大阪の烏天狗
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第三章
「姫路城とかな」
「天守閣に妖怪のお姫様がいるのよね」
「あのお城そうよね」
「泉鏡花って人の作品にもなってる」
「そうなのよね」
「けれどここはな」
四天王寺ではというのだ。
「そんな話聞いたことないぞ」
「聖徳太子が出るとか」
「そんなのないのね」
「あるか、また別だよ」
そうだというのだ。
「出る場所は」
「それはがっかりね」
「どうもね」
「素敵な場所なのに」
「妖怪が出ないのは」
「妖怪とか幽霊なら俺達の学園に一杯いるだろ」
それこそとだ、潤はこうも言った。
「八条学園にな」
「まあね、私達の学園だとね」
「あちこちに妖怪や幽霊のお話があって」
「それでね」
「そうしたスポットに行けるわね」
「そうだろ、歴史ある場所でも妖怪や幽霊がいるとは限らないんだよ」
こう二人に言うのだった、だが。
ここでだ、潤に空の上から誰かが言ってきた。
「いるぞ、ここにも」
「?誰だよ」
「ここだ、上だ」
「上?」
潤だけでなくアリサもノンナもだった。
声を聞いて上を見上げた、すると。
そこに山伏の服を着て烏の様な顔と翼を持つ者がいた、潤はその者を見てすぐに言った。
「天狗か」
「烏天狗だ、知ってるな」
「ああ、何でここにいるんだ」
「知れたこと、ここで毎日修行しているのだ」
ここでだった。
烏天狗は三人の前に降り立った、下駄は高く一枚歯である。
「座禅等を組んでな」
「そうしてか」
「左様、それでお主達の話を聞いたが」
「ああ、ここに妖怪とかはいないってな」
「それは間違いだ」
「あんたがいるからな」
「左様、妖怪は色々な場所にいてだ」
それでというのだ。
「この四天王寺にもな」
「いるんだな」
「もっと言えば歴史のある場所にもいてそうでない場所にもな」
「つまりあちこちにいるか」
「それが妖怪だ、覚えておく様にな」
「何か偉そうだな」
「当然だ、わしは三百年生きておる」
今度は年齢の話をした。
「お主達より遥かに年長だからな」
「上から目線なんだな」
「それ位歳が上ならそれでもよかろう」
「それはそうだな、むしろタメ口聞いてる俺の方が駄目か」
「別によい、だが妖怪が何処でもいることはな」
このことはというのだ。
「覚えておくことだ」
「わかったよ、そういうことだな」
「人が見ておらぬだけでな」
「その実はか」
「至るところにいる、ではわしは家に帰る」
「家って何処だよ」
「新今宮だ」
南海のこの駅だというのだ。
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