそうそう聞けるものじゃないんだよ」
木陰「じゃあもしミンミンゼミが私たちの地元にいたら、あまりの暑さに本当の意味で眠眠ゼミになってしまうわけね」
渚「木陰君…」
夏海「それ、シャレにならん気がするとですけど…」
空閑木陰が放った言葉で体感気温が2~3℃ほど下がった気がした。
葉月「そ、それにしても今回は根岸先輩たち、参加できなくて残念でしたね」
朝霞「そうですねー。部長さんも受験勉強で忙しいみたいですし…」
空:小木さんや霧島さんとも一緒に来たかったのだ。 ウンウン
凍りついた場の空気を払拭するべく鳥飼葉月が慌てて話題を変え、それに神谷朝霞と梶原空も同調する。
以前ケイト、朝霞、樹々を除く5人で大分県を旅行して海辺の民宿に泊まった際「今度旅行するなら田舎の山村に行きたいね」という話しが持ち上がり、今回の旭丘村行きが実現したのだ。
旅の計画を立てるにあたり全ての美術部員に声をかけ、参加できたのはその半数ほど。残りのメンバーはどうしても予定が合わずあいにく不参加となってしまった。
ケイト「まーいいじゃないデスカ!ケイトは前回参加できなかったので今回参加できてトテモ嬉しいデース!」
ケイトが朗らかに言った。
夏海「そうやね!参加人数が3人も増えたっていうのは大きな進歩ばい」
葉月「麻生さん、前の旅行のとき『今度はケイトも誘いたい』って言っていたものね」
夏海「うん。それが実現できたけん、ちかっぱ(とても)嬉しかとよ!」
前回に引き続き、今回の旅行も夏海が主体となって計画した。
テーマは「とっておきの夏に出会おう!」。知らない街を旅してその土地の人と仲良くなり、そこでしか味わえない体験をしようというものである。
渚「しかし福岡よりマシとはいえ、ここもなかなか暑いねえ……おや?」
渚が何かを見つけたようだ。
樹々「栗ちゃん、どうしたの?」
渚「いや、あれ…」スッ
渚の指さす先には田んぼの用水路があり、6〜7歳ぐらいの女の子が虫取りをしていた。少し離れた木の陰では女の子の姉妹と思しき少女がその様子を見守っている。
?「ひか姉、こっちくるーん!こっちにミズカブトムシいたーん!!」
麦わら帽子を被った女の子が少女を呼ぶ声は美術部一行のところまで聞こえた。
渚「ミズカブトムシだって!? そんな虫、聞いたことないけどなあ。夏海君、ちょっと行ってくるよ!」ダッ!
夏海「あっ、栗原先輩!?」
言うが早いか荷物を放置して渚は駆け出した。昆虫ハンターの本能が目覚めたらしい。
しばらく呆気にとられて見ていた一同だったが、やがて渚のあとを追って走っていった。
ー
ーー
ーーー
宮内ひかげは妹のれんげと昆虫採集に来ていた。
否、「れんげに連れてこられた」というほうが正しい。短い夏休みを満喫するべく冷房の効いた涼しい部屋で寝ていたところをれんげにしつこくせがまれ、行かざるを得なかったのだ。
れんげに『なっつん(越谷夏海)にセミとかカブトムシの採り方を教えてもらったからひか姉(=ひかげ)にも教えてあげるん!』と言われたことに対抗して「知る人ぞ知る極秘昆虫採集スポット」である宮内家が所有する水田の脇を流れる用水路と、そこに棲む水生昆虫の採り方をれんげに教えてやった。
現在は涼しい木陰に避難して水生昆虫を採るれんげを見守っている次第である。
れんげ「ひか姉ー!」
名前を呼ぶ声にひかげは顔を上げた。
麦わら帽子を被ったれんげがこちらを向いて虫取り網を掲げている。
ひかげ「なんだー!?」
れんげ「ひか姉、こっちくるーん!こっちにミズカブトムシいたーん!」
ひかげ(れんげの奴はしゃいでんなー。なんだかんだでまだ子どもだな…。) ヨッコラショ
やれやれと思いながらひかげは腰を上げ、れんげの元へ向かった。
ひかげ「おー、ミズカブトムシってなんだー?カブトエビかなんかか?」
れんげ「これー!」
ひかげ「んー?」
れんげが指さしたものを見てみると、5~6cmほどの大きさをした褐色の昆虫が虫取り網にくっついてモゾモゾ動いていた。
ひかげ「タ…タタ、タガメだー!!」
なんと、れんげが捕まえたのは「タガメ」という希少価値の高い水生昆虫。
ひかげは動揺して思わず大声を上げてしまった。
?「本当だ、タガメだね」ニュッ
れんげ「んなー!!」ビクッ
突然現れた見知らぬ少女に今度はれんげが大声を上げた。
?「ありゃ、ごめんね。びっくりさせてしまったかな?」 ペコリ
年齢はひかげと同じぐらいだろうか。頭からまるで触角のようなアホ毛が2本生えているその少女はれんげに頭を下げた。
?「やっと追いついたー!」
?「栗原先輩、勝手に行かんで下さいよお」
?「ごめんごめん。『虫』と聞いたら衝動が抑えられなくて…」
?「OH! 栗原センパイは虫を無視できなかったんデスネー! HAHAHA!!」
?「ケイト、そのギャグ寒すぎ・・・。」
少し遅れて彼女の仲間と思しき同年代ぐらいの少女たちが走ってきた。金髪の外国人らしき少女もいる。数えると最初のアホ毛の少女を含めて8人いた。
れんげ「し、知らない人がいっぱいいるのーん!!!!」
スケッチブック×のんのんびより クロスオーバー小説
「とっておきの夏」
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